【XBOXシステムアーキテクト アンドリュー・グーセン氏インタビュー】Xbox Series S:マイクロソフトがエントリーレベルの次世代機を作った理由

今日、Xbox Series Sが発売され、29800円(税別)の低価格ながらレイトレーシングに対応、シリーズXと同等の高速ストレージ、次世代アーキテクチャ搭載などで非常にコストパフォーマンスに優れる魅力的な製品となっています。

ジュニア次世代Xboxとも言えそうな、このマシンの背後にあるストーリーは注目に値するもので、プラットフォームホルダーが時間をかけてコストを削減する上での課題を明らかにしているだけでなく、XboxシリーズXやPS5を超えるコンソール性能の飛躍を実現するためには、今後の困難さを示唆しています。

DFのリチャード・リードベター氏は、マイクロソフトXboxのシステムアーキテクトであるアンドリュー・グーセン氏に、今年3月に直接シリーズSについて極秘で話を聞いており(MS本社に来訪し、XboxシリーズXの分解、詳細レポートをした際に)、そしてXboxシリーズSの存在が明らかになってから数ヶ月後、最近新たに電話でインタビューしたようです。

非常に興味深い内容の記事となっているので、重要な箇所を一部抜粋して日本語訳してご紹介します。

マイクロソフトXBOXシステム・アーキテクト / アンドリュー・グーセン氏

「XboxシリーズSは、私たちにとって非常にインパクトのあるものでした。新世代に向けて新しいコンソールを設計していく中で、私たちはこの世代を通して先のことを考えることを非常に楽しみにしています。そのために、同時に2つの次世代コンソールを開発することになりました。

私たちは、コンソールの設計方法に大きな変化に直面しています。私たちが最初に初代Xbox 360を作り始めたとき、HDDを搭載していない最小のXbox 360のコストは約460ドルだったと思います。そして360世代の終わりまでには、約120ドルでしたが、このコスト削減の道筋は、主にシリコンのコスト削減によるものでした。

Xbox 360は、CPUとGPUをそれぞれ90nmで製造して発売されました。360世代の終わりの頃には、これら2つのコンポーネントが1つのチップに統合され、大幅なコスト削減を実現しています。

ムーアの法則は確かに死んでいるわけではありません。ムーアの法則は継続しており、5nmや3nmへの道筋が見えてきており、これらは性能とパワーの向上をもたらします。これ以上持ってこれないのは、トランジスタあたりのコスト削減です。これはコンソール開発に大きな影響を与えます。コスト削減が可能になるからです。しかし、それは減速していて、以前見たような規模にはならないでしょう。

プロセスこそ、縮小する動きは順調なようですが、大きな問題はメインチップ(SOC)の製造コストに直結するトランジスタのコスト次第との事です。しかし、トランジスタのコスト削減は、かなり限界に近い所まで来ているようです。

「だからこそ、最初からXboxシリーズSをやらなければならないと感じていたのです。将来を見据えた設計をしなければならなかったからです。

初めてのことですが、私たちは最初からエントリーレベルのコンソールを用意しなければなりませんでした。前世代の初期では、本当に高価なものを作るので簡単でした。それは、単純に出来るだけ多くのシリコンを入れて、できるだけ多くの性能を引き出すことです。そうすれば、後にコスト削減曲線に乗って一般的市場価格まで下がるでしょう。しかし、それはもうありません。」

Microsoftが先日発表したXboxシリーズXに関するHotChips2020のプレゼンテーションは、当ブログでも複数の記事で詳細を日本語訳でご紹介しましたが、シリコン・コストが問題視されていて、世代的な飛躍を実現することがいかに困難であるかについてMicrosoftのエンジニアが解説していました。

このHotChipsのプレゼンでは、7nmプロセスはXbox One XやXbox One Sに採用された16nmプロセスに比べて対費用効果が低いことが示唆されていましたが、XBOXシステムアーキテクトのアンドリュー・グーセン氏は、この点について次のように説明しています。

以前のプロセスに比べて、トランジスタ1個あたりのコストが低くなっているのは間違いなく、現在進行形の業界の傾向ではあります。7nmの方がトランジスタ1個あたりの単価はまだ安いです。しかし、7nm以降はコストが潜在的に上昇し始めるところです。それ以外にも、クロックレートの向上や、より優れたパワーの利点を得ることができます。しかし、それらはコスト削減に直接適用できるものではありません。

しかし、悪い事ばかりではありません。ソリッドステートストレージ(SSD)に使用されるNANDフラッシュ・モジュールのコストは、HotChips2020のプレゼンテーションによると、前年比で23%という健全なペースで減少しています。しかしそのコストダウンが、どこまで安価なコンソール開発につながるかは、分かりません。

「SSDのコストが下がったとしても、消費者の期待は更なる大容量の内蔵ストレージということになるので、それは厳しいですね。つまり、コスト削減にはなっていないということです。従来はハードディスクの固定費をモデル化し、その固定費で容量を増やすだけでした。」

新世代はXbox Velocity Architecture、そして可変レートシェーディングやレイトレーシングなどのグラフィックス機能や、CPUの処理性能を4倍に高めたことなどです。

だから、適切な価格帯のエントリーレベルがあることを確認したかったのです。そうすることで 世代を引き留めるのではなく 進化させることができました。」

Sシリーズは次世代機の足かせになると聞いたことがあります。でも、実際にはXboxシリーズSをやることで、次世代機の特性に合わせて書かれたゲームが増えるので、XboxシリーズSはそれを促進していると思っています。

「皮肉なことは、我々はXbox One Xを検討したのですが、私たちが欲しいと思っていた価格にまでコストを下げることができませんでした。そこでXbox Series Sを見てみたのですが、Xbox One Xよりも安く次世代の機能をすべて搭載しています。グラフィックス性能の面では、皆さんもご存知だと思いますが、新しいAMD RDNA 2アーキテクチャによるサイクルあたりの改善は、25パーセントです。仮に、今の計算では4TFなら5TFまで向上していることになります。

「また、私たちが見ているコンテンツのデータの中には、さらに優れていることを示唆するものもありますし、可変レートシェーディングやFP16など、新しいアーキテクチャに追加された他の機能、追加の25パーセントは、新しいゲームのためのパフォーマンスと同等になると思います。それに加えて、新世代を定義する他のすべての機能を手に入れることができます。ですから、私にとっては、これをやろうという決断は簡単でした。

そこで私たちが行ったことの一つは、Xbox One Xにはできない方法でXbox One Sのゲームを強化するために、XboxシリーズSを設計したということです。既存のXbox One Sのゲームをアップデートして、XboxシリーズSでプレイしたときのフレームレートを2倍にして動作するようにしました。

パフォーマンスの面では、実際XboxシリーズSのGPUは、Xbox One Xよりも優れた性能でXbox One Sのゲームを動かしています。SのゲームはXbox One XよりもXboxシリーズSの方がよく動きます。

CPUとGPUのヘッドルームが非常に広いので、これを行う際には実際のチューニングは必要ありません。多くの場合、3行のコードを変更するだけでゲームが動くようになります。そう簡単にはいかなくても、修正はかなりマイナーなものです。トリプルAタイトルでフレームレートを2倍にすると、完璧に機能したものがありました。群衆アニメーションが通常の2倍の速さになっていたことを除けば。

そのため、この種の修正は開発者にとって非常に簡単に行うことができます。私たちはゲーム開発者やパブリッシャーと協力してアップデートを行っています。これは基本的に、XboxシリーズSで2倍のフレームレートで動作するゲームを選択することになります。

Xboxプログラム管理マネージャー ジェイソン・ロナルド氏

「場合によっては、より多くのサービス・ベースがあるゲームや、アクティブなコミュニティがまだ残っているゲームのために、開発者がそれを行うことが容易になるでしょう。また、過去に行ってきた方法と同様に、タイトルに代わって私たちのレベルで対応できる場合もあります。これらはすべて、発売が近づくにつれて積極的に取り組んでいることであり、発売が近づくにつれて、特定のタイトルの具体的な機能強化について、より多くの情報を共有できるようになるでしょう。」

Xbox One X 向けの「4K エンハンスド」Xbox360タイトルのすべてが、Xbox シリーズS向けに改良される部分を残しているということです。完全なウルトラHD 4K体験はXboxシリーズXのみのものですが、 XboxシリーズSのユーザーは1440Pにアップグレードされるようです。当時、目標のフレームレートにヒットしなかったXbox 360と初代Xboxのタイトルは、今ではその可能性がはるかに高くなっています。

「メモリが最大に消費するのはレンダーターゲットとテクスチャ容量です。そして、両方とも低解像度をターゲットにすることで大幅に縮小します。つまり、1440pは2160pの44%程度のサイズなので、そこにあるすべてのレンダリング・ターゲットは小さくなります。また、g-バッファなどを使用しているので、メモリ消費量の面ではかなりのメモリを使用しています。また、テクスチャの予算も非常に重要です。そのため、シリーズSの8GBの容量は十分に確保できていると感じています。」

DFによると、最近のグーセン氏とのインタビューでは、さらにいくつかの話題が出たようです。まず、Xbox Series SとXbox Series Xの両GPUは、シェーダ上でINT-4とINT-8の拡張機能をサポートしており、機械学習アプリケーションへの扉を開いています。HotChipsのプレゼンテーションでは、その用途としてAIのアップスケーリングに言及していました。

アンドリュー・グーセン氏「AIのアップスケーリングは、我々にとって非常に活発な研究分野ですが、現時点ではこれ以上何も言うことはありません。」

DiretMLなどの機械学習によるアップスケーリングは今のところアンロックされていないようですが、時間が経過すれば新たな機能としてアンロックされるかもしれません。

ここで、DFのリチャードさんが興味深い話をしています。

『新しい Xbox コンソールは「RDNA 2 を完全に統合した唯一の次世代コンソール」になるという非常に興味深い主張が、ツイートで簡潔に表現されています。

これは、事実上マイクロソフトはXboxシリーズX、シリーズSのGPUがプレイステーション5にはない機能を持っていることを示唆しています。これは否定できない主張ですが、そのほとんどは、このような明確な主張は厳しい法的審査を通過した可能性が高いからです(そして、AMDとも署名した可能性が高いからです)。

特筆すべきは、ソニーは否定していないことだ。私が言えることは、AMDがRDNA 2を正式に発表した4月の時点で、Mark Cerny氏のプレゼンテーションで言及されていないRDNA 2の機能がPS5に搭載されているかどうかをソニーに尋ねたのですが、この件については何のコメントもありませんでした。私の質問は、かなりストレートなものでしたが、ストレートな答えは得られませんでした。簡単に言うと、もしXboxがRDNA 2のフル機能セットを持っているとしたら、どの機能がXboxシリーズのコンソールにしかないのでしょうか?

Xboxプログラム管理マネージャーのジェイソン・ロナルド氏

RDNA 2について考えるときに本当に重要なポイントは、ハードウェアアクセラレーションによるDirectXレイトレーシング、メッシュシェーダのサポート、そして明らかに可変レートシェーディングです。

さらに、RDNA2の標準的な定義を超えたところで、サンプリングやフィードバックストリーミング、さらにはDirectStorageのようなものが登場します。ご覧のように Nvidiaは最近、DirectStorageのサポートも発表しました。

「私たちがコンソールの分野でイノベーションを起こしている分野のいくつかでは、この技術を実際にPCの分野でも推進していくことが目標です。開発者ができる限り簡単にできるようにしたいと考えています。私たちがコンソールに投入したこれらの革新的な技術を、PCにも導入しようとしています。

開発者がゲームがどこで動作するかに関わらず 信頼できる共通のベースラインがあるように エコシステムに導入しようとしています。PCのエコシステムとコンソールのエコシステムの間には、本当に多くの良い影響が見られると思います。そして明らかに、これらはすべてクラウドにも移行していきます。」

これこそが、似たようなグラフィック・コアであるにも関わらず、特定のスペックポイントを超えて、ソニーとマイクロソフトの次世代ビジョンを差別化する最も重要なポイントだと思います。

もちろん、PS5におけるRDNA 2の機能の有無は、Digital Foundryのクロスプラットフォームゲームの比較で、全て洗いざらい出てくるでしょうが、マイクロソストのXBOXプログラム管理マネージャーのジェイソン・ロナルド氏がここで説明しているのは、コンソール専用ではなく、PCやクラウド上でもゲームが楽しめるような次世代機能を提供するという、もっと根本的なことです。これはマイクロソフトの戦略の一部であり、市場のアドレス可能な規模を拡大することを目的としている。

同じゲームを他のハードウェアに移植することは、超ハードコアなコンソールゲーマーには受け入れられないかもしれませんが、Xboxを真にグローバルなものにするためには不可欠なことなのです。

Xboxはすでに、単なるコンソールベースのエコシステムを超えた動きを始めており、XboxシリーズSを現在のコンソールにしてきたビルドコストの問題を見ると、「世代間の飛躍」という概念はいつまで通用するのでしょうか。

そして、今後の半導体コストの見通しを見てみると、世代交代の概念がコスト効率の良いゲーム機としていつまで通用するのかは疑問に思います。しかし、近い将来のことを考えれば、XboxシリーズSは魅力的な製品だと思います。そして、経済的に不確実な時代に相応しいゲーム機なのかもしれません。

via Eurogamer DigitalFoundry

3 件のコメント

  • 訳よりもご自身の解説に、いつも感心感謝しながら読ませて頂いています。多方面からの情報をまとめて正しい情報ベクトルを与えていて素晴らしいジャーナルです。今回はDF内でも派閥があるのかデンジャーマネーがあるのか分かりませんが、公平には情報が上がって来ませんね。MSはオープン姿勢で望んでいそうな感じが好きですし、開発者のコメントも素晴らしいと感じています。
    HDMI関連、サウンド関連と残念な情報が多いソニーは開発者と事務方で上手くいってない典型的な会社になってないか心配です。他のポートフォリオでは上手くいっている部門もあるなか、ゲーム部門はどうでしょうか?このターンは将来的なターニングポイントにならなければいいのですが。

    • Tkさんこんにちは。お読み頂き、そしてご評価頂きましてありがとうございます。

      おっしゃる通りで、どうもDFのボスであるリチャードさんが最近
      所々でXBOXを突き放し、PSサイドに寄った印象の書き方に変化していて
      日本語訳しながら妙な違和感を感じています。
      水面下で何があったか分かりませんが、明らかに変化が生じているのは感じています。

      PS5は閉ざしている感じもあり、ゲームとTV部門の連携の綻び?!なのか分かりませんが、
      違和感は感じています。。SNSでもGPU関連?と思われる不具合も目につきますし、
      大丈夫ですかね。。何しろ自分の手元にPS5がないので、正直な印象を書けないのがね、、
      現在ソフマップ、ジョーシン、ソニーストアの抽選結果待ちですが、

      もし当たって手元に来たら、PS5とXboxSeriesXの100%ピュアな遠慮のない実直な
      比較インプレ記事を書きたいと思っています。

      • いつもジャーナルに感謝です。DF原文での感じ方が同様ですね(笑)ソニー8月からのゲーム部門の動きはおかしかったので、今出揃っている事案を整理すればほぼ答えは明白です。今回はハード側での問題、不明、非公開が多く、誰もメリットがありません。ハイエンドユーザーの方々は本当に困っていると思います。特にAV畑で購入した方は???となっているでしょうから。今後のシステム更新が止まってしまいます。
        私は大手家電での抽選待機ですが、もういいかな(汗)自分はメディアプレーヤーとして使うことも多いので出力にAtoms無いと厳しいので。
        古い友人達は初めてGears、Haloに触れて後悔しています。もっと早くやるべきだったと。サブスクリプションサービスは凄いですね。誰が発明したんでしょうか?
        是非両機でのレビューが叶うことを期待しています。なんか他人任せですいません。
        自分も一段落したら周辺機器を更新しようと思います。何か気づきがあれば、お知らせします。

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