これからの文章には「ベターコールソウル」「ブレイキングバッド」、そして最新エピソードについて重大なネタバレが多く含まれています。
まだご覧になっていない方には、ネタバレとなりますので、ご注意ください。ネタバレしたくないという方は、読まれない事をオススメします。念の為、行間を空けておきます。
「 ベターコールソウル 」の最終シーズンであるシーズン6も、今日の12話を入れてあと2話となりました。(13話で完結)
「ベター・コール・ソウル」の共同クリエーター兼、製作総指揮者のヴィンス・ギリガン氏は、本日公開されたシーズン6 第12話「Waterworks:灌漑(かんがい)事業」の脚本と監督も担当しています。
ギリガン氏は、前回見たときからキムがどう変わったのか、ジミーとキムの関係の終わりによる「辛い悲劇」、ジーンがどこまで落ち込んだのかについての考察、さらに「ブレイキング・バッド」の時間軸で、キムがジェシーと交わるのを見るのはどんな感じだったのか、そして番組を終えて、今後の事などについて、気になる多くの事についてAMC Talkで語っています。
ファンも気になるキムの今後を、再び12話で再登場させるタイミングは、どのようにして決めたのか?という事についてギリガン氏は、
“私たちはファンと同じようにキムを愛していますが、昔からある作家の手法としては、観客にそれを懇願させるように仕向けることなのですw 皆さんがどれだけキムを愛しているかを知っているからこそ、できるだけキムに会うのを避けて我慢したんです。あと2、3話エピソードが残っているのであれば、もっと我慢していたかもしれませんね。これは、ピーターがよく言いますが、「ショーマンシップ」の賜物です。
*「ショーマンシップ」とは観客を楽しませようとするサービス精神の事。
「ショーマンシップ」というワードは、大好きなスタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』で、なぜ宇宙ステーションと美しく青きドナウの組み合わせなのですか?」と誰かが聞いたら、キューブリックは「ショーマンシップだよ。」と言ったんです。
だからピーターと私、そして脚本家たちは、いつも「ショーマンシップ」と言っているんです。それが、私たちがいつも考えていることなんです。 ”
シーズン6 第12話でのキム・ウェクスラーは、今までとは全く異なる印象で、容姿も大きく変わっており、正直私も驚きました。この事についてギリガン氏は
“彼女は、私たちが知っているキムとは違います。髪の毛の色も違いますし、トレードマークのネックレスとイヤリングも既につけていませんし、服装もずいぶんと変わり、フロリダ州東部で暮らしています。
私たちは、”いったい彼女に何が起こったんだ?”と考えることになるのです。これを観て、”ああ、彼女は証人保護プログラムを受けているんだとか、あるいは法律から距離を置いているんだ “と思う人もいるかもしれませんね。
実は、序盤で出てくるように、彼女は本名で通っているので、全然そんなことはないんです。オフィスのドアには、 “キム・ウェクスラー “と書かれています。
彼女は、自分の罪のために苦しんでいるのだと思います。それが私の個人的な見解ですね。
キムは、ハワード・ハムリンの死と、それに対する自分の責任について、今でもまだ酷い事をしたと感じていると思います。そして、彼女はこの奇妙な人生を生きていて、エピソードを通して、決断することを拒否しているんだと思います。
会社の同僚にバニラアイスとストロベリーアイスのどちらを選ぶかを聞かれた時も、彼女は選ぼうとしません。
彼女は決断を下せないのでしょう。なぜなら、彼女が行った過去の決断のいくつかで、無実の人を死なせ、多くの人々を苦しめることにつながったからです。”
そして、ソウルのオフィスで離婚届にサインする場面、昔のキムの雰囲気が一瞬だけ感じられます。別れのショックから立ち直り、お互い感情を見せない2人を再び登場させた事について、
“酷いシーンで、見ていてとてもつらかったですね。明らかに傷ついているのに、そうでないふりをする。。二人のやりとりを見ていると、とても違和感があります。とても痛々しく、悲劇的で、悲しむべきものなのです。
そして、ソウルはとても冷静で、色気のない演技をしています。失恋した女の子や男性に、自分の気遣いを知られたくないということですね。
この時のソウルはまるで中学生みたいですが、しかし悲しいですね。キムは自分の気持ちにずっと正直で、多くを語らないですが、あれを最後の別れにはしたくないと思っているのが伝わってきますが、でもソウルはそうさせるつもりなんです。
特にこだわったのは、その静かさです。「俳句」のようなシーンにしたかったんです。長い時間をかけて作りたかったんですね。この離婚届を公証し、署名するのにかかった時間など、痛々しいほど長いものにしたかったのです。
観客の皆さんには、「頼むから、お互いに話をしよう!」と思ってほしいんです。お互いの目を見て話せ!」と。特にソウルには「彼女の目を見て話せよ!こんな風に終わらせないでくれよ!」とね。哀れな事ですが、そうなる運命なのです。”
ソウルの事務所で、離婚届にサインするキムとソウルのヨソヨソしい雰囲気と会話、退出する間際、キムが何か言いたいのを押し殺して黙る表情、そして素っ気ない態度を装うソウルを見て、退室するキムの姿は見ていて悲しいと同時に、寂しく切ないシーンでしたね。。
そして、、ソウルのオフィスを出た直後に「ブレイキングバッド」のあのキャラが再登場し、更に事務所を出るとなんと「ブレイキングバッド」のジェシーとダブルサプライズ。
そして、ジェシーとキムの会話で、キムがジェシーの仲間コンボ(太っちょのモヒカン。後にガス・フリングの手下の部下である自転車に乗った子供に射殺されます。)を弁護していた事も判明します。これも驚きましたねぇ。。
意外なところでキムが「ブレイキングバッド」の時間軸で交差していた事がサプライズでした。これも新しい新事実です。
前話である11話でウォルト(ブライアン・クランストン)とジェシー(アーロン・ポール)が戻ってきて、「ブレイキングバッド」シーズン2第8話の時間軸で登場しました。脚本、監督として「ブレイキングバッド」の2人の登場についてギリガン氏は、
“とても楽しかったですね。私たちは皆、2つの別々の番組から2人のパートナーとのシーンを望んでいました。キム・ウェクスラーとジェシー・ピンクマンが一緒にいるところを見られたら、ただただ「おいしい」と思っただけなんですw
それはどう見えるのか?一体どうやって出会うのか?何がきっかけで二人の道が交差するのだろうか?とね。結果的に、雨の中でタバコをシェアすることに着地したのです。アーロンとまた一緒に仕事ができてよかったですね。
このシーンは、寒い中で人工雨を降らせて撮影しましたが、人工雨は本物の雨のように9時間も10時間も降り続くと、現場は悲惨なことになるんです。荒れた現場でしたが、私はこのシーンをとても気に入っています。
この2人のキャラクターが必要な理由は、これ以上ストーリー上での理由はないでしょう。私たちも「ブレイキングバッド」と「ベターコールソウル」2つの世界がぶつかり合うところを見たかったんです。”
そして前話である第11話の序盤、電話ボックスで聞こえなかったジーンとキムの会話の内容が明かされ、それがどのようにしてキムが行動に駆り立てたのかを見ることができます。その重要なシーンのアプローチについて、ギリガン氏は
“ 「 ベター・コール・ソウル 」でも「 ブレイキング・バッド 」でも、重要な電話の会話が何度かありました。この会話は、「ベターコールソウル」にとって、最も重要な電話の会話かもしれません。この電話の会話によって、本当に多くの筋書きが動き出しました。
ソウルとキムには、とても不幸な結末が待っています。脚本を書いていて思ったのは、
「彼は、苦しんでるな。彼は手を差し伸べている。そして、郷愁にふけっている。まだそこには愛があり、かすかな燃えかすがある。彼は復縁を望んでいるが、しかし、彼女は何も与えようとはしない。」
とね。そして当然ながら、この男はFBIの10大重要指名手配者リストに載っていますし、その他にもいろいろあります。でも、ソウルの事務所でキムが離婚届を出すシーンが辛いように、この電話の会話も同様に大変に辛いものなのです。
キムがジーンに「生きていてよかった」と言い、自分から電話を切ったときの表情といいこのシーンのレイ・シーホーンの演技は素晴らしいものがありました。
そして、ジーンは電話を切った後、公衆電話を叩き壊して電話BOXのガラスを蹴り壊して、心の中でこう言ったと思うんです。
“俺はしくじっちまった。もういい、俺は悪党になるんだ。本気で稼いで、本気で犯罪を犯すんだ “
捕まりたいのか、まるで狂人のような振る舞いです。
エピソード名は「Waterworks」で、その電話がきっかけで彼女はベルナリオ郡に戻り、地方検事に告白書を提出し、そしてハワードの奥さんに自分の罪を告白、それがレンタカーのシャトルバスでのシーンにつながるのです。
このシーンはレア・シーホーンのおかげです。あのシーンは本当に移動中のバスで撮影したんです。アルバカーキのレンタカーのシャトルバスで、レアが見事に演じてくれました。彼女は本当に素晴らしい女優です!”
ホント、このシーンは驚きましたね。。ジーンとの電話後、キムはレンタカーで裁判所に行きます。駐車場のゲートを通るシーンでは、過去にマイクが座っていたゲートは、全自動に変わっていたのも時間の流れを感じさせます。
そしてかつて自分が働いていた場所で見た弁護士の姿を見て、やや未練を感じているような表情も切ないですね。そして地方検事に告白書を提出し、ハワードの奥さんの所に出向き、全ての真相を記した告白文書を見せ、洗いざらい告白するのは驚きました。
結果的に、シャトルバス内でキムが抑えていた感情を爆発させる姿は、見ていても辛いシーンでもあります。この場面のレイ・シーホーンさんの演技はギリガン氏の言う通り、大変素晴らしい演技でした。。エミー賞助演女優賞ノミネートも納得です。
そして、いよいよ8月16日配信の次回13話、シリーズ最終回で何が起こるかわからない中で、「ブレイキング・バッド」「ベターコールソウル」ワールドが遂に幕を閉じることについて、ギリガン氏は
“こんなことを言うのもなんですが、「ベター・コール・ソウル」「ブレイキング・バッド」の世界から一旦離れたいと思います。なぜなら、私がとても誇りに思う3つの仲間が加わったからです。
「ブレイキングバッド」が62話、そして「ベターコールソウル」が63話、そして2時間の「エル・カミーノ」映画です。これ以上にない127時間の作品に仕上がったと感じています。
現在は、新しいことに取り組んでいます。「ブレイキング・バッド」や「ベター・コール・ソウル」とはまったく違う作品になるはずです。いつか作られる事になったら嬉しいですね。
心の中では、密かに「ブレイキング・バッド」をいつかは通して見直したいと思っていますが、しかし何年か先になると思います。自分が一本調子でないことを証明する必要があると思うからです。”
「ベターコールソウル」も遂に来週8月16日夕方以降の配信で最終話となります。
そして、12話の終盤のマリオンとジーン(ソウル)の場面も個人的には辛いシーンでしたね。。ソウルは一体、どこまで堕ちて行くのかと、、12話の終わり方を見る限り、ジーンの将来は厳しい現実が待ち受けていそうです。
それとも、また掃除機修理屋のエドの力を借りるのでしょうか?しかし、エド役のロバート・フォスターは既にお亡くなりになっています。。
あと気になるのは、ウォルト演じるブライアン・クラストンが明かした出演シーンについて、ウォルトとジェシーの2人のシーンが一つ、そしてウォルトとジェシー別々のシーンが1つずつあるので、ウォルト(ブライアン・クラストン)の個別出演シーンが1シーンだけ残っています。それも気になるところですね。
いずれにしろ、泣いても笑っても来週が最終話ですので、心して待ちたいなと思います。
via AMC TALK
インタビューたくさん、ありがとうございます。頷けるところがいっぱいでとても興味深く拝読しました。しかし切ない12話でしたね…。ジミーのキムに対する態度がホント子供のようで。キムも分かってて敢えて離れようとして。ああ、キムーって叫んじゃいましたよ。ここまで来て、ベターコールソウルは愛のドラマだなと。ジミーとキム、ナチョとパパ、マイクとファミリーにナチョ、そしてラロさえも。そんな目線でどうしても観てしまっています。なので私にはブレイキング・バッド以上の作品という評価ですね。いよいよ明日!ドキドキです。ハウスオブドラゴンも気になりますが、とりあえず明日ですね。
お読み頂きありがとうございます。
ベターコールソウル、気になる方が結構いらっしゃるみたいで、
サーチ経由でお越しになる方が非常に多いです。
おっしゃる通り、愛というか、絆というか、、見てくれだけではない深い絆を感じさせる
ドラマですよね。ある意味で骨太で!これも脚本の秀逸さを物語ってますよね。
私も同感で「ブレイキングバッド」を超えた作品だと思います。
本当に深いですよね。ジミーとチャックも根深い確執ありましたしねー
もちろん、「ブレイキングバッド」も傑作ですが、ドラマの深さでは
「ベターコールソウル」かもしれませんね。
私も、明日の最終話はワクワクドキドキです。。キムの行方もそして暴走気味のジーン(ソウル)も、、
心して観ようと思います。これで終わってしまうと思うと、、寂しいですよね。。
最終話を見終わったら、そのまま「ブレイキングバッド」を見直そうと思っています。
そしてまた「ベターコールソウル」に戻るという繰り返しになりそうですw