ベセスダ・ゲーム・スタジオのディレクタートッド・ハワード氏がGameIndustrybizのインタビューで、Microsoftの買収、クラウドゲーミング、そしてGame Passが販売で苦戦しているタイトルをどのように後押しするのかについて興味深い内容を語っています。一部日本語訳して抜粋しご紹介します。
マイクロソフトによるBethesdaの親会社であるゼニマックス・メディア・グループの買収は、業界人とゲーマーにとっても非常に驚きの結果となりました。
従業員数2,000人を超えるデベロッパー&パブリッシャーである同社は、おそらくこれまでのXboxにとって最大の買収規模です。同社のディレクター兼エグゼクティブ・プロデューサーでもあるトッド・ハワード氏は、取引が実際に完了するのは来年までではないと語っていますが、
「現実に感じる前にまだ時間があります。ショックが和らいだ後は、これまでのMicrosoftとの関係や、今後の道筋を考えると、非常に興奮しました。私たちは、ゲームがどこに向かっているのか、どうやってアンバサダーとなってそれを推進することができるのか、という同じビジョンを持っていて、長い間一致しています。
より大きなゲームコミュニティへの影響を過小評価していました。私はそれがどれほど大きなものになったのか、そしてそれがゲームという大きな文脈の中で何を意味するのか、単純に驚いていましたが、私たちが見たフィードバックには満足しています。多くの人が、私たちと同じように今回の買収を大きなポジティブなものとして捉えていました。」
しかし、業界の中にはこの買収に興味を持っている一方で、業界の統合に関する懸念も表明し、大企業同士が合併することは長期的に見て必ずしも良い傾向とは言えないと指摘している批判的な見方もあります。
しかし、トッド・ハワード氏は、マイクロソフトとベセスダの間の長い歴史、そして協業関係を指摘し、これは一部の人々が考える以上に、適切なパートナーシップである考えのようです。
「他の大きな統合を示唆するものではありません。他の業界では、時々そういったことが起こります。私が手がけたすべてのゲームは、何らかの形でマイクロソフトと提携しています。「Starfield」や「Elder Scrolls 6」では、より大きな意味での提携になると思います。」
「現在のマイクロソフトは、非常にクリエイター主導の会社で、私たちは今まで通りの自分たちでいようとしています。私たちは今やマイクロソフトの子会社ではありますが、今でもゲームを独自に運営していますし、今まで通りのやり方ですべてのものをプッシュしています。」
「私たちは、アクセスに対するマイクロソフトの考え方、つまり、どこにいても、どんなデバイスでプレイしていても、誰にでもゲームを提供できるということを強く感じました。私たちはこのことに非常に情熱を注いでいますし、最終的には、単なるサードパーティではなく、Xboxの一員として参加することで、より良い製品を作り、より多くの人に簡単に届けることができると確信しています。」
マイクロソフトはマインクラフトのモーヤン買収で学んだ事、それはフィル・スペンサー氏、そしてXbox Game Studioのマット・ブーティ氏も言っていましたが、「個々のスタジオ独自の伝統や文化を尊重し、彼らのやり方を極力見守り、そして根強く、長く投資を続ける事」と言っています。それはフィル・スペンサー氏が以前、マイクロソフトのファーストパーティのトップだった時に感じたことで、何が良くて、何が悪いのかを明確に理解し実践しているのでしょう。
ここ数年、Xboxの全ての買収と同様に、急速に成長しているサブスクリプションサービスである「Game Pass」の永続的なゲームタイトルの拡充と、加入者獲得が原動力となっていることは間違いないでしょう。
「エルダー・スクロールズ6」は発売初日からGame Pass入りして配信される予定ですが、他のコンソール(PS5など)でも配信されるのでしょうか。トッド・ハワード氏によると、詳細はまだ決まっていないとのこと。
しかし、最も興味をそそられるのは、ZeniMaxの残りのIPです。「Prey」や「Dishonored」のようなフランチャイズは、直近の作品が高い評価を得ているにもかかわらず、期待された売上を達成できずにプロジェクトが保留されていると言われています。しかし、ゲームパスは売上本数だけではなく、人々が求める様々なコンテンツを提供することを目的としています。id Softwareの共同創業者であるジョン・カーマック氏も、「この買収が古いフランチャイズの復活につながる可能性がある。」とポジティブなコメントをしています。
「サブスクリプション・システム(月額定額制)が登場し、今ではドラマや歴史的なフィクションシリーズのクオリティと投資が見られるようになりました。クリエイターは、人々が欲しがっているものを作ることができるので、お金を払う人も、作る人も、消費する人も、みんなにとって意味のあるものになります。ゲームパスのゲームでも正にそうなっています。」
「ゲームパスのようなものがもたらすものは、プレイしている人だけでなく、クリエイターの自由な発想ももたらすと、私は非常に楽観的に考えています。」
他のすべてのエンターテイメントの形態はサブスクリプションへと移行しており、Xboxがゲームパスに焦点を当てていることは、プラットフォームホルダーが発売初日や1週間後の販売成績が以前ほど重要ではない事を示唆しています。しかし、ハワード氏は、バランスを取る必要があると考えています。
「成功と判断する方法、基準は一つではないと思いますし、一つだけとすべきではありません。テレビや映画の話に戻ると、アベンジャーズのように劇場に行くようなものがあります。それからレンタルに行き、最終的にはある種の定額制やストリーミングサービスに行くことになります。そして、テレビに直行して広告を出すものがあり、その方法で成功しています。
ゲームにはなかったサブスクリプションやストリーミングは、今まさに到来しており、既に成功していることが証明されています。次の世代、次の5年、10年というのは、世界のどこにいても、どんなデバイスを使っていても、本当に誰でも簡単にゲームにアクセスできるようになるということです。」
現在のマイクロソフトは、Xboxを伝統的な意味でのプラットフォームから、現在はゲームのエコシステムとしての「XBOX」と位置づけています。ゲームパスの加入者は、ゲームのライブラリにアクセスすることができ、すべてのファーストパーティのタイトル、そしてゼニマックス・メディア・グループの買収が完了したときには、全てのタイトルがゲームパスのラインナップになります。
Xbox コンソール、PC、またはxCloudで自由にアクセスしてプレイ出来、クラウド セーブは、プレイヤーが次にどのデバイスに移行しても、ゲームを中断した場所から継続してプレイできることを意味します。
トッド・ハワード氏は、「これはゲームにとってより輝くグラフィックを実現するために常に高品質なハードウェアを求めるのではなく、はるかに興味深い未来を表しています。複数のデバイスで気軽にアクセス出来るしやすさはそうだと思います。」
Xboxエコシステムへの多くのエントリーポイントがあるにもかかわらず、今後のベセスダのタイトルはすべてMicrosoftがコントロールするチャンネルに制限されるのではないかという懸念が残っています。Xboxのボス、フィル・スペンサー氏は当時、マルチフォーマットであり続けるベセスダのゲームは「ケースバイケース」で判断されるだろう」と発言しており、ベセスダのトッド・ハワード氏は「取引の詳細はまだ確定していない」と繰り返しています。
このようなリリースに関してトッド・ハワードは「正直言って、まだ全てをクリアしたわけではありません。我々はそれを、ケースバイケースで、常に自分たちで見ています。マイクロソフトの一部としてもそうします。最近のマイクロソフトはXBOX内だけでなく、他のプラットフォームでもかなりオープンにしてきました。例えば、10年前にiPhoneで完全なオフィス・スイートを出す事を期待していないでしょう。」
「今までのエルダー・スクロールズのゲームはすべて、Xboxやマイクロソフトと独占契約を結んでいます。すべてのゲームと提携しています。Morrowindは基本的にコンソール独占でしたし、Oblivionは長期独占でしたし、SkyrimのDLCも長期独占でした。その時が来た時に、何がユーザーにとって最も意味のあることなのかを決めることになります。」
マイクロソフトは、『Ghostwire.Tokyo』と『Deathloop』について、これまでのプレイステーションの独占契約を尊重すると述べています。また、マイクロソフトは長年にわたり、マイクロソフトが所有するタイトルを他のプラットフォームで発売することに抵抗感を持っていない事は、Minecraftが最も分かりやすい典型的な例ですが、ORIシリーズやCUPHEADもNintendo Switchにもリリースしました。
最終的には、マイクロソフトがベセスダを超える力(権限)を持っているにも関わらず、「エルダースクロールズ6」を制限することができるとは考えにくいと思われますが、「私はそれが想像し難いということに同意するでしょうね。」とトッド・ハワード氏は微笑みますが、それ以上は何も語りませんでした。
via GameIndustrybiz
買収後にゼニマックス・メディア・グループのタイトルがXBOX、PC独占(要はマイクロソフト独占)になるのではないかという懸念は、各所で出ていますが、結局のところ他のプラットホーム(PSなど)でもリリースされたとしても、他のプラットホームではフルプライスで買わないといけないところを、ゲームパスで月額1100円払っていれば、発売日初日に他のタイトルと同様に追加料金なしでダウンロードしてプレイ出来てしまうので、良いのかもしれません。
しかし、マイクロソフトからすれば7800億円を投じているので、当然独占タイトルにする権利はマイクロソフトにもあるわけで、こればっかりはXBOXボスのフィル・スペンサーさんやXboxゲームスタジオのマット・ブーティさんが決める事かもしれません。
いずれにせよ、月額たったの1100円払うだけで、今後出てくるマイクロソフトの傘下の23スタジオの新作群に加え、PC版新作も発売初日から全てダウンロードしてプレイ出来てしまうゲームパスは本当に強力で、今後新作が出る度にその価値はますます向上するでしょう。🔚
コメントを残す