軍事演習時や派遣先の中東で、異様な未確認物体(UAP=UFO)と毎日のように遭遇していたと衝撃の内容を、2019年に退役後即、現役パイロットとして初めて公にし、米議会にも名乗り出たライアン・グレーブス氏が、説明のつかない未確認物体を見た、軍や民間のパイロットを支援をする、他に類を見ない非営利団体Americans for Safe Aerospace (ASA)を共同設立しました。
民間航空機の乗客は、国家安全保障の観点から不審な乗客、行動などを目撃した際には、報告するよう奨励されていますが、その同じ航空機に乗って操縦しているパイロットは、ドローンやスパイバルーンなどの時代に、国家安全保障上の脅威となりうる不可解な未確認異常現象(UAP)やUFOを報告すると、精神を疑われ、地上勤務に降格されたり、嘲笑汚名を着せられるなど、理不尽な状況に直面することが多いとライアン・グレーブス氏は言います。
連邦航空局(FAA)は、パイロットがUAP(UFOの呼称)を目撃した際に、報告する制度やシステムはなく、最終的に民間UFO団体などに報告するよう指示しています。
新団体のアメリカンズ・フォー・セーフ・エアロスペース(ASA)は、UAPなど不可解な物体を飛行中に目撃したパイロットを支援することを目的とした支援団体として、木曜日に正式発足しました。
ASAは、前述のような航空業界の状況を変えようとしています。
共同設立者のライアン・グレーブス氏は、
“私たちの空域を飛んでいる未確認飛行物体は、緊急かつ重要な安全性と国家安全保障の問題を示していますが、目撃、遭遇したパイロットは必要なサポートが受けられず、彼らに相応しい敬意が払われていませんでした。
私が海軍に勤務していた時、私の飛行隊は、ほぼ毎日のようにUAPに遭遇していましたが、何一つ対応はされていなかったのです。”
と述べています。
同団体の「エアクルー評議会」には、民間パイロットや飛行教官のほか、ニミッツ事件でUAPと接近遭遇したことを証言した、元海軍パイロットのデイビッド・フレイバー氏と、フレイバー氏の部下の元海軍パイロット、アレックス・ディートリッヒ氏他、元軍パイロットも複数人参加しています。
また、諮問委員会(Advisory Board)には、ハーバード大学の天文学者であるアビー・ローブ氏などの著名な民間研究者、PLITICOのブライアン・ベンダー記者、米国防総省の極秘UAP調査組織AATIP設立に動いた故ハリー・リード上院民主党党首のチーフスタッフを長年務めたスーザン・マキュー氏などの政治家、国際宇宙ステーション元隊長のテリー・ヴァーツ飛行士、元海軍海洋大気庁長官のティム・ギャローデ元少佐など有力な面々が参加しています。
グレーブス氏は前述のように米国での訓練中、そして派遣先の中東でもほぼ毎日、UAPと遭遇していたそうで、遠くに滞空している時もあれば、近くを猛スピードで飛んだりしていたそうです。そして、グレーブス氏が遂に黙っていられなくなる決定的な事件が起こります。
それは、訓練飛行中に半透明な球体の中にグレイがかった黒いキューブのある異様な未確認物体が、前方からグレーブス氏と僚機の僅か10数mの間を通り抜け、グレーブス氏らが慌てて回避行動を取らなければならないような、非常に危険なニアミス事故が起きるようになったそうで、一歩間違えば衝突しかねない状況でした。
僚機のパイロットは着艦後「危うく、あいつらにぶつかるところだった!」と怒りに震えていたそうです。そしてグレーブスは身の危険を感じ、これは放っておけないと安全報告書を上層部に提出したそうですが、結果的に何も調査は行われなかった上に、グレーブス氏が経験した内容に関しても公式に認めることもなかったそうです。
その物体は、カテゴリー4レベルのハリケーン級の強風の中で音速に加速したり、ピタリと動かずに固定されているかのように滞空することが出来たそうです。
物体は、揚力を発生させるような物も見当たらず、推進力、翼、フラップ、エンジンなど通常の航空機に似たものが一切なく、しかも数時間ではなく1日中動き続けていたそうです。「物体がほぼ毎日、堂々と訓練空域を飛び回っているので、唯一の選択肢は訓練をキャンセルするしかなかった。」と述べています。
ほぼ毎日、戦闘機で飛ぶと必ずいて、訓練を中止せざるを得なかったという、出現頻度にも驚かされます。
グレーブス氏は
“私は海軍パイロットで、航空エンジニアの資格も持っていますが、あの物体は完全に私の理解を遥かに超えたものだった。
説明のつかない超最先端技術を示す高度な正体不明物体が、日常的に私たちの軍事基地の上空を飛んだり、制限空域に平然と侵入して飛び回っているのです。
UAPの中には、上空でピタリと静止しているように見えるもの、風に逆らって移動するもの、急加速するもの、かなりの速度で移動するものなどがあり、推進手段を見分けることができません。
それが一体何者か不明で、国家の安全を脅かす存在かもしれないのに、見て見ぬふりで見過ごしていた事が、私には本当に信じられなかった。」
と述べ、大きな疑問と不信感を感じたと、ヒストリーチャンネルのUFOドキュメンタリー番組「Unidentified」のインタビューで吐露していました。
そのような経験が、今回の不可解な物体を目撃したパイロットにフォーカスした支援団体設立の大きな動機となっているそうです。
その後、米海軍は2004年から2021年の間に、回避行動を必要とする、安全報告義務のきっかけとなったUAPによる危険なニアミス事故が11件あったことを公式に認めています。
しかも、これらの機体が米国の機密プロジェクトの一部ではないということです。海軍情報局の副局長であるスコット・ブレイ氏は、昨年、議会でそう証言しています。
フロリダ州のマルコ・ルビオ上院議員は数年前のインタビューで、「これらの物体の起源が何であれ、米軍機ではないことを確認しています。上院情報委員会の副委員長だったルビオ議員は「我々の軍事基地や軍事演習を行っている場所の上空を何かが飛んでいるが、それが何であるかは分からないし、我々のものでもない。」と述べています。
グレーブス氏は、
“米空軍が、中国のスパイ気球を打ち落とした数日後、北米の空域で米戦闘機が他の2つの未確認物体(今では多くの人が民間団体か何かの気球と疑っている)を撃墜しましたが、米国上空で何が起こっているかについての混乱と情報の欠如は、パイロットや乗客にとって非常に危険だと思います。”
と述べています。
今回設立されたAFSAのエアクルー評議会メンバーで、元海軍海洋大気庁長官のティム・ギャローデ元少佐は、
“Americans for Safe Aerospace (ASA)”の設立は、長い間待たれていたことです。私は、米海軍の気象学者として、自分のキャリアを飛行の安全に捧げてきました。その中で、私は未確認異常現象(UAP)が軍パイロットらを危険に晒していることを直接、この目で見てきたのです。そのリスクを減らすためには、UAPをもっと深く理解する必要があります”
と述べています。
ASA設立の中心的なポジションでもあるグレーブス氏は、
“私たちは、パイロットの声に耳を傾ける必要があります。軍や民間のパイロットは、高度なUAPに関する重要な、直接的な情報を提供してくれます。今現在、UAPを報告することに付いてくるスティグマ(嘲笑、侮辱)は、まだ強すぎます。
私が2019年にUAPとの遭遇について公表して以来、私の所属していた飛行隊からは他に1人のパイロットしか公表していません。民間パイロットも、目撃を報告することでキャリアに大きなリスクを抱えています。
民間パイロットにUAPを目撃した場合の報告を義務付けて、パイロットをそういった侮辱、報復から守り、その報告を調査するためのプロセスを確立するための新しいルールが必要です。未知のものに対する嘲笑や否定は容認出来ません。今こそ好奇心を持つべき時です。
もし、私がこの目で見たUAPが外国などのドローンであれば、国家の安全保障と空域の安全に対する緊急の脅威となります。もしそうでないなら、科学的側面から解明することが先決です。”
と述べ、軍、民間パイロットからの報告を義務付けて、嘲笑や仕事への悪影響という悪しき慣習を止めたいようです。
米議会は未確認物体に対して、ここ数年でかつてないほど真剣に受け止め始めています。 国防総省と米国の情報機関は、より多くの情報を小出しながらも少しづつ公開し始めており、昨日はNASAがUAP研究を任務とする新しい独立した調査チームの最初の公開会合を開催しました。
今の所、“爆弾”と言えるような衝撃的な情報は出てきておらず、非機密情報のデータの特定を中心に公開している状況ですが、徐々に大きなインパクトある情報が出てくる事を期待したいところです。
おそらく、グレーブス氏の新団体ASAにも驚くべき情報が集まってくるかもしれません。今後のASAの動向にも注目と言えそうです。
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