先日、国防総省が発表したUAP報告書と結論に対し、ワシントンD.C.の政治家たちは、疑念を投げかけているようです。
先週、国防総省のUAP対策室(AARO:All-domain Anomaly Resolution Office=全領域異常解決局)は、
「国防総省と米情報機関が地球外テクノロジーにアクセスしたり、リバースエンジニアリング(宇宙船を解体などして未知の技術を解明し取得)したりしたという重大な疑惑を裏付ける証拠はない。」
とする結論が記載された報告書を発表しています。
しかし、このAAROの報告書は後に様々な識者、ジャーナリストが目を通し、検証したところ、リンクなども間違っていたり、情報が欠落していたり、酷い例としては国防総省の職員がAATIP(先進航空宇宙脅威特定計画)設立などに関わり、UAPを科学的に深く研究すべきだと考えていたハリー・リード元上院議員(ネバダ州選出、2021年12月に膵臓癌で死去)をニューメキシコ州の元上院議員と誤って記載、そして様々な有力証拠映像に関しては、スルーで触れられておらず、UAP問題を追跡しているジャーナリストのロス・クルサート氏は「中途半端で非常にお粗末な物」としています。
そして、先日米議会UAP議員連盟の下院議員らは、共和党のマイク・ジョンソン下院議長と民主党のハキーム・ジェフリーズ下院議長に宛てた連名書簡に署名し、UAP調査専門の特別小委員会の新設を求めています。
ジャーナリストのマット・ラスロ氏が最初に入手した書簡には以下のように記載されています。
『最近の内部告発者の証言と未確認異常現象(UAP)の存在に関わる新たな証拠に鑑み、我々は米下院がUAPに対する連邦政府の対応を調査するため、下院監視・説明責任委員会(ハウス・オバーサイト)の下に特別小委員会を設置するよう要請する』。
この書簡に署名した代表者は以下の通り
エリック・バーリソン下院議員(共和党)
ティム・バーチェット下院議員(共和党)
アンナ・パウリナ・ルナ下院議員(共和党)
ジャレッド・モスコウィッツ下院議員(民主党)
アンディ・オグルス下院議員(共和党)
ナンシー・メイス下院議員(共和党)
トロイ・ネールズ下院議員(共和党)
マット・ゲッツ下院議員(共和党)
この報告書に対し、様々な関係者だけでなく、UAP議員連盟のメンバーであるエリック・バーリソン下院議員は、国防総省の調査結果に対する信頼の欠如を表明しました。
数日前、米メディアのNewsnationはバーリソン下院議員にインタビューし、国防総省の結論に対し、信用出来るものなのかという質問に対し、バーリソン下院議員は以下のように述べています。
「国防総省の調査結果は信用出来ません。なぜなら彼らは証拠を提出することもできたはずです。しかし、彼らは議会に対してそれを一切しようとしません。だから私は、そろそろ扉を開いて、何が起きているのかを正確に示すべきだと思います。なぜなら、もし彼らがアメリカ国民にとって良いことをしていて、納税者が払ったドルに対して責任を負っているのであれば、隠すことは何もないはずだからです。」
さらにバーリソン議員は、新小委員会が設置される下院監視・説明責任委員会の委員長であるジェームズ・コマー下院議員もこの構想を支持しているとの事。
マイク・ジョンソン下院議長がUAP特別小委員会の設置を承認すれば、国防総省による独自調査とは対照的に、独立した調査が実施されることになります。
UAP特別小委員会は、証言を拒否するような敵対的証人を含め、潜在的な違法UAPプログラムに関係しているとされる個人を尋問するための召喚権を保有することも検討しているそうです。
さらに、小委員会は完全なスタッフを備え、特別なアクセス保護やアクセス制限の有無にかかわらず、連邦政府が提供するUAPに関するすべての資料や情報(機密・非機密を問わず)へのアクセスを許可されようです。
AARO報告書に対する議会の反応について、国防総省の結論に反対する国防総省関係者の一人は、リベレーション・タイムズに
「国防総省が、数十年前に「プロジェクト・ブルーブック」やその他の歴史的な評価で行なったように、再びこの話題(UAP問題)を覆い隠そうとしていることに気づいている議員がいるのは明らかです。
しかし、今回ばかりは、議会も議員もある程度の真実を知っているのです。 ある組織が、その組織の意に沿う人々に真実を提供しないときには、常にその組織を疑わなければなりません。 結局のところ、「自由なくして自由はなく、真実なくして自由はない」のです。
と頼もしいお言葉。国防総省内にもUAP情報公開推進派が少なからずいるようです。
UAP小委員会のメンバーには、2023年7月に開催された下院UAP公聴会に参加した人々も含まれます。
このUAP公聴会では、元上級情報将校のデビッド・グラシュ氏が宣誓のもと、「米国政府が人間ではない起源の未知の技術の回収と、リバース・エンジニアリングに関連する数十年にわたる極秘プログラムを実施してきた。」と証言しています。これらは日本でも報道されたので、ご存知の方もいると思います。
UAP議員連盟のモスコウィッツ議員代表は、情報機関の監察官(ICIG)との最近の会合で、監察官がグラシュ氏の証言、申し立ての内容派「信頼できる」ものであり、かつ「緊急」なものであると考えているとの事実を、自身のX(旧ツイッター)で明らかにしています。
「我々が聞いたところによれば、グルシュの主張の多くにはメリットがある!』
国防総省(DoD)と情報コミュニティ(複数の米情報機関)に対する選出議員の信頼の欠如を強調したUAP小委員会メンバーからの書簡では
大きな障壁は、国防総省(DoD)と情報コミュニティ(IC)の協力の欠如と議会精査の回避であり、これは国民の不信を深めるばかりである。
と付け加え、国防総省と情報コミュニティの協力的ではない姿勢に対してきつく批判しています。更に、
国防総省(DoD)とIC(情報コミュニティ=複数の米情報機関)の協力と透明性の欠如の“長い歴史”を考えれば、議会が超党派でUAPを調査し、最終的に国民に大いに必要とされる透明性を提供することは、アメリカの納税者にとって最善の利益である。
としています。
今年初め、UAP小委員会のメンバーであるティム・バーチェット下院議員が、ジョンソン下院議長と会談し、UAPについて話し合っています。バーチェット下院議員は、会談は「とてもうまくいった」と述べて、UAP公聴会への期待を高めました。が、しかし当時はUAP特別小委員会の設置についてはあまり楽観視していなかったようで、悲観的な見解で「特別委員会の設置には人員もお金も手間もかかります。ですので、私はそれが実現するとは思っていません。」
しかし、バーシェット下院議員の発言以降、このような小委員会が設置される可能性が高くなったことを示す変化があったかもしれません。
AAROの公式UAP報告書をめぐるニュースが一段落しはじめると、元AARO所長からサンディア国立研究所の公式コンサルタントに転身したショーン・カークパトリック博士が、新たな波紋を呼び起こす発言をすることが予想されます。
カークパトリック博士は、インタビューやイベントを通じて、グラシュ氏などの内部告発者が主張するような国防総省と情報機関に対する重大なUAP不正行為、隠蔽疑惑などの内容の信憑性を失墜させることも考えられます。いわば、国防総省や情報コミュニティ側にに忖度した主張しかしないという事でしょう。
しかし、幸いなことに、米議会内にはAAROの報告書の信憑性を疑問視し、カークパトリック元AARO所長の主張を信じていない有力議員もいます。
国防総省、米情報機関、そして軍も今回の発表でこの問題(UAP)を早く幕引きさせたいことは明らかですが、前述のように有力議員がいることは、情報公開への微かな「希望」となることを望むばかりです。
「火のないところに煙は立たず」という事でしょう。
願わくば、決定的な証拠を携えて当事者の内部告発者が出てくれば、良いのですが、、
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