これから先の文章には、「 ベターコールソウル 」シーズン6 13話 (最終話)、「 ブレイキングバッド 」のネタバレとなる内容に多く触れてますので、ご注意ください。まだご覧になられていない方で、ネタバレされたくない方はここでストップされてください。
念の為、行間を空けておきます。
「ベター・コール・ソウル」の共同クリエーターで製作総指揮者であり、シーズン6 13話 「ソウル・ゴーン」(さらば、ソウル)の脚本と監督を務めたピーター・グールド氏がAMC TALKのインタビューで、最終回に登場したお馴染みの面々のこと、そしてジミーの法廷での告白がいかに 「ソウル・グッドマンの最後の瞬間 」であるかをAMC TALKで語っています。
そして、ジミー(ボブ・オデンカーク)とキム(レイ・シーホーン)の物語が番組のファンによって今後も書かれ続ける理由、そして今後の事についても語っています。
「ベター・コール・ソウル」を、 シーズン6で終わらせるだけでなく、この最終3話(11、12、13話)ではウォルトとジェシーが登場する3つのシーンで「ブレイキング・バッド」の時間軸を交差させました。
そして、ジミーとキムのストーリーを完結させる一方で、これらのキャラクターを再登場させたかった理由について、ピーター・グールド氏は、
“「 ベターコールソウル 」は、ジーン・タカヴィック=ソウル・グッドマン=ジミー・マクギルの物語で、彼らは繰り返し登場する人物です。
彼は怒ったり、自分の中の何かから逃げようとして、ひどい選択をしてしまうんです。ウォルト(ブライアン・クランストン)とジェシー(アーロン・ポール)のシーンでは、「ブレイキング・バッド」の世界がどのようして「 ベターコールソウル 」の世界と重なり合っているかがわかります。
まずシーズン6 11話ですが、脚本・演出のTom Schnauz(トーマス・シュノーズ)は、ウォルトと関わる際のソウルの間違った判断と、エピソードの最後に彼が取るこのとんでもないリスクを見事に並列化させています。
そしてシーズン6 12話では、ジェシーとキムが雨の降るソウル・グッドマン事務所の前ですれ違い、この2人のキャラクターには共通点がたくさんあることがわかりました。
キムは、自分の闇の部分とカルテルとの酷い出会いを経験したばかりで、ジェシーもこれから同じような経験をしようとしていて、彼らは夜の船のように行き交うんです。
そして13話でウォルトとソウルが登場し、最後の邂逅を果たします。しかし、まだ二人とも自分の中で起きていることを、本当の意味で口に出しては言えないのです。
シーズン6 13話 では、ハンク・シュレイダーの妻であるマリー・シュレイダー(ベッツィ・ブラント)が犠牲者の代表として登場するサプライズもありました。これについて、グールド氏は
“ハンクの妻であるマリー・シュレイダーは正義感が強く、本当に怒りソウルを糾弾し裁いています。ソウル・グッドマンがいなければ存在しなかった、ウォルター・ホワイトという犯罪組織の犠牲者として、彼女は道徳的な権威を持っていると思います。”
「 ベターコールソウル 」シーズン1〜5 の第1話の冒頭(タイトル・クレジットまで)で、「ブレイキングバッド」その後と言えるモノクロ映像で「ジーン=ソウル」編を構成していましたが、ファイナルとなるシーズン6では、最後の4エピソード(10〜13話)で構成することをどのようにして決定したのか、そしてキムの状態が不明な期間について心配はなかったのかについては、
“私たちは、ジーンの部分についてはとても興奮しましたし、楽しみにしていました。なぜなら、他の部分では「ブレイキング・バッド」の前日譚であるのに対して、この部分では事実上の「 ブレイキングバッド 」の続編だからです。
今はジーンの世界のどこにでも行くことができます。この男のアイデンティティを奪って、新しい環境に置き、彼が何を生み出すかを見るのは魅力的だと思いました。
ジーンは何事にも満足する事はありません。ジェフやバディーはすべてに満足していますが、ジーンは取り戻せないものを取り戻そうとしていて、それはもちろんキムに関係しています。
もし、キムがジミーと別れたら、しばらく会わないようにすることがとても重要だと思ったんです。ジミーから彼女を取り上げて、横道に逸れて彼女を戻すようなことはしたくなかったんです。そして、それは単純に「ショーマンシップ」の要素もあります。
番組には、見たいものをそのまま出した方が良い時もあれば、遅らせた方が良い時もあります。この「ショーマンシップ」のおかげで、10話と11話では見られなかったキムが、12話で再び登場することになったのだと思います。”
シーズン6 12話では驚いたことに、キムが全ての経緯を告白します。このキムの自白について、ジミーへの裏切りなのではないかという点については、
“絶対に裏切りとは思いません。キムがついた嘘は、「ジミーと連絡を取っていなかったかのように語った事」です。
彼女はハワードの妻への告白の中で、 「私の前夫が生きていれば 」と言っています。ですので、この告白はキム自身への部分の責任を取るだけです。もちろん、ジミーは多かれ少なかれ彼女にそれを許可したのです。
不思議なことに、ジミーとの電話で本当に解放されたのです。マイクとガスに命を狙われながら、自分の役割を誰にも話せず、この罪悪感の重荷に苦しんでいたのです。だから、裏切りとは思いません。長い間、待ち望まれていた瞬間だと私は思います。
贖罪という言葉は大げさですが、彼女は自分が悪いことをしたのを償おうとして、今までとは違う生き方をしようとしているんだと思うんです。そして、第13話ではその事がよく分かりますね。
私たちは彼女のもとに戻り、一瞬、彼女がまだ私たちが呼称していた「ステップフォード・キム」(従順なキム)であるかのように思えました。
キムは自分を信じていない女性であり、それには理由があります。彼女は自分が何をしたかを知っていますが、どういうわけかシェリルに話して、検察に宣誓供述書を提出し、それをシェリルに渡すというリスクを取ったことで、変化が生まれました。
そして、キムは自分自身を信頼し始めたのだと思います。キム・ウェクスラーに必要なのは擁護者であり弁護士であり、このエピソードで彼女はその方向へ最初の一歩を踏み出しました。”
以前、ピーター・グールド氏は「キムとの電話の後、ジーンの苦しみが彼をより無謀な行動に走らせた。」と述べています。しかし、この最終13話でソウルとキムがしたことを考えると、ソウルはただ捕まりたかったのかもしれません。
“ジミー・マッギルという男が、複雑な男であることに疑問の余地はありません。そして、もしジミーが捕まりたいのなら、彼の一部はそうであり、一部はそうでないことは確かです。ご存知の通りジミーは衝動的な面があり、それに負けてしまうのです。
彼は確かにお金を必要としていません。彼はお金を使わないし、タクシードライバーのジェフや仲間のバディのように楽しい時間を過ごしているわけでもありません。ネブラスカのオマハでやっている詐欺は、キムとやったことに少し似ていると思います。
マルコの時に見たような、他の人と一緒に詐欺をするのが好きな感じですね。それはもう、ほとんどスポーツか趣味のような感じで、ジミーとキムの2人の秘密にしている活動ですね。ジミーにとってジェフとバディは、キム・ウェクスラーの代わりに過ぎないんです。今となってはすべてが空虚に感じられます。”
そして捕まった後、ジミーの弁護士との交渉は、途中のある時点から明らかにキムを法廷に誘い出すための策略に変わっています。
“ジミーが、自分の刑期について交渉しているあたりは、本当にソウル・グッドマンのような気持ちになっているのがわかると思います。彼は強硬派で、交渉術に長けていて、ウォルター・ホワイトとの関わりを斜に構えてバカバカしく語りながら、マリーの顔に向かって自分も被害者だと言っています。
この時の彼は、これまでに見たこともないような厄介な存在です。しかし、そのシークエンスの最後にはキムが自首したことを知ります。システムに対する彼の勝利の感覚は、その時点で口の中で灰と化すのだと思います。
そして、一生に一度あるかないかの見事な司法取引を手に入れたということは、ある種の勝利なのですが、ジミーは「なぜこんなに虚しく感じるのだろう」と考え始めているのだと思います。そして、「もっとうまくやれるはずだ。」と心の中で思っているからこそ、虚しさを感じてしまうのです。
ジミーの刑期を考えると、より良いとは言えません。しかし、自分自身という点ではより良いのです。そして、2人が最後に交わした会話は、まったくもって切なく、悲しい瞬間でした。”
ジミーは法廷での自白の際にハンクの妻であるマリー・シュレイダーの前での証言を撤回します。この場面は本当に驚きました。今までハッタリと偽証だらけのソウルが、ありのままの真実を語ったのです。
“彼が本当に自分を取り戻したかどうかは分かりませんが、「魂=ソウル」を取り戻したのだと思います、そう言っておきましょう。
とにかく、あらゆる可能性を考えました。しかし、ジミーは浮き沈みの激しい人です。そして、番組の最後にソウル・グッドマンに深く入り込むのは、繰り返しになってしまうのです。これは過去に見たことがありますからね。
第9話までのすべてのエピソードは、この男がなぜこのマスクをつけるのか?というストーリーです。そして、なぜ魂のあるこの男は、自分を漫画のキャラクターに変えてしまったのか?だから、本当に当然のことだと思うし、ある意味、シリーズの終わりは寂しいものです。
「泣ける」という声も聞きます。「良い意味で切ない」と思ってもらえたらいいですね。
でも、ある意味、とても希望に満ちた結末です。というのも、刑務所に入ったのはひどいことですが、ジミーはジミーに戻ったのですから。
彼は「魂=ソウル」を取り戻したのです。そして世界の他の人々は それを知らないかもしれない。つまり、刑務所では誰もが彼をソウルと呼んでいる看守でさえもです。
でも、キムがいて、ジミーと呼んでいます。だから彼女はまだ彼を見ていて、彼はジミーなのです。彼はもしかしたら、今までなりきれなかった人物になったのかもしれません。この男はとても賢いので、本当にいつまで刑務所にいるのだろうかと思うほどです。”
刑務所に向かう護送バスの中で、収監者たちがソウル・グッドマンだと気づき、「ベターコールソウル」!と一斉に唱えるシーンは思わず笑ってしまいました。
犯罪者にとってソウル・グッドマンは「ヒーローであり、救済者」なんだと改めて感じます。ソウルなら刑務所でもうまくやって行けそうだなとw
そして、前述でも書きましたが、ジミーの法廷での真実の告白です。普段はとにかく真実を他人には語ろうとしないジミーでしたので、非常にインパクトあるシーンでした。
“彼が再びジミー・マッギルになる瞬間であり、「ソウル・グッドマンの最期の瞬間」です。彼が法廷に入るときはソウル・グッドマンとして入り、出ていくときはジミー・マクギルとして出ていくのです。それを、言葉にして伝えるかどうかは別として、人々にはそう感じて欲しいことなのです。
人生で大切な人を亡くしたとき、誰もが「言っておけばよかった」と思うことや、「チャンスを逃した」と思うことがあるはずです。
マイク、チャック、ウォルターの場面もその一例です。
特にジミーと兄チャックの物語は悲劇的です。二人の男は決して結ばれることはなく、チャックのエゴと傷ついたプライドが、彼の死と大きく関わっていると思います。
今回の「 ベターコールソウル 」13話 の最後は切なく、少し曖昧な感じになっていると感じます。あの最後の瞬間はグールド氏にとってどのような意味を持っているかについて
“「ベターコールソウル」は「ブレイキング・バッド」とも「エル・カミーノ」とも違う終わり方をする必要があると強く感じていました。
3人のヒーローを紹介します。
- ウォルター・ホワイトは、自分の欲しいものを手に入れます。彼は死ぬが、いつも死ぬつもりだったのです。
- ジェシー・ピンクマンは大変苦しみますが、結果的に自由を手に入れます。
- そしてソウル=ジミーは、誠実な人生を送りたいがために、他の方法よりもずっと長い間刑務所に入ることを選択します。
だから、この3つは本当に別物なんです。
あまりひどく曖昧な表現でなければいいのですが。私には、
-キムは自分が愛してきたこの男を見て動揺している-
もしかしたら、まだ愛しているのかもしれない。
彼女はたぶんそうだと思うでしょう。でも、彼らは付き合っていないし、おそらくこれからも付き合うことはないでしょう。
彼女は刑務所にいる彼を見て動揺していますが、彼の精神はまだそこにあり、彼はジミー・マクギルなのです。
完璧な世界では、これらのキャラクターは両方とも生きていて、ファンは頭の中でこの2人の物語を書き続け、起こりうることや可能性について考え続けるのです。
私の理想とする世界は、「キャラクターがショーの終わりを越えて観客の心の中に生き続けること」であり、私たちはそれを目指しているのです。”
ピーター・グールド氏は、「ブレイキングバッド」シーズン2 11話のソウル・グッドマン初登場のエピソードの脚本を書き、長い間ジミー・マクギル=ソウル・グッドマンの人物像を掘り下げた方でもあります。それについてグールド氏は、
“ジミー=ソウルは私の心の中にいます。キムも私の心の中にいます。まるで実在の人物のように気になる人たちですが、この番組に携わった他の人たちとも共通点があります。
一生に一度のクリエイティブな体験でした。私が望んだ以上のものでした。この番組を観た人は、「ブレイキング・バッド」をもう同じようには見られないと思うんです。
例えば、あのガスのスーパーラボの床下がどうなっているのかが、わかることです!
でも、もうひとつの意味は、ソウル・グッドマンという男がウォルター・ホワイトの人生に入り込んでくるとき、彼をウォルトの視点からだけ見ているのではない。ということです。今はソウルの視点からウォルトを見ているんですね。
「ベターコールソウル」は「ブレイキング・バッド」を別の角度から見ることができると思いますし、確かに複雑なストーリーです。でも、ある意味とてもシンプルで、それがパワーになっていると思います。
そして、この物語に続きがあるかどうかですが、あるかもしれません。ヴィンス(ギリガン)のことは言いたくないですが、私たち二人ともこの世界から少し離れて、他のことを探したいと思っています。
でも、もし戻ってくるとしたら、それは私たちがワクワクするようなものを手に入れたからで、もっと言いたいことがあるからでしょう。
それがあり得ないとは言いません。確かにあり得ることです。でも、少し休ませた方がいいような気がします。確かに、絶対にないとは言い切れません。
シーズン6 13話を見ると、キム・ウェクスラーはもっとやることがあるように見えますね、間違いなく。。
との事で、断言は避けつつも、時間を置いての続編企画には全否定していないので、楽しみですね。キムのスピンオフ作品の可能性にも言及しています。
確かに、13話を見た後感じたのは、キムが再び弁護士として奮闘する姿が見たいなと!いつになるのかは全く分かりませんが、是非とも実現して頂きたいものです。
しかし、「ベターコールソウル」は、魅力的なキャラクターと見事な脚本、そして素晴らしい俳優陣といい、親シリーズの「ブレイキングバッド」より、深みのあるドラマだと思いました。
しかし、欲を言えば、「ベターコールソウル」は「ブレイキングバッド」の前日譚なのですから、もう少し「ブレイキングバッド」へとバトンを渡すように繋がる場面を増やして欲しかったなと。そういう面では少し消化不良は否めません。
「ブレイキングバッド」も最高傑作だと思いますし、私も何回も見直しています。
しかし、これで「終わり」と思うと寂しいですね。。また見直しのループに入りたいと思いますw
関連インタビュー記事はまだあるので、また近日中にピックアップしてご紹介したいと思います。
🔚
via AMC Talk
最終話観ました。
疑問なのですが、ジミーは法廷で全てを告白する事でキムを
守ったみたいになっていましたが、果たしてそうなんでしょうか。
ジミーの告白によって、キムはハワードの奥さんからの民事訴訟などを
回避できるんでしょうか。
劇中で、ハワードの奥さんが弁護士を探しているという台詞があったので、
民事訴訟を準備していたのかもしれませんね。
グールドさんが、「キム・ウェクスラーはもっとやることがあるように見えますね、間違いなく」
と言っているので、その部分も含めてグールドさんの言う「ファンは頭の中でこの2人の物語を書き続け、
起こりうることや、可能性について考え続けるのです。」と言っているのも
そういう事なのかなと思いました。
というか、キムのスピンオフ、見たいですよね!
BreakingBadは衝撃的な終わり方でした。
こちらは、深い終わり方ですね。
タバコのシーンで泣いてしまいました。
最後のカットも良いですね。
ロング・ショット等使わずに、フッと終わる。
思い出すとまた泣けてきました。
仰る通りだと思います。
「ブレイキングバッド」は壮絶なフィナーレで、一区切りついた終わり方でしたが、
「ベターコールソウル」はホント、深い終わり方でした。
そうそう、タバコをシェアし合って会話するシーン、、ジワっと来ました。
一見、スッ!と終わってしまった感じですが、
これがまた色々な余韻を残すので、良かったですよねー
実に中身の濃い人間ドラマで、最高傑作ですね。
素晴らしい作品だから、こういう素晴らしいブログが書けるんでしょうね。
ありがとうございました。