米国政府の秘密主義というと、国防総省(DOD)やアメリカの情報機関(IC)CIA、FBI、NSAなどの諜報機関を中心に語られることが多いと思います。
米軍は米国を守り、世界に影響力を及ぼすために機密性の高い兵器システムの多くを開発し、情報機関は外国の脅威や外部の国家安全保障問題に関する機密情報を収集・分析しています。
毎年、米軍の予算要求書には、機密プログラムやSAP(Special Access Program)と呼ばれる曖昧なコードネームのプログラムが存在し、その多くはスポットライトに当たる事なく、日の目を見ることはありません。
裏の世界といえば、米国防総省(ペンタゴン)とその各軍部の機密の奥深くに存在すると思われる、これらのプログラムの最先端技術が話題になることが多いですが、しかし、この話題から外されがちなのが、米国政府には全く別のトップレベルの部署があり、機密性や監視の面では間違いなく国防総省よりも不透明であるという事実です。
ここ数年、海軍のトップガン・パイロットが撮影した衝撃的なUFO映像が3つ公開され、アメリカ国防総省が常識を覆すような画期的な最先端科学技術、テクノロジーを国民から隠しているのではないかという疑惑が再燃しています。
しかし、仮に米国政府や政府内の一部の派閥が、エネルギー派生技術、応用物理学の分野で画期的な最先端技術の開発を行ったとするとそのような革命は、実はペンタゴンや米海軍、米空軍、FBI、CIA、NSAなどではなく、米国エネルギー省(DOE)の奥深くにある可能性が非常に高いと言えるようです。
米国エネルギー省が正式に設立されたのは1977年、そのルーツは1946年の原子力法にあるようです。原子力法では、米国の原子力技術を軍が直接管理するのではなく、民間の体制で管理・統制するための機関として、原子力委員会(AEC)が設立されました。
しかし、これはある種の大義名分に過ぎず、エネルギー省(DOE)と国家核安全保障局(NNSA)の両方において、実際には制服組の軍人が多数役職に就いているのが現状だそうです。
例えば、国家核安全保障局(NNSA)の海軍原子炉担当副長官は、海軍とエネルギー省(DOE)の合同海軍核推進プログラムの責任者でもあり、これまでずっと提督を務めてきたようです。
原子力委員会(AEC)の目的の1つは、米国の原子力技術を1つにまとめることでした。
原子力委員会は設立当初から、核兵器と海軍用原子炉の設計・製造にほぼ特化していたそうで、1954年に制定された原子力法により、成長しつつある商業用原子力発電産業の規制にも力を入れるようになったそうです。
現在のエネルギー省のように、原子力委員会は単に核技術の兵器化だけではなく、それ以上のことを目指していたようです。多くの原子科学者は、核爆発物を単なる兵器以上の用途に使用することを想定していました。1950年代には、現在のロスアラモス国立研究所やサンディア国立研究所の科学者たちが、「核爆発のエネルギーを発電や掘削、同位体の生産に利用する可能性について議論する」という機密会議を開いていました。原子力委員会は、1960年代から1970年代初頭にかけて、プラウシェア・プログラムの一環として、こうした原子技術の産業利用を検討していました。
1970年代初頭の石油危機が大きなきっかけとなり、ジミー・カーター大統領率いる米国政府は1977年にエネルギー省組織法を制定しました。これにより、エネルギーや科学に関するさまざまなプログラムや行政機関がひとつにまとめられ、現在のエネルギー省(DOE)が誕生したようです。
エネルギー省(DOE)は、「長期的でリスクの高いエネルギー技術の研究開発、連邦政府の電力販売、省エネルギー、核兵器プログラム、エネルギー規制プログラム、中央エネルギーデータ収集・分析プログラム」を統括することになったようです。
現在のエネルギー省の主な任務の一つは、米国の核兵器備蓄の開発、試験、維持です。核兵器を運搬するシステムの開発・運用・保守は国防総省(DOD)が行っていますが、核弾頭技術の開発・獲得を実際に行っているのはエネルギー省(DOE)なのです。
エネルギー省(DOE)は、DODのシステムに搭載されていない核弾頭の保管・確保、核兵器に使用される材料の確保、国家備蓄から外れた古い核兵器の解体など、核弾頭の運搬に関連しないすべての機能を担っている。
現在のDOEは、米国の原子力発電や兵器技術を管理・生産するだけでなく、クリーンエネルギーソリューション、エネルギー効率、気候変動の緩和、運輸部門の代替燃料技術などの研究やイノベーションを促進しています。その名の通り、DOEはアメリカの短期的・長期的なエネルギーニーズのすべてに関わっています。しかし、DOEが監督しているのはそれだけではありません。DOEはかなりの量の極秘研究と製造を行っているようです。
エネルギー省の秘密
多くの場合、エネルギー省は独自の分類システムやポリシーを持っており、中にはそれ自体が機密扱いになっているものもあるとの事。これらのエネルギー省セキュリティクリアランス(機密接近許可)の中で最も高いレベルはQクリアランスだそうで、これは国防総省の「トップシークレットクリアランス」に相当するそうです。
しかし、Qクリアランスがあればエネルギー省が管理するすべての機密情報にアクセスできるというわけではないようです。米国科学者連盟(FAS)などの団体は、政府機密保護プロジェクト(Project on Government Secrecy)を通じて、エネルギー省の記録の機密解除を積極的に進めており、米国の原子力技術に関連する多くの記録をエネルギー省に機密解除させることに成功しています。このような努力にもかかわらず、エネルギー省は依然として米国政府の中で最も秘密の多い機関の一つだそうです。
この様に、米政府内でも極端な秘密主義と言える組織である事から、UFOの背後にある画期的な動力源の最先端テクノロジーがあるとすれば、エネルギー省が絡んでいるのは間違いないのかもしれません。
米国科学者連盟(FAS)の政府機密保護プロジェクトのディレクターであるスティーブン・アフターグッド氏は、このような極端な秘密主義は、エネルギー省に最初から組み込まれていたと語っています。
エネルギー省の核兵器に関する秘密保持政策は、国防総省の政策と大きく関わっているそうで、機密解除や情報開示の判断が両省庁で異なる場合、どちらかが拒否権を行使することができます。
そのため、たとえば米国の核兵器の規模については、直近では2017年に機密解除されています。WarZoneは、2018年と2019年に兵器の数を更新するよう求め、エネルギー省は快く応じたようですが、国防総省は開示を阻止したとの事。
エネルギー省(DOE)にとって、このような機密性の高い情報を保護することは当然のことながら最優先事項であり、そのために、比較的大規模で独自の装備を持つセキュリティ部隊の一部として、独自の諜報・防諜部門を運営しています。
DOEのOffice of Intelligence and Counterintelligence(OICI)は、1977年にエネルギー省(DOE)とともに設立され、「米国の国家安全保障とDOEエンタープライズに対する脅威を特定して軽減し、科学技術の専門知識を通じて国家安全保障の意思決定に情報を提供する」ことを目的としているとの事。
1999年、米国議会は、核科学の軍事利用を監督するために、国家核安全保障局(NNSA)という半自治的なDOEの別組織を創設した。NNSAの任務は、米国の核兵器備蓄の維持・保護、核拡散対策、原子力緊急事態への対応などである。NNSAはDOEの一部ですが、その役割と業務の機密性を考慮して、かなりの自律性を持って運営されているそうです。
2021年度のエネルギー省予算要求によると、国家核安全保障局(NNSA)は防衛活動のために2021年に260億ドル以上(2兆8500億円)を要求しており、一方で非公開の “その他の防衛活動 “に10億ドル(1000憶円)を要求しているそうです。2017年、米国議会調査局は、国防費のおよそ3%が、NNSAの主要業務のひとつである “原子力防衛活動 “のためにエネルギー省やその他の連邦機関に支払われていると報告。
国家核安全保障局(NNSA)の他の主な目的の1つは、いくつかの国立研究所、ネバダ州国家安全保障サイト、核兵器を生産するテキサス州アマリロのパンテックス工場、米国のすべての濃縮ウランを生産するテネシー州オークリッジ近くのY-12国家安全保障施設など、米国で最も安全性の高い施設を監督・運営することである。Y-12には、米国の核兵器技術にとって非常に重要な物質であり、その製造過程や組成、用途、さらには物質自体が機密扱いとなっている、謎の物質「フォグ・バンク」の製造施設があるそうです。
あまりの機密性の高さに、DOEはかつて「フォグ・バンク」の製造方法を「忘れてしまった」ことがあるそうです。
エネルギー省が、最も機密性が高く危険な兵器や関連技術の一部を公開しないのは当然のことではあるかもしれません。しかし、国家核安全保障局(NNSA)とエネルギー省は、”国家安全保障”という名目で活動の多くを隠しているため、一般に公開されない活動や研究プログラムを行う余地が十分にある言えるそうです。
アメリカの最も機密性の高い研究の鍵を握る
エネルギー省の研究所では、米国の核兵器の開発・維持以外にも、科学が提供する最先端のテーマに関する先駆的な研究など、多くの先進的な研究が行われているようです。エネルギー省のOffice of Science(SC)には、2021年に59億ドル(5900億円)近くが割り当てられ、“自然に対する理解を変え、米国のエネルギー、経済、国家安全保障を前進させるための科学的発見と主要な科学的ツールを提供することを目的”としています。
このような研究の大部分は、全米に広がる17の米国エネルギー省国立研究所・技術センターで行われています。ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)ではミサイル防衛局(MDA)のために宇宙空間での指向性エネルギー兵器の実験を行い、空軍のために先進的な弾薬を開発し、サンディア研究所ではアメリカ初の極超音速兵器のプロトタイプの製作に携わってきたようです。
最近では、DOEは国防総省と覚書を交わし、「米国の国家宇宙政策の目標を支援するための宇宙関連の研究と技術開発に関するDOEと国防総省の長年のパートナーシップ」を確認し、強化することになりました。プレスリリースで、マーク・メネゼスエネルギー省副長官(当時)は、この合意を「歴史的なもの」と呼び、「DOEが国防総省の重要な国家安全保障上の宇宙ミッションを強化するために、DOEの国立研究所やプログラムオフィスに所属する世界最高の科学技術研究者を活用するための枠組みを定めたものであり、今後の両省の宇宙開発において重要な役割を果たすものである」と述べています。
具体的に、先進的な電力・”推進力”、人工知能、量子コンピューティング、次世代通信、自律・遠隔操縦車などの新分野や破壊的な研究分野において、共同作業グループを設置し、両省間の科学的交流を促進するものです。これは、ドナルド・トランプ大統領の最後の大統領令の一つとして、DOEがNASAや国防総省と協力して、宇宙探査や軍事基地の電力供給のための小型原子炉技術を研究開発することを求めていたことを受けたものとの事。
DOEは現在、核融合エネルギー科学(FES)プログラム、先進科学計算機研究(ASCR)プログラム、核科学プログラムを運営していますが、後者は “宇宙がどのように構成されているかの秘密を解き明かすのに役立つ物質のロードマップ “をまとめようとしています。そのために、DOEは2020年4月、プラズマの特性やプラズマの非エネルギー利用を理解する「発見型」のプラズマ科学と、核融合エネルギー生成に関連する「核融合科学技術」の両方を包含するプラズマ物理研究に投資する10年計画をまとめました。「高エネルギー物理学の研究は、宇宙に対する理解を深めるだけでなく、科学分野におけるアメリカのリーダーシップを維持するためにも重要です。全米の数十の大学で行われているこれらの研究活動は、暗黒物質や暗黒エネルギーなどの問題に新たな知見をもたらすだけでなく、国の科学技術人材の育成と維持にも貢献します。」と、ポール・ダバー前エネルギー科学担当次官は2019年のDOEプレスリリースで述べています。
国家核安全保障局(NNSA)の支出に関する説明に充てられた予算要求書の中で、国家核安全保障局(NNSA)が開発している具体的な技術や能力についてはほとんど明らかにされていません。
アメリカの秘密の番人
エネルギー省の研究の多くと研究範囲には極度の秘密主義が貫かれているため、エネルギー省の研究所のドアの向こうには、過激でより興味を引きそうな極秘開発が隠されている可能性があるかもしれません。最先端の物理学、原子力航空推進、エネルギー生産におけるブレークスルーが、エネルギー省以外のどこかで生きていると主張するのは難しいでしょう。
エネルギー省の仕事の多くが、区分けされた機密事項であり、その施設がどれほど専門的で高度なものであるかを考えると、DOEがそのようなブレークスルーの先端技術を隠すことは確かに可能だと思われます。エネルギー省は米軍と非常に緊密な関係を維持しており、戦略的に非常に密接に結びついているようです。DOEはDOD(国防総省)のように注目されることはなく、それは監視の面でも同じかもしれません。
しかし、エネルギー省が米国政府の中でも最も秘密主義的な部署の一つであることは仕方ないかもしれません。なぜなら、核技術は世界で最も危険で機密性の高い技術であり、核兵器が悪用される危険性は、現代世界が直面する最も差し迫った脅威の上位に位置しているからです。
現在、世界を賑わせている未確認空中現象(UAP)、もしくは未確認飛行物体(UFO)などの背後にある、革新的でブレイクスルーとなる航行方法や動力源などの秘密は、米エネルギー省(DOE)に眠っているのかもしれません。
この事からも、アメリカ情報機関より、エネルギー省に注目した方が正解なのかもしれません。しかし、記事でも指摘されているとおり、相当に闇が深く伏魔殿の様な機関であり、秘密を引き出すのは容易ではなさそうです。。🔚
via WarZone
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