米マイクロソフトのアクティビジョン・ブリザード690億ドル(約7兆9500億円)巨額買収提案は、“独禁規制当局に厳しい目で買収が阻まれる“との見方もあるようですが、ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によると、確かにそれもあるが、“誇張されているかもしれない“と見ているようです。
確かにここ数年、米政府は巨大IT企業による買収などで警戒感を強めています。マイクロソフトにとって、ゲーム業界にとっても史上最大となるアクティビジョン・ブリザードの買収には、その規模の大きさからも規制当局から一段と厳しい目が向けられることは間違いない。との意見が多いのは事実。
しかし、ウォール・ストリート・ジャーナルは、「この合併で“マイクロソフトがビデオゲーム市場で圧倒的な支配力を持つ事になる“という意見は、無理があるのではないか。」としています。
マイクロソフトの2021年の全体のゲーム事業売上高は160億ドル強、アクティビジョン・ブリザードの売上高は推定で87億ドルとの事。NewZooの推計によると、両社の売上高を合わせても、昨年の世界のビデオゲーム市場全体からすると、14%にも満たないそうです。
マイクロソフトとアクティビジョン・ブリザード買収完了統合後の売上高では、中国のテンセント、日本のソニーグループに次ぐ第3位となります。
マイクロソフトは、「アクティビジョンの保有する『CALL OF DUTY』を筆頭とした多くの人気タイトルブランドは、XBOXを有利にするためだけに利用するつもりではない。」と早い段階で表明しています。
先日もアクティビジョン・ブリザード買収後に、マイクロソフト・ゲーミングCEO就任したフィル・スペンサー氏は、アクティビジョン・ブリザードの既存のゲーム契約を尊重し、『コール・オブ・デューティー』は今後もソニーのコンソールに継続して提供すると述べています。
ブルームバーグの報道では、契約には「コール・オブ・デューティ」シリーズの今後の新作3本はプレイステーションに提供される事が含まれているようです。
普通に考えれば、、買収した事で大きな影響力のある「コール・オブ・デューティー」をXBOX独占にしてしまえば、よりXBOXに有利に戦えると思いがちです。
しかし、現在のマイクロソフトは多様なデバイスが繋がるクラウドゲームサービスが開始され、そこにマイクロソフトが現在最優先で取り組んでいるゲームパスも絡んでくるため、一つのデバイスに固執する必要性がありません。(もちろん、XBOXも重要とフィル・スペンサー氏は明言はしています。)
更に、規制当局への影響も考慮しているのかもしれません。いずれしろ、目立った強硬な動きは控えるべきなのかもしれません。
ウォール・ストリート・ジャーナルでは、更にアルファベットやメタ(Facebook)、アップルなどの大手IT企業の多く(GAFA)がこのところ政治的論争の標的にされている状況で、マイクロソフトは蚊帳の外といった感じで、ここ数年は標的にされずに済んでいます。
シティのジェイソン・バジネット氏の先週のリポートによると、「ハイテク大手に対する追及が厳しくなっていることから、反トラスト法(独占禁止法)審査に時間がかかると予想する一方、買収が承認される可能性は比較的高い。」とも述べているようです。
最近のマイクロソフトは、数年前に総額1兆円とも言われている米国防総省のシステム案件もアマゾン(AWS)と争った結果、受注獲得しています。こういった米政府とのつながりを活かして、アクティビジョン・ブリザードの買収は「極めて高い確率で実現する。」との見方もあるようです。
バーンスタインのマーク・モドラー氏は「今回の買収は、マイクロソフトが長い時間をかけて考え抜いたに違いない。」と述べています。マイクロソフトは政界とのゲーム(駆け引き)を上手くプレイする方法を数十年かけて学んだのかもしれない。との事。
マイクロソフトは、90年〜2000年初頭にかけて特に欧州の規制当局とは散々な目にあった過去がありますから、そこから学んだ事もあるのかもしれませんね。🔚
via ウォール・ストリート・ジャーナル
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