元米海軍パイロットで、2014年にUAP(UFO)と遭遇した事を、現役海軍パイロットとして初めて公表した、ライアン・グレイヴス氏(既に退役)が興味深いコラム記事をPOLITICOに掲載しています。
この記事の内容はCNNでも大きく報じられています。(Update:2023.03.04)
ライアン・グレイヴス氏は現在、米国航空宇宙学会のUAP統合・アウトリーチ委員会の委員長を務め、更に新しい非営利団体「American for Safe Aerospace」の創設者であり、軍パイロット、民間航空機パイロットによるUAP目撃証言を、公的に支援しようとしています。
元トップガンパイロットが語る事は重要な意味があり、非常に興味深い記事なので、ご紹介したいと思います。
2014年4月のよく晴れた日、2機のF/A-18がバージニア州沖で空戦訓練のために離陸した。海軍の戦闘機隊に所属するジェット機は高度12,000まで上昇し、バージニアビーチの東10マイルの排他的空域である警戒区域W-72へ舵を切った。
訓練場へのトラフィックはすべて、一定の高度にある1つのGPSポイントを通っていく。まるで、軍用ジェット機が他の航空機とぶつかることなく運用できる巨大な部屋への出入り口のようだ。ちょうど2機のジェット機がそのポイントをまたぐ瞬間、パイロットの1人が、透明な球体の中に濃い灰色の立方体の奇妙な物体があるのを見た。
ジェット機は、わずか100フィート(約30メートル)の距離で物体が高速で通過した。(つまり、2機の間の空間を正面から猛スピードで通過。)パイロットはこの正体不明の物体が危険なほど接近し掠めるように通過したため、直ちに訓練任務を終了し基地に戻った。
「もう少しで、あいつらにぶつかるところだったんだ!」フライトリーダーは、その直後、パイロットの準備室でまだ震えていた。
時速数百キロで飛ぶ航空機が正面から側面を僅か30m未満の距離で通過される事がいかに危険な事かという事です。地上で言えば、紙1枚程度の薄さの距離で通過するという感覚で、事実上衝突してもおかしくない距離で、危険極まりない。
私たちは皆、彼が何を言っているのかよくわかっていた。なぜなら、この8ヵ月間、私たちは「あいつら」に悩まされ続けてきたのだ。
私は2009年に米海軍に入隊し、パイロットとしての厳しい訓練を何年も受けた。具体的には、センサーと自分の目で航空機を識別する観測の専門家としての訓練をも受けている。自分の行動範囲に何があるのかを知ることが私たちの仕事だ。
だからこそ、2014年にレーダーシステムのアップグレードを行った後、私たちの飛行隊は驚くべき発見をした。そう、空域に未知の物体があったのだ。
当初、未確認物体は新しくアップグレードしたレーダーに映ったので、「マシンの中のゴースト(要は反射による誤認識、バグなど)」あるいは「ソフトウェアの不具合」だと考えた。しかしその後、レーダーの軌跡と赤外線センサーを含む複数の監視システムとの関連付けが行われるようになり、熱の痕跡を検出するようになった。そして、遂に回避行動を取らなければならないような、身の毛もよだつようなニアミスが発生したのだ。
これは単なる気球ではない。音速マッハ1で加速する未確認飛行現象(UAP)である。さらに、カテゴリー4の強風(120ノット)にもかかわらず、全く動かずに位置をキープする(滞空)ことができる。つまり、翼やフラップ、エンジンなどを備えた通常の航空機とは似ても似つかないものだったのだ。
そして、私たちの戦闘機よりも長く空にい続け、一日中飛び回り稼働を続けたのです。私は正式に訓練を受けた航空エンジニアですが、彼らが示した技術は、私の理解を超えていた。
あの衝突寸前となるニアミスの後、手遅れになる前に何とかならないかと、仕方なく安全報告書を提出したのだ。
しかし、私たちが体験したことを海軍も政府も公式に認めることはなく、当時は目撃情報を報告する仕組みもない。東海岸を飛ぶ他の航空機乗務員が静かに同様の体験を共有し始めたのに、だ。
UAP(未確認空中物体)が不規則に近辺を動き回るので、訓練を中止するか移動するしかなかった。10年近く経った今でも、その正体は分かっていない。
2019年に海軍を退役する際、現役パイロットとして初めて公に名乗りを上げ、議会で証言した。それ以来、この事件に関する注目すべき報道が続々となされ、議会も軍や情報機関にこの謎の真相究明をより強く求める行動をとった。
しかし、最近撃墜された中国のスパイ気球や、調査気球と思われる他の3つの未知の物体については、公的にも社会的にも全くと言っていいほど注目されていない。
それが問題だ。
説明のつかない最先端技術を駆使した気球ではない高度な未知の物体が、日常的に軍事基地上空や制限空域を飛行している。
国家情報長官(DNI)は先月、過去17カ月間に247件の新たな報告を引用し「UAP事象は、飛行の安全や敵対的な情報収集活動に対する懸念の可能性を強調し、制限区域や機密空域で発生し続けている。」と報告した。
“いくつかのUAPは、上空の強風の中で静止したまま、風に逆らって移動、急停止、または識別可能な推進手段なしにかなりの速度で急加速して移動するように見えた。 “
という。
また、海軍は2004年から2021年の間に、回避行動を必要とし、安全報告書が義務付けられるきっかけとなったUAPのニアミス事件である11件を公式に認めている。
また、この高度な未確認物体(UAP)は、民間航空機の安全性をも脅かす危険性が高まっている。昨年5月、ウェストバージニア州上空を飛行中の民間旅客機が、UAPと思われる物体の下を通過中に、2つの主要なシステムに稀に見る障害が発生し、連邦航空局が警告を発した。
1つだけわかっていることは、これらの機体がアメリカの機密プロジェクトの一部ではないということだ。海軍情報局の副長官であるスコット・ブレイは、昨年、議会でそう証言している。
フロリダ州のマルコ・ルビオ上院議員は最近のインタビューで、
「これらの物体の起源が何であれ、それは米軍ではないことを確認した。私たちの軍事基地や軍事演習を行っている場所の上空を何かが飛んでいるが、それが何であるかは分からないし、私たちのものでもない。」
と、情報委員会の副委員長でもあるルビオ上院議員は述べている。
ジョー・バイデン大統領は、「外国の情報収集」から「民間航空交通への危険」まで、ローテクの「気球のようなもの」から生じる国家安全保障と、航空安全の真のリスクを正しく指摘している。
私は、省庁間のUAPタスクフォースと未確認飛行物体に対処する政府全体の取り組みを創設する彼の新しい命令を称賛し、すべての空中物体が世界標準に従って登録され、しっかりと識別できるようにするという彼の提案は、良識的なものである。
しかし、2月16日の記者会見で大統領が言及しなかったのは、高度な性能能力を発揮するUAPについてであった。
軍が説明できない高度に進歩した物体を制限空域で調査するための、政権と議会の透明性と緊急性はどこにあるのだろうか?
アメリカ国民は政府に説明責任を求めなければならない。私たちの空に何があるのかを理解する必要があります。
近日中に、私は航空宇宙の安全と国家安全保障のための新しい擁護組織であるAmerican for Safe Aerospace(ASA)を発足させる予定である。ASAは、UAPを報告するパイロットやその他の航空宇宙専門家を支援する。
私たちASAの目標は、この重大な安全と国家安全保障の問題について、さらなる情報開示を求めることです。私たちは、UAPに関する答えを得るために、信頼できる声、公教育、草の根活動、議会への働きかけを行います。
バイデン大統領は、この問題にできるだけ透明性をもって取り組む必要がある。ホワイトハウスは、最近撃墜されたローテクな物体と、パイロットが目撃した説明のつかないハイテクで高度な物体とを混同してはならない。
米国政府は、他国が「画期的な技術を開発した可能性」も認める必要がある。軍事、情報、科学、技術の各分野で最高の頭脳を結集し、この脅威に早急に対処する必要があります。もし、高度なUAPが外国の高度な無人機(ドローン)でないなら、この謎をしっかりと科学的に解明することが絶対に必要だ。
誤魔化す為に物事をややこしくしたり、否定は、陰謀論と不信感を増幅させ、真実の探求を阻む。
官民一体となった協調的でデータ駆動型の対応が必要だ。北米航空宇宙防衛司令部、米宇宙軍、そしてその他多くの軍および民間機関は、科学界や民間企業とともに、より積極的で警戒心の強い取り組みを支援する必要がある。
今、UAPのパズルのピースは、軍、政府、民間企業のサイロ(倉庫)に散らばっている。私たちは、これらの膨大なデータをAIなどの新しい手法で統合し、分析する必要がある。また、政府以外の優秀な科学者がこのデータを利用できるようにする必要もある。
私たちは、より多くのデータ共有に強い支持をする。前述のルビオ上院議員は、昨年議会が設置した国防総省の全領域異常解決局(AARO)が、未確認物体に関する収集データを学術機関や民間の科学組織と共有することを提案している。米国航空宇宙学会やハーバード大学のガリレオプロジェクト、エニグマ・ラボのような技術系スタートアップ、そして従来の防衛関連企業も、すべて役割を果たす可能性がある。
ただ、残念ながらUAPの報告書や撮影されたビデオはすべて機密扱いなので、現役パイロットは公に名乗り出ることができず、情報公開請求も拒否される。この2つは透明性という点で大きな後退ではあるが、「データの共有化」によって軽減することが出来る。
昨年制定された内部告発者保護制度により、より多くのパイロットやその他の軍人らが多く名乗り出るようになったことに感銘している。
そして、ルビオ上院議員とキルスティン・ギリブランド上院議員(民主党)がAAROに全額資金を提供するよう、新たに議会に提案したことを支持する。
また、議会はUAPをより科学的に調査するための助成金を提供する必要がある。
何よりも、パイロットの声に耳を傾ける必要がある。軍や民間のパイロットは、先進的なUAPについて、重要で直感的な洞察を与えてくれるからだ。今はまだ、UAPを報告することに対するスティグマ(嘲笑、侮辱)が強すぎる。
私が2019年にUAP遭遇について名乗り出て以来、私の飛行隊からは他に1人のパイロットしか公表していない。民間パイロットも、そうすることでキャリアに大きな影響、職を失うリスクを抱えています。
民間人パイロットに公式にUAP目撃報告を求め、パイロットをスティグマ(嘲笑、侮辱)から守り、その報告を調査するプロセスを確立するための新しい規則が必要である。未知のものに対する嘲笑や否定は容認できない。今こそ「好奇心」を持つべき時だ。
もし、私がこの目で見た現象が外国製の最先端ドローンであると判明すれば、国家の安全保障と空域の安全に対する緊急の脅威となる。もし、そうでないのなら、科学的に解明することが先決だ。
元海軍パイロットでUAPとの接近遭遇を体験し、初めて現役パイロットとして証言した方だけに、意見も的確です。しかもこうしたUAP遭遇目撃証言するために、軍パイロット、民間航空機パイロットを支援しようとしている事からも、ライアン氏がいかに真剣にこの件を考えているのかが分かります。
UAPの活動域データ収集という面でも、スティグマ(嘲笑、侮辱、仕事への影響)を恐れて黙殺してしまう状況では、正確なデータを得る事も出来ません。だからこそ、ライアン氏が証言を後押し、支援する活動には賛同出来ます。
米国政府だけでなく、日本政府、全世界の民間航空会社や軍、自衛隊での正確なデータ収集の為にも、名乗り出るよう即する明確なメッセージも必要かもしれません。
via PLITICO
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