お馴染みブルームバーグの望月氏が興味深い記事(英語版)を掲載しています。
ブルームバーグの望月氏は、マイクロソフトが世界第3位のビデオゲーム市場(日本)をターゲットにしていることは、様々なデバイスからアクセスできるサービスを含めて、強い結果をもたらす可能性もあり、Xboxは国内での存在感は事実上ゼロに近いため、シェアを拡大する余地は十分にあるとしています。
エース総合研究所(東京)の安田秀樹アナリストは、「Xboxは、今後数年の間に適切なステップを踏めば、日本を米国に次ぐ第2位の市場にするチャンスがある。ソニーの注目が遠のき、ファンはそれに気付き始めている。」と語っています。
驚いたのは、ソニーの変化です。
ソニーの内部事情を話していることを特定されないように求めた従業員によると「ソニーは、日本でのプレイステーション4の不本意なパフォーマンスの後、米国市場をより重視している」というのです。確かにSCEからSIEに社名変更し、米国に拠点を移したことは、知られています。
ソニーの発表ではPS4の全世界での販売台数は、PS3の8700万台から1億1300万台以上に増加しましたが、日本の「ファミ通」によると、日本でのPS4の販売台数は1,000万台に満たず、PS3よりも少なかったとのこと。
一方で米国はソニーのビデオゲーム機の全収益の約35%も占めており、日本は10%を占めているとのことです。つまり、米国市場が単純計算で日本より3.5倍もシェアが大きいことになります。
ソニー広報担当者は、「ソニーが日本を離れて重点を米国に置いているという指摘は正しくなく、同社の戦略を反映したものではない。PlayStation 5が最初に発売される国に日本は入っており、私たちのホームマーケットが最も重要であることに変わりはありません」と述べているそうです。
望月氏によると、カリフォルニア州サンマテオにあるプレイステーション本社の幹部は、身元を明かさないことを条件に話したのが「日本のマーケティングチームのPS4の販売台数成績が予想通りに伸びなかったことで、米国側が不満を抱いている」そうです。
日本の複数のプレイステーションスタッフの話によると、
「日本はプレイステーション5のプロモーション計画から外れることになり、東京の従業員は、カリフォルニア州からの指示を待たされている。日本の開発者サポートチームはピーク時に比べて3分の1も削減されており、プレイステーションの最も古い社内ソフトウェア・アトリエの1つである日本スタジオでは、多くのゲームクリエイターとの定期契約が更新されていない。」
と驚くべき証言をしています。
更にカリフォルニア本社の従業員によると、
「プレイステーションのビジネスには、日本でしか通用しないゲームは必要ないと考えている。」
とまた衝撃証言。
地元の小売店の話で「プレイステーション5」の初回出荷台数は、初回生産台数が限られていた「プレイステーション3」の初回出荷台数を大きく上回っていないそうです。
そうなると、日本でのPS5の入手が困難になっている理由として、日本への出荷台数が抑えられてる可能性があります。私は今まで初代プレイステーションから今まで欠かさず発売日に買ってきたのですが、今回のPS5は抽選3回ハズレ、この入手性の困難さは異常だなと感じていました。
更にモーニングスター・リサーチのアナリスト伊藤和典氏は、「プレイステーションは、もはや日本市場を重要視していないというのがアナリストのコンセンサスだ」と述べているようです。
東京のゲームコンサルタント セルカン・トト氏は「日本の多くのプレイステーション4ユーザーは、最終的にはプレイステーション5に移行することになるでしょうが、それは東京のプレイステーションチームが、どれだけ日本のお客様のニーズをアメリカ本社に押し付けられるかに大きく左右されると語り、「現在の日米間のパワーバランスを考えると、残念ながらあまり期待出来ないだろう」と述べています。
一方で、マイクロソフトが直面している課題は厳しく、ファミ通によると今年11月1日までの日本でのXbox Oneの販売台数はわずか0.1%で、プレイステーション4が10.1%、任天堂のSwitchが89.8%だったようです。
マイクロソフトは、史上最小のXboxであるXboxシリーズSが、この流れを変えるのに役立つと期待しています。
エース証券アナリストの安田氏によると
「これまでのコンソールは、日本のリビングルームには大きすぎると批判されていた。」
マイクロソフトのゲームエコシステム全体でゲームクリエイターとの関係を統括するサラ・ボンド氏によると、米国のマイクロソフトは日本のゲーム開発者とXboxでのタイトルリリースについての話し合いを強化しているという。
望月氏によると、コーエーテクモゲームスもその一つで、鯉沼 久史社長は「アメリカの会社(マイクロソフト)が日本に継続的な関心を示してくれれば、Xbox用のゲームをもっと発売することを検討したい」と語ったそうです。
更に望月氏は、マイクロソフトが日本での買収を模索しているという証拠もあるが、まだ大物との契約には至っていない。日本に拠点を置く小規模から大規模までのゲーム開発者数社は、マイクロソフトが彼らのビジネスを買収するように打診してきたと述べているそうです。
彼らは、交渉は非公開であるため、内容が特定されないように求め、話し合いがどのように行われたかについての詳細も一切明らかにすることを拒否したようです。
アジアでのXbox事業の責任者であるジェレミー・ヒントン氏は、日本企業の買収の可能性について「マイクロソフトは相性の良いクリエイターとの話し合いには常にオープンです。買収の可能性はありますが、現時点では発表はありません。」と述べたとの事。
ファミ通グループ代表の林克彦氏は「日本は長い間Xboxの世界で孤立していましたが、マイクロソフトはその風景を変えようとしているようです。」と語ったそうです。
マイクロソフトは最近はゲーム機の販売だけではなく、xCloudゲームストリーミングサービスや、Game Pass Ultimateサービスの加入者獲得することに力を入れているのは明らかで、このサービスはXboxだけでなく、他のデバイスでも利用可能で、月額固定料金僅か1100円で100本以上のゲームやマイクロソフト傘下スタジオの新作を発売日に追加料金なしでプレイし放題で提供しています。
そして、このサービスで日本国内で急成長しているモバイルゲーマーを獲得しようとしています。マイクロソフトは日本でシェアの大きいアップルのiOSユーザーもターゲットにしようとしており、現在Web OSでの回避策を模索中とも報道されています。
先月の東京ゲームショウ2020では、来年前半にxクラウドの日本でのローンチも発表されていることから、それまでにiOSでの動作も視野に入っているのかもしれません。
ゲーム業界のコンサルタントのセルカン・トトキ氏は「日本はビデオゲーム市場の規模では中国やアメリカに後れを取っているが、マイクロソフトは一人当たりの支出額で見ると日本がまだ最大である。しかし、過去に成功を収めていない米国企業がこの日本市場に参入できるかどうかは疑問が残る。」と述べています。
「マイクロソフトは今後も日本では苦戦を強いられるだろう。XboxシリーズX、シリーズSが前世代モデルよりも日本で良い結果を出すべき理由は見当たらない。 すべての兆候は、今後数年間は任天堂が日本で王者であり続けることを示している。マイクロソフトがなぜ日本にこだわるのかは本当に理解できません。」と述べています。
エース証券のアナリスト安田氏は「マイクロソフトが日本でソニーのNo.2の座を奪うことはすぐにはできないだろうが、少なくともソニーは変化を起こし始めている。」と述べています。
“大きな潮流は常に小さな変化から始まる”
via Bloomberg
PSとXboxの国内シェアはそう変わらないと思うけど、国内のいくつかのソフトメーカーがPSからSwitchに引っ越しを始めてるのは昨今の動向から伝わってくる。また、Xbox本体の普及は難しくても、Xbox Game Pass等のサービス利用者は着実に増えるのではないかと思う。
PSの日本軽視という話だけど、本体が普及してソフトが売れる土壌ができなければ、ソフトメーカーも商売しようという気にはならないので、こういう傾向がPSの国内向けソフトの数をさらに減らすことに繋がるのでゲーム機所有者としては気になるところ。
しかしおもしろいのが任天堂。国内はともかく海外はおおよそ任天堂販売のソフトだけでPSやXboxと同等のシェアを確保してる。海外の任天堂販売ソフトは国内以上に多いけど、それでも他社が性能競争やってる時にそれを二の次でソフト開発して商売を成立させている。市場が違うのを感じる。