マイクロソフトのDirectX開発者ブログが更新され、VRS(可変レートシェーディング)がTier 2に移行する事が発表され、Geats Tactics、Gears5のパフォーマンスが更に向上するなど、詳細が解説されていたので、素人でも有る程度分かりそうな重要箇所を抜粋して日本語訳でご紹介します。難しい技術用語が出てくる部分は基本的にピックアップしていませんので、ご興味のある方は元リンクのマイクロソフトDirectX Developer Blogをご覧ください。
ギアーズシリーズの開発を担当しているXBOXゲーム・スタジオのThe Coalitionのチームは「Gears Tactics」に Tier 1 VRS を導入して以来、革新を続けており、今回「Gears 5」と「Gears Tactics」の両方に Tier 2 VRS サポートを導入します。
VRS Tier 2でもVRS Tier 1の時と同様に、大きなパフォーマンスの向上が見られ最大14%までパフォーマンスが上昇したようです。今回は目立った視覚的な影響はなく、以下の画像はONとOFFの比較です。左がVRS ON、右がVRS OFFです。
DirectX 12 Ultimateを搭載したPCとXboxの間では、前例のない調整が行われThe CoalitionはコンソールとPCの両方で簡単にVRSの実装を行うことが出来たようです。
VRS Tier 2の実装は、Xbox Series X|SからPCのAMDやNVIDIAグラフィックス・カードまで、DirectX 12 Ultimate対応のデバイス全てで動作します。
「ギア」をVRS Tier2に移行
The Coalition シニアソフトウェアエンジニア/ クリス・ウォリス氏によると、Tier 2 VRSにより、Gears 5とGears Tacticsでは、ビジュアル品質にはほとんど影響を与えずに、GPU性能を最大14%向上させるようです。
このVRSは、XboxシリーズX|S、AMD Radeon RX 6000シリーズのグラフィックカード、NVIDIA GeForce RTX 20シリーズとRTX 30シリーズのGPUを含む、DirectX 12 Ultimateをサポートするすべてのハードウェアで利用できます。
XboxシリーズX|Sで発売されたGears 5 とGears TacticsとストーリーDLC「Hivebusters」では、コンタクト・シャドウやスクリーンスペース・グローバル・イルミネーションなどの新レンダリング機能が追加されたほか、60fpsのシネマティクス(カットシーン)にも重点が置かれていました。
これらの機能は、素晴らしいビジュアル結果をもたらしましたが、ハイエンドGPUでもコスト(負荷)がかかっていたようで、開発チームは4Kと60fpsを維持しつつ、PC版のウルトラ・テクスチャの豊かなディテールを維持し、これらの新しいビジュアル機能を Xbox Series X|S と PCの両方で実行する方法を調査し、これをきっかけに、Gears Tacticsで行われたVRSの作業の一部を再検討したようです。
Gears TacticsでTier 1 VRS を使用したことで、パフォーマンス(fps)が大幅に向上しましたが、ビジュアル・クオリティに若干の妥協があったようで、ダイナミック解像度スケーリング(負荷に応じて解像度を変える)との相性が良くなかったようです。
Tier 1 と Tier 2 VRS の主な違いは粒度との事。下記の比較画像では、上がTier 1 VRS、下がTier 2 VRSで色がついている箇所が、VRSによって粗い描画の領域です。Tier2で明らかに粗い範囲がより広い範囲に広がっているのが分かります。
上がTier 1、下がTier 2
Image:The Coalition, Microsoft
そこで、チームは「エッジ検出シェーダのオーバーヘッドを最小化することを優先、いくつかの重要な最適化を行い、Xbox Series X|SとDX12 Ultimate GPU上でVRSのテクスチャ生成を0.1ms以下にすることができた。」と述べています。
Gears 5、Gears Tactics では、ダイナミック解像度スケーリングを利用して、60 fpsの滑らかな動きを実現していますが、処理の限界をオーバーしていることが判明した場合は、ダイナミック解像度スケーリングが作動し、次のフレームをより低い解像度でレンダリングして、フレームが落ちることがないようにしているようです。
可変レートシェーディング(VRS)と動的解像度スケーリングは、それぞれ異なる長所と短所を持つ強力なテクニックで、動的解像度スケーリングでは、ピクセルレベルで上下に調節でき、パーセンテージの形で解像度をスケーリングし、GPUをフルに活用しながらターゲットフレームレートを確実に維持することができます。
しかし、The Coalitionによると、弱点は解像度のスケーリングをレンダーターゲット全体で行わなければならず、結果として解像度が全体的に低下するようです。
The Coalitionのアプローチでは、動的解像度スケーリングと可変レートシェーディング(VRS)の両方の長所を活かすことができることが分かったとの事。
例として、Xbox Series Xのリアルタイム・シネマティクスにVRSを適用すると、ダイナミック解像度が平均10%向上し、最高のケースではダウンスケーリング(解像度を落とす)の必要性がなくなったようです。
PCでは、VRSを3種類のビデオ設定クオリティ、バランス、パフォーマンス・モードでチューニング出来るようにしたとの事。
DirectX開発者ブログでは、AMD 6900XTの4K解像度、ウルトラ設定、インセイン設定での詳細なテスト結果が数値化され掲載されていますので、ご興味のある方はご覧になってみてください。
ただし、すべてのゲームが同じようにVRSの恩恵を受けられるわけではないようです。更に、Tier 2 VRSは、より高い解像度で実行するとパフォーマンスが向上するようで、エンジンやコンテンツによっては異なりますが、1080p以下の解像度では、一般的にTier 2 VRSの効果が減少していることが判明しています。
The Coalitionによると、時間的な制約のため、エンジン全体に注ぎ込むことはできなかったようで、今後より深く統合することで、VRSはさらに大きなGPUパワーの節約を実現できるようになるとしています。
SIGGRAPH2020でソフトウェアベースのVariable Rate Shading(VRS) in Call of Duty “が発表されました。
これは、コンソールハードウェアがMSAAをどのように扱うかを利用して、ハードウェアVRSのサポートがないプラットフォーム上でVRSをエミュレートし、実現する方法を紹介しているようです。さらに、コンピュートシェーダにVRSを適用するための最適化された方法も紹介しています。
Tier 2 VRSでは、ビジュアルへの影響を最小限に抑えながら、パフォーマンスを向上させることができます。120以上のフレームレートとより忠実度の高いエフェクトの採用が増えるにつれ、GPUの余力をより効果的な場所に割り充てることがますます重要になってきており、Tier 2 VRSは次世代のレンダリングに取り組むための歓迎すべきツールとなっているとThe Coalition シニアソフトウェアエンジニア/ クリス・ウォリス氏は述べています。
結果的に、VRS Tier2で更に効率が良くなり、処理負荷が軽減されフレームレートもより高く安定、しかも見た目もほとんど変わらないという事ですから、今後ますますGPUへの負荷が重くなる次世代グラフィックス処理を考えれば、本当に賢い有用な機能だと思います。今後全体に最適化が進めば、より効率的になりそうで楽しみな機能ではないでしょうか?
今後、この様に効率良く処理したり、機械学習やnVIDIAのDLSSの様にAIなどによる超解像機能で、映像の質を落とす事なく、高解像度化して更に負荷も減らし、より安定したフレームレートを実現するこういった技術が今後主流になっているのは間違いないので、ネイティブ解像度といったものはあまり重要ではなくなる時代になりつつあるのかもしれません。🔚
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