ソニーは36億ドル(約4100億円)の買収で『Halo』や『Destiny』を開発したことで有名なゲームスタジオ「バンジー」スタジオを買収することになりました。
2022年、今年に入って次々と大規模な買収が続いていますが、ソニーの「バンジー」スタジオ買収も大きな買収と言えます。
ソニーは買収後も「バンジー」の独立性、『Destiny』の将来、マルチプラットフォーム・ゲームへの取り組みは維持するという約束がされています。
「バンジー」はソニー内部でのクリエイティブな独立性を維持し、ソニーが「バンジー」を100%所有する事になるにもかかわらず、今後リリースするゲームは「バンジー」が独自に発売するのです。
「Destiny 2」はマルチプラットフォームのままで、XboxからなくなりPlayStation専用ソフトになることもありません。
「バンジー」は、“どのプラットホームでプレイしても同じゲームにすることを約束“しています。つまり、過去にActivisionとSonyの独自契約で、PlayStationだけでDestiny専用のストライクや武器などがリリースされたように、プレイステーションの独占コンテンツが登場することはないようです。
そして、「バンジー」の今後のゲームもPlayStation専用にはならないようです。「バンジー」スタジオのJoe Blackburn氏とJustin Truman氏によるブログでは、「私たちが創造する世界は、人々がゲームをする場所であれば、どこにでも広がりたいと考えています。」と書かれています。
このあたりは、マイクロソフトが『コール・オブ・デューティー』を今後も継続してプレイステーションで提供するといち早く表明した方針と同じようです。
では、ソニーは何のために36億ドル(約4100億円)もの大金を支払って「バンジー」スタジオを購入したのでしょうか?
『Destiny』がPlayStationにとっていかに重要であるかは、ソニーのPS5でプレイされたゲームトップ10を見れば分かると多くの海外メディアが指摘しています。
『Destiny 2』は、ゲームプレイ時間をベースにすると、6位にランクインしています。このリストには、『FIFA』や『NBA』シリーズなど、毎年リリースされ安定して高い人気を誇るスポーツゲームと並んで、『Fortnite』がトップに君臨、『Call of Duty: Black Ops Cold War』が2位にランクインしています。
『Destiny 2』は、リリースから5年目の現在でも、Xbox、PC、PlayStationのすべてのプラットホームで一定の人気を維持しています。
今まで『Destiny』を意識した多くのライバル(Anthem?)が登場はしましたが、『Destiny』に匹敵するものはまだ出て来ていないのも事実です。
『Destiny』は基本的に無料プレイですが、しっかりとした収益システムを持っています。マイクロトランザクションでコスメティクスを購入したり、シーズン・パスを購入してより多くの報酬やユニークな武器を入手、DLCを購入して追加のキャンペーンやダンジョン、レイドなどのアクティビティにアクセスすることも可能になっています。
オンラインゲームからの収益は、ソニーにとって魅力的なのかもしれません。現在も高い人気を誇る『フォートナイト』は、ソニーとマイクロソフトの両方のプラットホームで、ゲーム・コンテンツとサービス収益に影響を与えるほど大きな存在感を放っています。
ソニーは、2020年に『フォートナイト』を開発するEpic Gamesに2億5000万ドル(約288億円)の出資、続いて昨年も新たに2億ドル(約231億円)を追加で出資しています。EPIC GAMES全体からすれば、僅か数%程度の出資ではありますが、これらの出資からもソニーが『フォートナイト』に価値を見出しているのは間違いないと思われます。
『Destiny』だけで、ソニーは『Fortnite』や『Call of Duty』その他多くの基本無料プレイのシューティングゲームを入手した事になり、PlayStation専用ゲームのPCでのリリースにも進出しているので、“大きなマルチプラットフォームゲーム“を手に入れた事になり、収益力向上にも貢献するかもしれません。
プレイステーションのボスで、SIE(ソニー・インタラクティブ・エンターテインメント)CEOであるジム・ライアン氏は、GamesIndustry.bizのインタビューで「私たちはマルチプラットフォーム化に着手し、「ライブサービス」についても積極的なロードマップを持っています。そして、「Bungie」の優秀で才能ある人々と協力し、彼らから学ぶ機会を得たことで、我々の進むべき道がかなり前進するでしょう。」と述べ、将来的に「ライブサービス」に計画がある事を仄めかしています。
「バンジー」の買収規模はソニーにとって大きな買収でしたが、『Destiny』によってライブサービスをより良く育てることができますが、ソニーが買収した真の狙いは、「Bungie」が水面下で開発しているの次のゲームかもしれないという推測があります。
「Bungie」は近日中に全く新しいフランチャイズを立ち上げる予定である事を明かしています。コードネーム「Matter」(マター)と呼ばれているこの新規IPは、当初求人情報では「キャラクターベース」のゲームプレイを持つ「マルチプレイヤー・アクション・ゲーム」と紹介されていました。
しかし、Bungieは『Halo』や『Destiny』で、現在あるものと全く同じものは作らないということを証明しています。Bungieは昨年、「2025年までに少なくとも1つの新IPを市場に投入する。」とアナウンスした以外は、公式コメントを出していません。
ソニーがバンジーを買収した理由は、バンジーの新作と言われているコードネーム「マター」であるのかもしれません。『Destiny』はまだまだ今後何年も生きていくので、ソニーは『Destiny』の世界観をテレビ番組や映画など、「バンジー」が約束した『Destiny』ユニーバースを更にメディアへ拡大展開させる為に、サポートする可能性が高いかもしれません。
初期のBungieの求人情報が正確であれば、新規IPのコードネーム『Matter』は、『Fortnite』の優位性を崩す次の大きなライブサービスゲームになるかもしれません。
そして、ソニーがよく使う手法として、様々なIPとのクロスオーバーコンテンツなども展開されるかもしれません。
Fortnite、Call of Duty、Destinyが人気なのは、1つのプラットフォームに縛られているからではなく、どこでもプレイ出来るからで、それが成功の要因の一つになっています。ソニーは、過去にクロスプレイやクロスプラットフォームに否定的な見方をしていましたが、現在はそれらの秘める可能性を受け入れ、PCにすらゲームをリリースするようになっています。
ソニーは過去の考えを改め、独占で囲い込むのではなく、クロスプレイ、クロスプラットホームにオープンに取り組み、将来のライブサービスゲームに“大きな計画“があるのかもしれません。🔚
コメントを残す