マイクロソフトのゲーミング部門CEOであるフィル・スペンサーは、インタビューでXboxシリーズSの存在意義について、そしてXboxの未来、そしてハードウェアのイノベーション(革新)と将来へのアプローチについて語っています。
昨年からXbox Series Sの存在意義について論争の的になっています。XboxシリーズSはハイエンドモデルであるXbox Series Xの性能を落とした低解像度版という位置付けで、現行世代のコンソール機の中で現在、最も手頃な価格で提供されています。
Xbox Series Sは、PlayStation 5やXbox Series Xよりも遥かに安い価格で提供されています。Xbox Series Sは、よりコストの安いチップを使用して1080p HD解像度(フルHD)をターゲットにしており、4K解像度までの解像度の必要性を感じていないユーザーとっては魅力的な価格です。
Xbox Series Sは解像度、60fpsなどで犠牲になるケースがありますが、うまく最適化されたゲームは60fpsも可能なこともあります。しかし、Xbox Series Sの存在意義については色々と意見があります。それは、多くのゲームはXboxシリーズSを念頭に置いては作られていないということです。
『Black Myth Wukong』や以前の『Baldur’s Gate 3』のようなゲームは、XboxシリーズSでは10GBのRAMしかないのに対し、PS5やXboxシリーズXでは16GBあるため、最適化の作業の影響で発売が遅れたり、場合によっては省かれたりする場合もあるようです。昨年もある開発者がXboxシリーズSの最適化に関して苦労していると述べたことが議論の的になりました。
このことから、PS5やXboxシリーズX向けにゲームを開発した「一部の開発者」は、まずXboxシリーズSに移植するのに苦労し、頭痛の種となっていることもあるようです。しかし、フィル・スペンサー氏はこのことについて心配はしていないようです。
IGNを退職し現在フリーのジャーナリストであるデスティン・レガリー氏との新しいインタビューの中で、スペンサー氏はXboxシリーズSについて語っており、「パリティ条項」が今後もなくならないことを明確にしています。
「パリティ条項」とは、「XboxシリーズXとXboxシリーズSの間で、ゲームプレイ、基本的な機能などは同等にして出荷する必要しなければならない」ことを定めた条件みたいなものですが、『バルダーズゲート3』のCo-opプレイ機能のようなRAMを大量に消費するような機能については、例外が認められているようです。つまり、Xbox Series Xではあって、XboxシリーズSでは搭載されない機能もあると言うことです。
マイクロソフトが “パリティ条項 “の廃止を検討することはあるか?とのデスティン氏の質問に、スペンサー氏は、以下のように述べています。
“私は、ほぼ逆のことを考えています。ハンドヘルドPC(携帯PCゲーム機)やNintendo Switch 2の台頭により、開発者は低電力デバイスやバッテリー駆動のデバイスから壁に接続するものまで、より多くのデバイスのスペックを構築しています。 実際、私たちはかなり長い間、XboxシリーズSもターゲットにしてきたので、その点でアドバンテージを持っていると思います。むしろ今後はそれが役に立つとさえ思います。
率直に言って、現在のゲーム・エンジンのスケーラビリティは、デスクトップのレイトレース対応の数千ドルのハイエンド・グラフィックカードから、バッテリー駆動の携帯デバイスまで、ゲームをそれぞれにスケール・フィットさせることができます。ですから、私にとってXboxシリーズSは、私たちのポートフォリオのバリエーションに役立っています。”
マイクロソフトは近年、Xboxコンソールのエコシステムへの依存度を明確に下げようとしています。マイクロソフトはプレイステーションとニンテンドースイッチにもゲームを提供し始め、最近では遂に「Forza Horizon 5」がプレイステーション5に登場することがアナウンスされました。
マイクロソフト傘下のゲームタイトルの中で最大のヒット作でもあり、コンソールではXBOXだけでプレイ出来た「Forza Horizon」の最新作『Forza Horizon 5』がライバルのプレイステーション5でも発売されることで、XBOXハードウェアのアイデンティが失われつつあり、Xboxコンソールを購入する必要性が今後もあり続けるのか?と言う質問に対し、スペンサー氏は
“イノベーションを起こし、ハードウェアの差別化要因にしたいのです。ハードウェアの差別化が失われ、”ロックされたゲーム “(独占タイトル)がハードウェアのアイデンティティになってしまいました。
私は、ハードウェアメーカーがユニークなことをする携帯ゲーム機を見るのが大好きです。私は、ハードウェアが革新性とパワーで競争することを望んでいます。ですから、私たちのプラットフォームには、サービスや、私たちが行っているハードウェアの仕事(コントローラー、パワー、モビリティのどれであっても)で革新を続けていきます。”
現在、マイクロソフトにはXbox Game Passという超お買い得で素晴らしいサービスがあり、そのゲームパスを楽しめるコンソールは今の所はXBOXだけです。プレイステーションで今春発売の『インディジョーンズ:大いなる円環』や『Forza Horizon 5』はフルプライスで購入しなければなりませんが、XBOXではゲームパスUltimate契約者であれば、追加料金もなしで発売初日にゲームデータをダウンロードして普通にプレイ出来てしまいます。
しかもゲームパス契約者向けに、上位のデラックス・エディション向けの追加コンテンツパックもリリースされるので、3〜4千円の出費で13000円近い仕様のフルパッケージ内容をプレイ出来てしまうのは大きいです。
それこそがXBOXコンソールだけの唯一無二の利点になっています。多くのマイクロソフト傘下スタジオのタイトルがリリースされ始めると、その利点は更に輝きは増すでしょう。
コンソールハードウェアがソフトウェアとサービスの売上によって「販売補助金」としてコンソールの価格に還元されていることは既に知られていますが、マイクロソフトは次世代Xboxでプレイステーション6に対して価格面で有利に立てるでしょうか?
マイクロソフトのゲームが多くのプラットフォームに登場し、PC、XBOXのみの時より更に売り上げが伸びれば、XBOXコンソール販売価格の補助金も増えることになります。それによって価格とパワーでXboxがライバルと勝負することが出来るようになるのでしょうか?
次世代Xboxコンソールがサラ・ボンド氏の言う「飛躍的な技術革新」を宣言していますが、過去マイクロソフトが宣言していた「ハードウェア革新」の試みは、結果的には必ずしも成功しているとは言い難い結果にはなっています。次世代XBOXは、XBOXにもPCゲームにもアクセス出来るハイブリッドコンソールで2026年に登場するという噂もあります。
プレイステーション6がチップ開発の進捗状況の報道から2027年と言われており、Nintendo Switch2が今年2025年6月以降と言われているので、2026年という隙間の年でリリースするという判断は賢明と言えるかもしれません。そして、次世代XBOXで前述の「ハイブリッドコンソール」が実現すれば、これは大きなブレイクスルーになり「飛躍的な技術革新」と言えます。
そして、プレイステーションのリードアーキテクトのマーク・サーニー氏もPS5Proのテックプレゼンで述べていたとおり、コンソールの将来は機械学習AIによるアップスケーリング、レイトレーシングなどがより本格的に導入されることが確実になっている状況で、次世代XBOXではマイクロソフトのXBOXハードウェア開発チームがどのようなスペックと仕様で出してくるのか、そのあたりも非常に楽しみであり興味深いところです。🔚
via WindowsCentral
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