マーク・サーニー「PS5ProのGPUは、ベースのRDNA2に複数世代の機能を組み合わせた2と3の中間です。」AMDとの提携「アメジスト」も発表。

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ソニーがプレイステーション4〜5Proのリード・システム・アーキテクトで技術者のマーク・サーニーさんがPS5Proのハードウェアについてより詳細な追加プレゼンテーション動画を公開し、前回のお披露目動画では触れていなかった多くの詳細を解説しています。

ソニーがPlayStation 5 Proの発表時は、過去のPlayStation 4 ProやPlayStation 5の発表とは違う方法で行われました。 PS5Proの発表ではマーク・サーニー氏が解説しましたが、発表時間は僅か9分という短いもので、その大部分はベースとなるPlayStation 5の解説で、ソニー初の「Pro」コンソールだったPS4Pro発表時に行われた詳細な内容のプレゼンテーションとは程遠く、2020年3月にサーニーが行った「Road to PS5」プレゼンテーションと比べると、明らかに内容は物足りない内容でした。

ハードウェアマニアから見れば、これは明らかに情報不足で、スペックに関してもネガティブな噂がネット上で飛び交う事になっていました。そこに最近ネットを騒がした『Alan Wake 2』『Sikent Hill 2』などの「PSSR」採用に伴うチラつきなどの問題が更に火を注ぎ込む結果になっていました。

 PS5Proの発表から3カ月が経過し、ネガティブな印象がややある中、このタイミングで突如このプレゼンテーション動画とDFなどメディアインタビューの解禁です。

あくまで推測に過ぎませんが、前述のようなPS5Proの詳細な技術に関する説明不足、PSSR問題などややネガティブで物足りなかった印象を、しっかりと解説し認知する事で、それを払拭するという狙いもあるのかもしれませんね。

ソニーは今回の動画で、PlayStation 5 Proのハードウェア設計とそのビジョンについて、深く掘り下げた新しいプレゼンテーションを行っています。PS5Proユーザーとしても非常に興味深い充実の内容になっています。

動画では、PS5Proの背後にある哲学は、ゲーム機の製造方法に大きな変化をもたらすもので、サーニーさんは、PlayStation 5 Proの中核となるグラフィックレンダリング技術が標準機よりも強化されている一方で、機械学習がゲーム機の設計において重要な役割を果たす未来があると見ており、ラスタライゼーションが限界に近づいている一方で、レイトレーシング機能は今後大幅に拡張されると見ているようです。

GPUは、RDNA 2.x 16.7テラフロップス

PS5ベースからPS5 Proへの最もハッキリとした進化は、グラフィックス・プロセッサー・ユニット(GPU)の増量による強化です。新世代のゲーム機に期待されるような、CPU性能の大幅な向上やストレージ速度の改善ではなく、PS5 Proの焦点は強化された高性能GPUによる性能を活かした画質の強化に置かれています。

興味深いことに、今回のプレゼンテーションでようやくGPUの世代に言及された事です。今まではRDNAとしか明記されておらず、プレゼンテーションでも詳しい言及はありませんでした。

しかし、今回のプレゼンテーション動画では、PS5 ProのGPUはAMDのRDNA 2(RX 6000シリーズ)アーキテクチャをベースに、RDNA 3(RX 7000シリーズ)、RDNA 4(RX 8000シリーズ、2025年予定)からいくつかの機能が追加された物で、サーニーさんはRDNA2と3の中間に位置すると述べ、RDNA2.xとしています。

標準とされているクロック速度2.17GHzでは、PS5 Proの性能は16.7TFであり、これは発売前に誤って表示された33.5TFの丁度半分です。これに関してはネット上でも多くの議論がありましたが、これはRDNA 3テラフロップという誇張された(あるいはマーク・サーニー曰く “フロップ・フロップ “されたw)数字ではありません。しかし、その他のスペックである30WGP(ワーク・グループ・プロセッサー)、60CU(コンピュートユニット)、最大ブースト2.35GHzについては、PS5 Proの初期リークと一致しています。

ただし、この世代で既に証明されているように、TFLOPsという数値だけでは判断できないのも事実で、TFの数値は無意味な指標になりつつある事をマーク・サーニーさんが今回のプレゼンテーションで認めています。

なぜPS5 Proが現在の最新のAMDグラフィックス・アーキテクチャを完全に採用しないか?その最大の理由はシンプルにPS5との「互換性」です。PS5ProをRDNA3アークテクチャーを採用してしまうと、開発スタジオは倍の手間、負担になってしまいます。マークさんによるとこれは「膨大な負担」となるそうなので、RDNA2.xという新世代RDNA新機能を追加したハイブリッドにしたのは苦肉の策でもあるという事です。

サーニーさんも述べていますが、PS5 Proは次世代機ではなく、あくまでもPS5の中間世代での強化機種だと強調しています。

ですので、PS5 ProではPS5と同じRDNA 2.xをベースラインとして、そこの付加する形でレイトレーシング性能強化などの新機能のために機能拡張を追加するという事です。それによって「ハイブリッドRDNA GPU」と呼称しているようです。

マークさんによると、PS5ProにはRDNA3のジオメトリパイプの一部を取り入れた事で、頂点処理やプリミティブ処理などが高速化されているとの事です。この事からも、様々なRDNA3など新しい世代の機能が思っている以上に採用しているんですね。

プレゼン動画では、PS5 Proにはメッシュ・シェーダーやハードウェアVRSを含む、全機能が搭載されているそうで、2GBの(低速)DDR5メモリが追加で搭載されています。低速 DDR5 2GBをOSなどのシステム面に使う事で、2GBのGDDR6メモリーをPSSRやレイトレーシング処理、高解像度レンダリングなどで使えるという事です。

つまり、PS5Proで追加されたPSSRや向上したRT処理などの為に、2GBほどの容量が必要になったので、追加の低速DDR5メモリ2GBを追加しOSなどシステム面をDDR5に任せ、GDDR6の2GB分を空けたという事ですね。

同じ256bit BUS接続のGDDR6メモリは、ベースのPS5が448GB/秒に対し、PS5Proは約28%高速に強化され、576GB/秒で動作しているとの事。

マークさんは、ネットで一部指摘されたPS5Proの性能が33.5テラフロップス(TF)というスペックに関して、ソニーが開発者向けの資料にそのような事は記載していないと正式に否定しています。

33.5TFという数字が一人歩きしたのは、PS5ProでRDNA 3の機能が一部採用されている事から、RDNA3がRDNA2に対し、2倍の浮動小数点演算性能を持っている事から、一部の人がそれを受けて誤解したもので、実際性能が2倍になるわけではないので、これは「FLOPFLATION」(FLOPSのインフレ)だと述べていますw

ちなみに、PS5ProではRDNA3に見られる浮動小数点演算性能を2倍にする機能は採用していないとの事。

レイトレーシング(RT)性能の向上

PS5 Pro の魅力は、マーク・サーニーさん曰く「ビッグ・スリー=BIG 3」の一つであるレイトレーシンング(RT)性能の大幅な向上です。

開発者は、ベースのPS5 と同程度のグラフィック品質やフレームレートを犠牲にすることなく、RT機能をより自由に使用することが出来るようになったのは、スパイダーマンやラチェット&クランクを見れば、分かります。

これは、ベースとなる PS5 の RDNA 2.x アーキテクチャに、最新のRDNA テクノロジーで追加された新たな拡張機能を追加することで実現されているとの事。

発表でも言及されたように、PS5 Proではレイトレーシング性能がPS5より2~3倍高速化されています。今回の動画ではより詳しく言及されていて、PS5 ProはBVH4ではなくBVH8をサポートしているそうで、これにより更なる高速処理を実現しているとの事。

PS5 Proはハードウェアでのスタック管理も追加しているそうで、これもまたレイトレーシングの高速処理を補うことになり、これはインテルとNvidiaのハードウェアでしか見られなかったものだそうです。

PS5 Proでは、よりディバージェントなRTの方が、よりコヒーレントなRTよりもパフォーマンスが向上するそうです。このディバージェント/コヒーレント・スペクトラムは、簡単に言えば、より平坦な表面上の影や反射はよりコヒーレント、曲面やデコボコした表面上の反射はよりディバージェントとされています。

NvidiaとIntelは、ハードウェア・ソーティング・ユニットやシェーダー実行の並べ替えなど、よりディバージェントなRTを処理するために優れた方法を考案しているそうです。PS5ProではBVH8への移行により、計算量の多いRT計算に取り組むために、PS5よりもはるかに優れた機能を備えていることになります。

PS5Proではよく見る機会が多い鏡面や鏡面に近いRT反射だけでなく、より幅広いマテリアルの粗さをRT反射に使用できるようになるという事です。そして、より複雑なダイバージェントRT処理の方が処理の向上幅は大きくなっているようです。

マーク・サーニーさんは、今回の動画の中でラスタライゼーションには限界があると述べています。その限界を超える方法の1つがRT、 ML(機械学習)AIで、サーニーさんはRTはさらなる研究によって拡張、向上できる可能性を秘めていると述べています。ML(機械学習)AIは更なる躍進が期待出来るとしています。この発言からも将来のPS6へのヒントにもなりそうです。

この方向性からもAMDのRDNA 4の方向性と一致しています。結果的にはnVIDIAの方向性と同じと言えるかもしれません。

PSSR

PSSR実装の解説は非常に興味深い内容になっており、ソニーは4Kの16チャンネル画像の1レイヤーを128MBで処理するのでさえ、利用可能な約300TOPSの3%しか使用しない状況で、メモリ帯域幅によって制限されることを発見したそうです。膨大な量の計算量が必要になるという事です。

最終的にソニーは、WGPにベクター・レジスタを組み合わせることを選択、合計15MBのメモリと200TB/秒のメモリ帯域幅を実現したとの事。

PSSRの目標として導入のしやすさもあったそうで、結果的に他のRTを処理した方法とほぼ同様のアプローチに着地したようです。結果的にまだまだ理想ではないものの、RDNAに大規模な変更を加える事なく、PSSRの処理速度の目標を達成できたようです。ただし、コンソール専用のカスタマイズはされているようです。

しかし、PSSRはまだ “完全融合型 “畳み込みニューラルネットワーク(CNN)ではないそうで、これこそが究極の目標(ホーリーグレイル=聖杯)との事。CNNは完全に融合されているため、1フレームのアップスケーリング中にシステムメモリに触れることがなく、処理スピードの面で非常に有利という理想的になるそうです。

DLSSにかかる時間は1ms未満で、PSSRにかかる時間は約2ms(フレームレートで10〜20fpsの処理コスト)だそうなので、将来的にPSSRでCNNが実現すれば、ゲームが負荷コストという犠牲を減らし、より高速に動作する可能性があるそうです。

負荷コストが減少する事で、将来的により高いフレームレート(120fpsなど)でPSSRアップスケーリングが使用される可能性もあります。

高品質な超解像技術があれば、内部レンダリング解像度がどれくらいかという事は主な関心事ではなくなるわけで、それこそがマークさんが目指す目標との事。

AMDとの提携「Amethyst(アメジスト)を発表。

ソニーはAMDとの新たな提携「Amethyst(アメジスト)」を発表しています。アメジストという呼称は、2014年に発表されたAMD GPUのコードネームで、その「アメジスト」の紫色はソニー(ブルーチーム)とAMD(レッドチーム)の組み合わせに由来するそうです。

アメジストの目的は、前述したリアルタイム・ゲーム・グラフィックス処理向けの高品質な究極のCNNに適したハードウェア・アーキテクチャーを作ることにあるようです。当然、CNNアーキテクチャについても協業するとの事。提携により生み出された物は、両社ですべてのアーキテクチャにアクセスできるようになり、両社のメリットは大きいという事です。

ソニーとAMDは機械学習とレイトレーシングの面で前進させるべく、機械学習の共同研究を進めているようです。ソニーにとっては、PSSRをより大規模にスピーディーに熟成、ノウハウも蓄積できるというメリット、AMDにとっては、Nvidiaに対して出遅れている機械学習研究開発の向上というメリットがあります。

マーク・サーニー氏は、コンソールで利用可能な限られた帯域幅とメモリ容量の範囲内で、ノイズ除去、テクスチャ品質とテクスチャストリーミングの改善、ジオメトリの品質向上など、機械学習にフォーカスしているのは間違いないようです。この事からもPS6の進化ポイントのヒントになっています。

今回のプレゼン動画を見ると、開発者がPS5Proの機能を使いこなすようになれば、現在より大きな可能性があるように感じます。例えば、より高度なRTの実装、より改善されたPSSRでより広範囲のタイトルが高精細になる可能性もあります。 既存のゲームタイトルを強化するためにPSSRを導入すれば、後方互換タイトルの向上も期待出来ます。Xboxでいうところの初代XboxやXbox360タイトルが、4Kリマスターのように高精細に生まれ変わった「後方互換Xbox Enhanced」みたいな物を期待したいですね。

今回の新しいプレゼン動画は、PS5 Proについてより詳しく知ることができ、膨大な研究とゼロからのカスタマイズなどによってPS5Proが完成したんだなと思うと、欲しくなってしまうユーザーも出てくるのではないでしょうか?私もPS5Proの印象が良い意味でよくなりましたね。

正直、最初の初発表時にこのプレゼンテーションをしてれば良かったのでは?と誰もが思ったのではないかとw

同日にデジタルファウンドリーもPS4〜PS5Proリード・アーキテクトのマーク・サーニーさんとインソムニアックスタジオのマイク・フィッツジェラルド氏へのインタビューで、PS5 Proの技術的な詳細、今後のPSSR改良の可能性などについても触れています。

マイクロソフトもPCにフォーカスしながらXboxコンソールでプレイステーションと競合しているので、ソニーが同様の方向性に舵を切った事で、将来的なXBOXで採用されるであろうマイクロソフトのアップスケーリング技術をどのように取り入れるのか興味深いですね。やはりDirect MLの進化版という事になるのでしょうか?それとも、nVIDIAと組むという事は、、XBOXがAMDのアーキテクチャを採用している時点で、互換性の部分からもあり得ないですね。

ま、いずれにしろ、PS5Proの可能性はまだまだこれからという事がよく分かりました。今後の対応タイトルの進化も楽しみと言えます。🔚

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