スプリンターセル ブラックリストが発売されて以降、ゲスト的な登場はするものの、中々完全新作が出てこない「スプリンターセル」シリーズ。。そんな状況下、ひょっとしてUBIは「スプリンターセル」新作を出すのを避けているのか?という見方も出ています。
現在は、UBIの顔とも言える「アサシンクリード」シリーズなどの大成功以前に、トム・クランシーが設立したゲーム開発会社レッド・ストーム・エンターテインメントを買収し、「Tom Clancy’s」ブランドの冠のついたゲーム作品群は、間違いなくUBIソフト最大のヒット作でした。
「レインボーシックス」は、UBI買収前の1作目と2作目の「ローグスピア」では、1発当たったら死亡という容赦ない難易度と、入念なチーム計画設定の必要があり、近距離戦のタクティカル・スクワッド・シューティング・ゲームに革命をもたらしました。
その後、「ゴーストリコン」は、アクションをより広い空間に広げ、激しいアクションと緻密さを融合させました。しかし、ユービーアイソフトがテクノ・ミリタリー・ゲームの巨匠としての地位を確立した作品は間違いなく「スプリンターセル」です。
「スプリンターセル」は、「メタルギアソリッド」が開拓したステルス・アクションのコンセプトをほぼ完璧なレベルにまで改良したもので、1作目のタイトルには「Stealth Action Redefined(ステルスアクションの再定義)」というキャッチコピーが付けられています。
「スプリンターセル」はその後、アクション要素の追加、ダークなストーリー重視、独創的な新しいマルチプレイヤーモードの追加など、徐々に進化を遂げてきました。
「スプリンターセル/ブラックリスト」開発当時、主人公サム・フィッシャーのボイスアクトを長年担当してきたマイケル・アイアンサイドは癌を患っていたため、主人公のサム・フィッシャーのボイスアクトを変更する必要がありました。
当時新たに設立されたUBI Soft・トロント・スタジオは、伝統的なステルスと殺伐としたアクションを巧みに融合させた新たな「スプリンターセル」作品を生み出しました。
しかし、その後スプリンターセルは新作アナウンスもありません。そして、「スプリンターセル ブラックリスト」が発売されてから約8年が経とうとしていますが、ユービーアイソフトはシリーズを継続して作品を出すことにほとんど興味を示していません。
その代わり、NETFLIXでのアニメシリーズが予定されていたり、「ゴーストリコン」や「レインボーシックス」などの他のシリーズにサムがゲストで登場したり、Oculusと提携してVR専用ゲームを発売したりしています。これらの「ゲスト出演」的なアイデアも素晴らしい試みではありますが、「スプリンターセル」ファンが望んでいる完全な新作には及びません。
Ubisoftは「スプリンターセル」を恐れているのでしょうか?UbisoftのCEOであるYves Guillemot氏によると2019年当時、「開発チームが『スプリンターセル』新作に取り組むことには不安を感じている。」と述べていました。
それは、「スプリンターセル」のファンがどれほど情熱的で、ある時には感情的に怒りを露わに要求することもあるからだそうです。プレイヤーがゲームスタイルを変えたくない事と固執しているときに、どうやって新しいと思える「スプリンターセル」ゲームを作ろうと思えるでしょうか?
正直、難しくも微妙な問題ですが、UBIは過去に「スプリンターセル」に大きな変更を加えながらも、シリーズの本質はなんとか維持してきました。「Double Agent(ダブルエージェント)」では、シリーズ最高の評価を得たわけではありませんが、信頼度をスライドさせるシステムを導入し、サムはNSA(米国国家安全保障局)とジョン・ブラウンズ・アーミーと呼ばれる自国のテロリスト集団への支援のバランスを取ることを余儀なくされました。
「スプリンターセル コンヴィクション」では、探知されない状態でのサムの殺傷力が強調され、『ブラックリスト』では、ステルス信奉ゲーマーと、敵を容赦なく倒していくアクション・ゲーマーの両方が楽しめるような試みがなされました。すべての試みがうまくいったわけではないですが、「スプリンターセル」はUBIのフランチャイズの中で大きく崩れずに最も一貫してうまくいっている作品のひとつと言えるでしょう。
当時、フランチャイズの安定した品質と最新作の高い評価にもかかわらず、「スプリンターセル:ブラックリスト」はユービーアイソフトの期待した売上を達成できず、その後の新作企画をペースダウンの要因になっていると思われます。ブラックリストはXbox OneやPS4で再リリースされることはなく、Xbox Oneでの後方互換でEnhanced化されたのも2018年になってからのことでした。
Xbox One XやXbox Series X、Series Sならば、後方互換の更に強化されたXbox Enhancedで4Kの高精細でリマスターされたかのようなグラフィックで「スプリンターセル」全作を楽しめます。
それ以来、「ゴーストリコン」の新作が2本発売され、「Rainbow Six:Siege」が発売され、Eスポーツの定番タイトルとなりました。「The Division」と「The Division 2」が登場し登場氏、毎年夏になると「スプリンターセル」の新作発表を期待していたファンは失望し、Ubisoftが「スプリンターセルを忘れてはいない」とCEOの曖昧な声明の繰り返しで現在に至ります。
「ブラックリスト」のセールスがUBIの期待に達しなかった理由は、いくつかの要因がありました。 PS4、Xbox Oneが発売される数カ月前に発売されたことと、古いエンジンを使用していたことです。また、「Saints Row 4」や「The Bureau: XCOM Declassified」などの他のAAAゲームと同日に発売されたため、発売するタイミングも良くありませんでした。
サム・フィッシャーのボイスアクトを担当していたマイケル・アイアンサイドの降板の件で、ブラックリストは発売前から悪評が立っていました。アイアンサイドはこの間、病気(癌闘病)のことを公表しておらず、UBIは彼のプライバシーを守るためにこれに従った事で、誤解が生じたようです。ファンにしてみれば、サムというキャラクターを決定づける重要な人物であるはずのマイケル・アインサイド氏を、UBIが降板させたように見えたのです。
アイアンサイドの癌は快方に向かっており、その後も『ゴーストリコン』シリーズの複数のスペシャルイベント・ミッションでサム・フィッシャーのボイスアクトを提供しているので、新作ゲームであれば問題ないと言えるでしょう。アイアンサイドはインタビューで「自分はサム・フィッシャーだ」と断言しているほどで、彼のサム・フィッシャーへの思い入れはかなりの物があると言えるでしょう。
数年前にUBIのCEO Yves Guillemot氏が表明した「変えてはいけない」という心配は、今では特に有効なものとなっています。「ゴーストリコン ワイルドランズ」は、その広大なオープンワールドと混沌とした協力プレイにより、未完成ながらも大ヒットを記録しましたが、「ゴーストリコン ブレイクポイント」が発売されたときには、ユービーアイソフトは間違った教訓を学んだように思えました。バグはさらに増え、ギアレベルのシステムも違和感があり、「The Division」に似すぎていました。結局、「ブレイクポイント」が再び「ゴーストリコン」らしくなるまでには、発売後に何ヶ月もかけて機能を追加(または削除)修正するアップデートが必要でした。
ゴーストリコン:ブレイクポイント / Image:UBI Soft
『ブレイクポイント』のセールスはあまり冴えなかったようですが、奇妙なことに、これは『スプリンターセル』の新作ゲームの可能性にとって考えると、実は良い事なのではないでしょうか?UBIは、既存のフランチャイズを現在の「より大きく、より多くのRPG要素を持つ」包括的なデザイン哲学に押し込めようとしても、ほとんどの場合、うまくいかないことを経験してきました。確かに「スプリンターセル」でそれをやっても間違いなく上手く機能しないでしょう。
「スプリターセル」は現在の技術があれば自由度も増し、スプリンターセル「らしさ」を保ちつつ、進化させることが出来るのではないでしょうか?マップが大きくなり、攻略方法が増え、未踏の舞台が用意され、ユニークなストーリーが用意されていれば、長年の「スプリンターセル」プレイヤーにアピールしつつ、これを実現することができます。
非常に危険な状況下で身を隠し、冷静にたくさんのクールなガジェットを使うという、「スプリンターセル」の中核となる要素をしっかりと維持している限りは、問題はないでしょう。
ただし、「ブラックリスト」でもあった「ゲームプレイが快適すぎる」のもつまらなくしている理由としてファンの声もあったので、ある程度の難易度と手応えのあるプレイは必要と言えそうです。
特に「Rainbow Six」の成功により、トム・クランシー・フランチャイズの名前は間違いなくこれまでよりもより強くなっており、これは「スプリンターセル」にもプラスに働く可能性もあります。UBIは、万人受けする完璧なゲームを提供する必要はないのではないでしょうか?スプリンターセルのゲームにそのような事は不可能だからです。
Ubisoftはただ「スプリンターセル」を復活させればよいのです。「スプリンターセル」のファンは明らかに新作を望んでいて、明らかに新作の「スプリンターセル」に飢えています。約8年の空白を経て、今がその時なのではないでしょうか?競合他社からステルス・スパイゲームが出ていないことは、Ubisoftがこの状況を利用して、シリーズを再び超一流の最前線に押し上げることができるかどうかです。
おそらくUBIは、『Splinter Cell VR』やNetflixシリーズなどのプロジェクトを利用して、ユーザーの反応を探り将来のゲームに対するユーザーの興味を見ているのかもしれませんが、もし本当にそうだとしたら、UBIはユーザーが今もスプリンターセルに興味があることに気づくでしょう。「メタルギア・ソリッド」は復活する兆しはほとんどないようなので、それに代わって『スプリンターセル』が受け継げば良いのです。
「ゴーストリコン ワイルドランズ」のDLCで、ソリッド・スネークの引退が暗示された後、サムが「それなら俺だけだ」と言いました。この演出から深読みすると、もしかすると水面下でスプリンターセルの新作の開発が進行しているのかもしれません。🔚
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