マイクロソフトの元幹部エド・フリース氏は、マイクロソフトの定額制ゲームサービス「ゲームパス」がゲーム業界に与え得る影響の大きさについて懸念しているようです。
フリース氏は、2004年にマイクロソフトを退社するまでは初代Xboxの立ち上げチームの一員でした。
フリース氏は、Xbox Expansion Passのインタビューで
“ゲームパスが音楽業界におけるSpotifyのような支配的なビジネスモデルになった場合、その影響を恐れている。”
と述べ、懸念しているようです。
Xbox Game Passは2017年6月にサービスを開始、月額1000円程度の利用料で100以上のタイトルをメンバーに提供し、今やマイクロソフトのゲームビジネスの中心的存在となっています。
マイクロソフトの発表では2022年1月時点でGame Passの加入者は2500万人を超えていますが、Spotify(1億8000万人)やNETFLIX(2億2200万人)の規模と比較すると、まだまだ差はあります。
事実、最近の欧米年間ゲーム売上に占める定額制サービスの割合はわずか4%程度であるのに対して、世界の音楽売上はなんと65%と推定されているそうです。
マイクロソフトとプレイステーションの両陣営は、「ゲームパス」「プレイステーションプラス」のようなサブスクリプションサービスが、ビデオゲームにおける支配的なモデルになるとは考えていないと述べています。
しかし、MSの元幹部であるフリース氏は、プラットフォームホルダーが作るビジネスモデルに対して「注意深く」なるようにと述べています。
彼ら(マイクロソフト)がやっていることで、不安なのは“ゲームパス”です。ゲームパスが怖いのは、音楽ビジネスのために作られたSpotifyと、やや似ている所があるからです。
Spotifyが登場したとき、音楽ビジネスは完全に破壊され、ユーザーが曲を買わなくなった事で、文字通り音楽ビジネスの年間売上は半分になったのです。
例えば、現在はiPhoneで曲を買う人はほとんどいないでしょう?なぜかというと、それはすべて定額制サービスのアプリにあるからなのです。だから、ゲームビジネスで同じシステムを作らないように気をつけなければなりません。
このような市場は、人々が思っている以上に脆いものなのです。私は、80年代前半にゲーム産業が自滅する(アタリ・ショック)のを見ました。そして、90年代半ばには教育用ソフトウェアビジネスが自滅するのを見ました。彼らは、文字通り数十億ドル規模の市場を、僅か数年で破壊したのです。
だからこそ、ゲームパスには不安になります。顧客としてなら私はSpotifyが好きです。欲しい曲は全部あるし、顧客としてはとてもお得です。しかし、それは業界にとって必ずしも素晴らしいことではありません。”
Fries氏のSpotifyに関しての見方には、音楽業界ジャーナリストのTim Ingham氏(Music Business Worldwide編集長)が強く反論しており、「ストリーミングが音楽業界に与える影響は全体として非常に有益である。」と述べています。
正直な所、サブスクリプション・サービス全盛の今、それを批判する、懸念するフリース氏の意見は極端な気もしますね、、
実際、あるゲーム機でサブスクリプション・サービスに入り、大人気となり、その影響で他のプラットフォームでも通常の価格での売り上げが急増した という例はよくあるそうです。
その一方で、FIFAやCall of Dutyのように、年に2、3本しかゲームをしない人が、何百ものオプションがあるサービスに加入する可能性はあるのか?という意見もあるようです。
ゲームパス、PS Plusなどのゲームのサブスクリプションサービスが、NETFLIXやSpotifyほどの規模(億単位)にはならないだろうという意見もあります。
しかし、動画配信プラットフォームとは異なり、ゲームパスのユーザーは、ゲーム内のトランザクション、拡張コンテンツ、追加ゲームの購入を通じてお金を積極的に投じているそうで、マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは昨年、Xbox Game Passの加入者はメンバーではないユーザーに比べて約40%多くゲームをプレイし、50%多く消費していると述べています。
この事からも、ゲームパスは単に月額1,000円程度のメンバー費用だけ払って終わりのユーザーだけではない事が分かります。ゲームパスでは、基本スタンダード版がプレイ出来ますが、Ultmate版、ゴールド版などの追加コンテンツが欲しい場合は、コンテンツを別途購入しなければならないのです。
結果的に、ゲームパスで気軽にゲームに触れた事で、そのゲームの追加コンテンツなどが欲しくなり、追加投資するユーザーが意外と多いようです。ここ数年は全部入りのUltimate版が1万円以上することもありますが、ゲームパスメンバーならUltimate版でプレイするために、Ultimateパックというものが用意され、4500円程度でそのコンテンツパックを購入する事で、通常の半額以下でUltimate版でプレイする事が可能というわけです。
より多くのプレイヤーにプレイして欲しい、触れて欲しいと開発サイドは望んでいるわけですから、プレイヤーが増え、更に追加コンテンツの購入へという効果からも、ゲームパスはフリース氏の言うような心配、懸念はちょっと違うのではないかな、、とも感じます。。
しかし、1,000円弱という現在のゲームパスUltimateの料金はいずれ値上げされるだろうとの見方をするメディアが多いようです。
値上げした場合に、いかに契約者数を維持、またはそれ以上に増やす事が出来るのか?そのあたりも気になるところではあります。その為のアクティビジョン・ブリザード買収なのかしれません。🔚
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