ユーロゲーマーのデジタルファウンドリーが『Alan Wake Remastered』の各バージョン比較検証をしています。
『Alan Wake』は、当初オープンワールドを念頭に開発が進められましたが、難航し結果的にオープンワールドではなくなり、ようやく2010年にXbox専用ソフトとして発売され、当時の技術的なショーケースタイトルとしても脚光を浴びました。
2010年当時、TIME誌で
「今年は、数々のMレーティングのゲームがリリースされたが、『Alan Wake』ほど大人の雰囲気を醸し出しているものはないだろう。不安を抱えた主人公Alanは、停滞したキャリアや悩める結婚生活といった大人の悩みを、影のあるオカルト勢力に支配された町を舞台にしたサイコスリラーに持ち込んでいる。
『Alan Wake』の最大の功績は、メタファーをゲームプレイに取り入れたことにある。確かに、ブライトフォールズの憑依された住民たちとは、典型的なピストルやショットガンを使って戦うが、それは彼らに光を当てて闇を焼き払ってからのことだ。メタ的な認識とヒッチコック的なサスペンスのミックスにより、『Alan Wake』はユニークで楽しい試みであり、今年のベストゲームと言える。」
と絶賛され、レッドデッドリデンプション、Halo Reach、アングリーバードなど数々の名作ゲームを抑えて2010年のベストゲームに堂々選出されています。
そしてXbox 360からPC版の発売、マイクロソフトが本作の権利をRemedyに譲渡した事で、今回初めてプレイステーション・プラットホームでも発売される事になりました。
Xboxの後方互換機能でEnhanced化(4K解像度化でリマスター並みにテクスチャやシャドウなどが、綺麗になるXbox後方互換機能の一つ)されてもよかったXboxを象徴するタイトルでもありましたが、一向にEnhanced化されませんでした。
私自身も『Alan Wake』はXbox360時代の重要な象徴的タイトルなのに、なぜEnhanced化されないんだろう。。と常々思っていましたが、結果的に今回のリマスター化の計画があったからかもしれませんね。。
それは『Dead Space』もそうでした。そういう事実を踏まえると、メジャータイトルで中々Enhanced化されないのは、水面下でリマスターの計画がある確率もあるかもしれませんね。もちろん、音楽のライセンス問題や権利関係が複雑になっていて後方互換が実現出来ないなど様々な可能性があるので、全てがそうとは言い切れませんが、、
個人的に好きで真っ先に思いついたタイトルが『Dead Space』を開発したVISCERAL GAMESスタジオ(現在はEAに吸収された後、閉鎖)が開発した『Dante’s Inferno』(ダンテズ・インフェルノ)です。14世紀イタリアの詩人ダンテ・アリギエーリによる古典長編叙事詩『神曲』の第1部「地獄篇」をモチーフとした全9圏の地獄を描いた作品(ウィキペディア参照)で、『God of War』の影響を受けたアクションゲームです。
様々な地獄世界のアートワーク、デザインが本当に見事素晴らしく、戦闘アクションメカニックも十字架を飛ばしたり、スキルツリーの成長しステムもそれなりに充実しており、様々な工夫がされていて、今プレイして非常に面白い作品です。この作品も、中々Enhanced化されません。もしかすると、水面下でリマスター化が進んでいるのかな?と勝手に期待していますw
話が逸れたので、戻します。
『Alan Wake Remasterd』の開発はD3T StudiosとRemedy Entertainmentの共同開発だそうで、PC、プレイステーション、Xboxの新旧世代機でリマスターされています。
DFのビデオを見ると、Xbox 360のオリジナル版と比較ではエフェクト、ライティング、シャドウの品質が向上し、キャラクターモデルは肌や髪に新しいシェーダーを使って作り直され、テクスチャの解像度も向上しているようです。Xbox Series XやSeries S、PS5では解像度が上がり、60fpsでゲームプレイが可能になっています。
今回のリマスターは、Xbox360版ではなく、2012年に発売されたPC版を元にリニューアルしたようで、ゲームプレイのコア部分には変更や調整は一切されていません。同じゲームエンジンでオリジナルと全く同じゲームプレイ体験です。
これはRemedyのクリエティブ・ディレクターのサム・レイク氏が、「オリジナルのAlan Wakeのゲームプレイ感覚はそのままに、新しいプレイヤーにも既にプレイしたプレイヤーにも、あの当時のAlan Wakeをそのままプレイ体験してもらいたい。」という意向もあったようです。最近の主流であるHDRやレイトレーシングに対応していないのは少し残念ですが、PC版ではnVIDIAのAIによる高精細化技術でパフォーマンス向上する機能、「DLSS」がオプションとして用意されています。
Xbox Series X、PS5の解像度は、ネイティブ2560x1440Pで、残念ながらフル4K解像度(3840x 2160P)は無理だったようです。DFによると、Xbox 360の解像度である544Pという低解像度の見映えを良くさせるためにRemedyが、当時採用した4x MSAAは、数世代を経た今回も採用されているようです。
Xbox Series Sは、1080pがレンダリングターゲットになっているようです。その他の3機種の比較では、影、テクスチャ、照明のアップグレードなど、すべての面でリマスターの恩恵を受けており、3機種の違いを示すものはほとんどないとの事。
このリマスターでは、360版Alan Wakeの重要な制限事項の一つである、照明効果と影のための低解像度バッファにも対応した事で、森林地帯での光と霧が交差する場面での低解像度による問題は、Xbox Series X|S、PS5ではより高解像度の照明バッファ、フォグ効果、シャドウで問題を解決しているようです。
今回のリマスターのもう一つの大きなポイントが個人的にも気になっているキャラクターモデルのリニューアルです。キャラクターモデルは、肌や髪の毛の新しいシェーダーでリニューアルされており、全体的に見るとXbox 360版とは全く異なるキャラクターデザインになっています。
新しい素材ではライティングの特性がより正確になり、髪の毛がより艶やかに見えるショットもあります。また、キャラクターの服の素材もより鮮明になり、主人公のAlanはより濃いヒゲを生やしています。とはいえ、オリジナルのデザインを愛する純粋なファンにとっては、あまりにもかけ離れた例もあると指摘しています。
ムービーシーンも一目瞭然、リニューアルされています。オリジナルの『Alan Wake』では、プリレンダリングされたシーンが混在していたようですが、キャラクターモデルや環境を大幅に変更したため、ゲームプレイとの整合性を保つために多くのシーンをレンダリングし直したようです。その結果、カットシーンは解像度も上がり一新されましたが、残念ながら30fpsのままで、60fpsのゲームプレイからは少し違和感が残るとの事。
パフォーマンスに関しては、Xbox 360では20~30fpsのようで、ティアリングが頻繁に発生しています。4K解像度に慣れた今、改めて見直すと本当に解像度が低いなと、、時代の進化を改めて実感します。。
今世代のXbox Series X|S、PS5では改善され、基本的には60fpsで動作しているようですが、フレアガンを使用した多人数での戦闘場面では、50fpsにまで落ち込み、稀に50fpsを割り込んでいます。ハイパワーな今世代機で2560x1440Pの解像度でも60fpsを維持出来ないのはちょっと残念。
Xbox Series両機種ともに、画面上部に若干のティアリングが発生しています。PS5はXboxシリーズXに近い動作をしているようですが、ティアリングが発生しておらず、V-syncのスタッターが若干大きいとの事。
現状では固定60fpsのような安定した60fps動作は期待出来ないようですが、3機種ともほとんどの場面では、きちんと60fpsで動作をしているようです。今後のパッチ修正で60fpsでの動作安定も向上するでしょう。
結果的にDFは、「キャラクターモデルの変更は意見が分かれると思うが、作品自体が明らかに全体的により良くなっている事は否定出来ないだろう。」と評価しています。
『Alan Wake』は2010年の発売当時は素晴らしいグラフィックを持ったゲームと評価されましたが、今回のリマスターは最新のハードウェアスペックに合わせて十分にブラッシュアップされ、素晴らしい作品になっている事は確かなようです。
オリジナルのPC版を4K解像度、最高画質設定で60fpsや高fpsでプレイしてた方ですと、それほど大きな変化は感じないかもしれませんが、Xbox360版しかプレイした事がない方でしたら、雲泥の差に驚く事でしょう。
しかし、キャラクターモデルの変更は賛否両論となっているようです。特にオリジナルに強い想い、印象を残しているファンであればより違和感を感じているようです。
個人的にも顔がガラリと変わってしまったAlanにはどうしても違和感を感じますが、とは言えど『Quantum Break』『CONTROL』の原点とも言える傑作を、現代の技術でブラッシュアップして蘇らせてくれた事は、本作のファンとしても大変に嬉しい事ですし、素晴らしい事だと思いますので、今後もじっくりと楽しんで、将来的に出てくれると期待している『Alan Wake』の続編に想いを馳せたいと思います。🔚
via ユーロゲーマー, デジタルファウンドリー
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