ソニーインタラクティブエンターテインメント(SIE)のジム・ライアンCEOは、プレイステーションのボスとして知られていますが、最新のGame Industrybizのインタビューで、今回新たに発表された月定額サブスクリプション・サービス(Liveサービス)である、リニューアルしたPlayStation Plusに、Xboxゲームパスのように新作ファーストパーティタイトルが発売時にリストに入らない事に関して、理由を述べています。
“現在の状況は、スタジオと良い好循環にあると感じています。私たちはこのサイクルを気に入っていますし、ユーザーの皆様もこのサイクルを気に入ってくれていると思っています。このサービス、あるいは当社のどのサービスにおいても、自社の新作ゲームをリリース時に投入するという点は、、ご存知のように、これは当社が過去に行ったことのある道ではありません。また、この新サービスでもそのようなことはありません。
プレイステーション・スタジオで作っているゲームにそんなことをしたら、好循環が途絶えてしまうと思うからです。私たちのスタジオに必要なレベルの投資ができなくなり、私たちが作るゲームの品質への打撃は、ゲーマーの望むものではなくなると思います。”
GameIndustrybizは、ライアン氏の考え方は、ソニーに限ったことではなく、ほとんどのAAAパブリッシャーは、最新作をサブスクリプション・サービスに入れることに消極的だと指摘しています。
マイクロソフトは、マイクロトランザクションがないゲームであっても、Xbox Cloud GamingとXbox Game Passを組み合わせたサブスクリプション(XboxゲームパスUltimate)が、新規プレイヤー、契約者の入口にもなるという考えです。
一方で、ライアン氏の考えは極めて現実的で、シンプルに投資額に対しての回収率、利益率のバランスから判断していると思われます。年々高騰する莫大な開発費、投資額を回収するためにも、初日からサブスクリプションサービスに入れてしまう事は、資金の流れ(投資、回収)の好循環を絶ってしまい、今後のスタジオに十分な投資も出来なくなり、品質低下に繋がってしまうという考えのようです。
しかし、ライアン氏は
“世界の変化のスピードは非常に速く、プレイステーションのAAA級タイトルがPCで発売されるなんて、4年前に誰が言ったでしょう?昨年は『Horizon Zero Dawn』から始まり、『Days Gone』、そして今回は『God of War』と、非常に洗練され、完成度の高いPC版ゲームが続々と登場しています。批評家からも商業的にも大成功を収め、誰もがそのことに納得しています。4年間を振り返って、誰もこんなことになるとは思いもしなかったと思います。”
と述べ、業界の変化のスピードを強調した上で、以下のように語っています。
“ですので、今の段階で何かを決めつけるつもりはありません。今日お話ししたのは、短期的に取るべきアプローチの話だけです。しかし、この業界では物事があっという間に変わってしまうことは、誰もが知っている通りです。“
将来的にプレイステーションの新作ファーストパーティタイトルが発売初日からPlayStationPlusにリスト入りする可能性に関して、業界の流れはあっという間に変化することもあると語り、見方を変えれば、「今直ぐには無理だと思うが、将来的には可能性がない事もない。」という風にも受け取れる含みを持たせた、なんともグレーな内容と言えます。
おそらくは、今回の新サービスを段階的に世界でスタートさせ、しばらく加入状況を見てから判断するという考えもあるのかもしれませんし、ある意味、慎重を期しているのかもしれません。
更にライアン氏は
「サブスクリプションの重要性は、ここ数年で確実に高まっています。「2010年にゼロだったPlayStation®Plusの加入者数は、現在4,800万人にまで増加、今後も加入者数がさらに伸びると予想しています。しかし、ゲームというメディアは、音楽やリニアなエンターテインメントとは全く異なるので、SpotifyやNetflixのようなレベルにはならないだろうと思います。」
と述べ、Xboxが目指していると言われているゲーム版NETFLIXという考えには、否定的な意見のようです。
「ライブサービス・ゲームという現象は、過去10年間のゲーム業界の大きな成長を促した大きな要因です。この傾向は今後も続くと思いますし、私たちのカテゴリーであるエンタテインメントにおいて、長期間にわたって継続的なエンゲージメントを支えるモデルを探すなら、ライブサービスゲームは間違いなく定額制サービスよりも適していると思います。」
「長期的に見たら自分達のサービスの方が持続的なサービスだ。」というニュアンスの発言もしています。この発言は2020年のインタビューで、「巨額の開発費で開発した自社のファーストパーティタイトルを、発売初日からサブスクリプションに入れてしまうのは、持続可能とは思えない。」とXboxゲームパスのビジネスモデルは、長続きしないだろうという見方と同様です。
関連記事:SIE CEOジム・ライアン氏「発売初日に新作をサブスクリプションサービスに入れるというのは、持続可能とは思えない。」
これは、今回の最新インタビューでも同様の考えを示しています。
今回のプレイステーションのPlayStationPlusのリニューアルで、ソニーとマイクロソフトの考え方の違いも鮮明になった印象で、非常に面白いなと思うと同時に将来的にどちらが正しい方向性だったのか、、このあたりの行方も気になるところです。
1人のPS5ユーザーとしては、Xboxゲームパス同様に新作ファーストパーティタイトル発売時から、サブスクに取り入れて欲しかったかなと。
Xbox Series XとPS5両機種ユーザーとしての目線からすれば、明らかにゲームパスのお得感は素晴らしいので、ソニーにも挑んで欲しかったですね。。
私たちユーザーはあくまで顧客であり、企業の採算面まで我々が心配する事ではないと思っています。我々ユーザーがすべきことは、サービスに対しこうしてほしい、こうなって欲しいという意見を積極的にマイクロソフトやソニーに多くフィードバックする事で、将来的により良いサービスになるように変えていく事が重要です。
とにかく、ライアンCEOも含みを持たせたなんとも曖昧な事も言っているので、数年後にどうなるのかはわかりませんが、将来的に僅かでもその可能性は残されているとは言えるかもしれません。🔚
via GameIndustrybiz
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