XBOXゲーミング部門のCEOであるフィル・スペンサー氏が『Rolling Stone』誌のインタビューに対し、「将来購入するXBOXコンソールはまだ存在する」「強化型コンソールPRO機は今は必要ない」と語ったようです。
数日前に、マイクロソフト公式アカウントが新しい30秒の広告スポットを流し、ブランドの新しいキャンペーンメッセージを紹介しました。「これはXboxです。」
1991年のBlack Sheepのヒップホップ「The Choice is Yours」のサウンドに合わせ、Xbox Series Xコンソールと “This is an Xbox “と書かれた太いグリーンスマートTV、スマートフォン、携帯機、ラップトップと次々に変わり、すべてがXboxです。という構成。
Xbox Cloud Gamingは2019年に開始されましたが、Xboxのゲームそれより前からPC版も発売されていました。プレイヤーはXboxアカウント(=マイクロソフト・アカウント)を持っていれば、購入したゲームやXbox Games Passのライブラリを、高速インターネット接続があればどこでも、さまざまなデバイスでゲームをストリーミングでプレイすることが出来ます。
今のXBOXが何をプッシュしているのかがよく分かるトレイラーですね。
しかし、海外ではこのある種のメッセージ性のあるトレイラーに、加えてマイクロソフトは今までソニーに対抗してライバル機種を必ず出していましたが、今年はソニーのPS5Proに対抗する機種は出さず、クールにミッドジェネレーションコンソールは必要ないと述べています。
SNS上では、多くのファンが今やもうマイクロソフトはXBOXコンソール市場を重視していないんじゃないかと心配する海外ユーザーが多くいました。
今世代のXbox Series Xとパワーダウン版Xbox Series Sの2台構成で、特にXbox Series Xは機能面でも、ハードウェア面でも本当に素晴らしい完成度のハードウェアだったにも関わらず、5月の報道ではソニーのPS5がXboxシリーズコンソールをほぼ5対1で圧倒しているようで、Xbox One世代よりライバルのプレイステーションとの差は拡大している状況です。
XboxはXbox Oneで大きな失敗の教訓を受け、ミッドジェネレーションの強化型コンソールであったXbox One Xからは、ゲーム機のパワーをアピールしたパワー路線でプッシュして来ましたが、現在の結果を見れば、勝負の決め手はゲーム機のパワーではなく、いかにプレイしたいと思わせる魅力ある独占ソフトがあるかということでしたね。個人的にはパワー路線は嫌いではないですがw その魅力ある独占ソフトという点で、ソニーはXBOXを大きく上回っていたということになります。
Xboxは、前述のトレイラーのように、クラウドゲームを全面にプッシュして、XBOXハードウェアのコンソール市場を終わらせてしまうのではないかという懸念もありますが、少なくとも直近は内容ですが、それ以上に複雑な事情があるようです。
そして本題、Rolling Stone誌が先日、Xboxのゲーム部門CEOのフィル・スペンサー氏とニューヨークでインタビューを行ったようで、XBOXブランドの将来について述べています。
“XBOXは、発売当初文字通りBOX、つまり「Direct X」ボックスでした。それが今では、よりアクセスしやすいものに成長しました。現在のXboxは、1つのデバイスだけでなくスマートTVにもPCにもXboxがあり、スマートフォンにもXboxがあります。一部のファンが悲観的になるにも分かりますが、単一のボックス、単一のプラットフォーム、単一のゲームのシンプルさに憧れる人も確かにいます。しかし、今日の最大のゲームは、個々のプラットフォームのどれよりも大きいのです。“
フィル・スペンサーさんは、1988年にマイクロソフトにプログラマーのインターンとして入社し、2001年のXbox立ち上げ時にXboxチームに在籍し、それ以来ゲーム一筋。マイクロソフトの20年以上に渡るゲーム事業の全てを見てきた方でもあります。フィルさん自身もゲーム好きなので、ある意味ゲームのスペシャリストでもありますね。
フィルさんは、
“XBOXが進化してもXboxのDNAは変わりません。 本当に長寿であるべきものは、ゲーム、キャラクター、ゲームの世界であり、プラットフォームは、私たちがプレイしたい場所で好きな時にどこででもそれらのゲームを体験できるようにするべきだと思います。 それが現在のXboxの考え方です。”
しかし、ローリングストーン誌でも指摘されていますが、『レッドフォール』(2023年)『スターフィールド』(2023年)『ヘルブレイドII』(2024年)といったファンからも多大に注目、期待されていたタイトルが冴えない評価でした。私も正直、『ヘルブレード2』には発表当初からワクワクでかなり期待していましたが、実際にプレイしてみて感想は、悪くはないが、手放しで最高とは言えない感じでしょうか、、
そして、これもかなりの期待された大作の『スターフィールド』、売上は当初好調でしたが、最近リリースされた拡張版「シャッタード・スペース」が投入されたにも関わらず、プレイヤー数は減少しているそうで、『HALOインフィニティ』も開発にも混乱があったようで、評価もイマイチでした。
XBOXファーストパーティのタイトルがやや低調の中で、他プラットフォームへの積極的なリリース展開する方向転換は、XBOXファンからすれば、マイクロソフトはXBOXコンソールを諦めて、マルチプラットフォーム展開するパブリッシャーになろうとしているのか?という不安の声も仕方がないことだと思います。
そして、フィル・スペンサーさんは、コンソールについて
“人々がXboxのハードウェアを買ってくれるのは嬉しいが、コンソールのスペースは、すべてにおいて成長していません。しかし、「Xbox」を拡大し成長させ続けるという点では、PCとクラウド、そして当社のゲームをより多くの場所で利用できるようにすることです。”
この発言からも、今や「XBOX」はコンソールのブランド名というより、エコシステムの総称になりつつあるのかなと。
マイクロソフトがコンソールを見限り、クラウドストリーミングサービスでどこでも使えるデバイスに重点を置き、新しいXBOXコンソールの開発をやめるという意味なのかとの問いに、スペンサー氏は
“我々は将来、間違いなくもっと多くのコンソールと他のデバイスをやるでしょう”
これらの “他のデバイス “という言及は間違いなく携帯ゲーム機の事でしょうね。スペンサー氏自身がAsus ROG Allyを使ってプレイしているそうですが、ここ数年携帯型ゲーム機PCのトレンドに対抗するために、Xboxハードウェアのモバイル版が含まれる可能性は間違いなくありそうです。
現在、携帯型PCはWindowsベースが中心。つまり、マイクロソフトのエコシステムで動作しているので、プレイヤーは外出先でXboxゲームをプレイすることができ、保存データはクラウドストレージを使用して家庭用ゲーム機とPCの間でシームレスに遊べます。
ストーン誌は、インタビューの中でスペンサー氏が何度も“携帯型Xboxを作りたい。”と言及していたそうですので、XBOXブランド?の携帯機の発表はほぼ確定的ですね。いつになるかは分かりませんが、来年2025年の可能性はあるかもしれませんね。
そして、ソニーが最近リリースしたPlayStation 5 Proのように、ハードウェアのリフレッシュを中間期にリリースするのかどうかについては、
“コンソールのパワーを上げることで開発者が得られるメリットが減少していることを考えると、今はその必要はないでしょう。私たちはこのプラットフォーム上で、プレイヤーやクリエイターに独自の価値を生み出すことができるハードウェアについて考えています。
自分たちの利益のために漸進的(僅かな進歩)ハードウェアを作る必要はありません。新しいデバイスは、本当に何らかの形でスクリーン上でユニークな体験を与えてくれるのでしょうか? 昔、初代Xboxから360に移行したような、標準画質からHD高画質ほどの変化は少なくなりました。今では、そのアップグレードのメリットを明確に示すのが難しくなっています。
Xboxコンソールはまだ最重要事項であり、ブランドが将来どのように進化し続けるかを念頭に置いています。 Xbox Cloud Gamingは、そのミッションの中心にあります。XboxのDNAは、ストリーミングサービスやソフトウェアライブラリ以上のものであり続ける必要があります。
私たちは、”Xboxとは何か?”を広げようとしています。Xboxを20年継続するのものにしたいのです。 Xboxが活気に満ち、成功するためには、複数のハードウェアが必要だと思っています。”
まだコンソールはやめないそうなので、その点ではXBOXファンは一安心ではありますが、マイクロソフトが大型買収を続けていくうちに、XBOX戦略が徐々に変化してきた印象です。
根本的な要因は、XBOXコンソールがプレイステーションほど売れていないという事ですよね。そう考えると、XBOX360の成功でせっかくプレイステーション3と対等に近いシェアにまで追いついたというのに、Xbox Oneで大きく躓いたのが大きかったですね。その失敗がそのまま今世代にまで引きずっている感じで、Xbox Oneでの大失敗が本当に悔やまれます。
今のマイクロソフトは、クラウドゲーミングから膨大な数のモバイルゲーマーをゲームパスに引きこもうという戦略で、これこそがフィルさんのいう新規のユーザーと「成長の可能性」というわけですね。モバイルゲーマーにはコンソールゲーマーとは比較にならないほど膨大な数のユーザーがいるので、そこに目を向ける戦略自体は、間違っていないと思います。
しかし、フィルさんがPS5Proのような強化型コンソールについて述べた「コンソールパワーを上げる事で開発者得られるメリットが減少している」という発言に関しては、一部は事実ではあるものの、PS5Proのアップグレードの印象を語る開発者の声、そして開発者ではありませんが、PS5Proユーザーでもある私の価値観から言えば、確かに標準画質からHD画質、HD画質から4Kへと移行したようなインパクトはないかもしれませんが、高精細で滑らかなフレームレートでのプレイというアップグレードには本当に満足していますし、逆に過去の旧作をプレイしたくなりあれこれプレイするようになり、ゲームをプレイする時間が間違いなく増えました。
そんな事もあり、ややトーンダウンしかけていた今世代にはPS5Proのおかげで再びワクワクしています。これは自分の考えですが、やはり新しいハードウェアという存在は良いんです。価格は別としてw
そういう意味でも、ミッド・ジェネレーション(中間世代)と呼ばれる強化型コンソールは、ピークアウトした世代を再び活性化するためにも必要ではないかなと思いますね。
ソニー曰く、PRO機のような強化型コンソール「PS4Pro」は全ユーザーの20%くらいが購入していたそうなので、何千万台も売れるようなユーザー数でも価格でもないですが、私はこのような中間世代でのテコ入れは必要だと思います。
ですので、XBOXがPS5Proに対抗する強力な強化型コンソールを出してくれるかな?と僅かながら期待していたので、個人的にはちょっとガッカリですね。同じような意見は海外ユーザーでも多いです。中には次世代XBOXは携帯機になるのかという意見も結構ありましたね。
特に海外のXBOXユーザーには、最近のXBOXのブレる戦略にフラストレーションを溜めているユーザーもいるようです。それは最近のフィルさんもそうで、どこか発言にブレが目立っていて、ちょっと残念ですね。
一つ感じているのは、今は開発コストの上昇で、プラットフォーマーもサードパーティーも1プラットフォーム独占では、やっていけないという事ですね。独占的だったソニーでさえ、独占タイトルを時間差はあるとは言え、PCでリリースする時代ですからね。10年前では考えられなかった事です。
コンソール市場自体が頭打ちなのに開発費は高騰という事情からも、対応プラットフォームを増やすなどで新規のプレイヤー層を拡大しなければなくなっているので、仕方のない事ではあります。
前述した通り、コンソールはパワーだけではありませんが、次世代XBOXが出るのであればパワー路線は維持して欲しいところです。
via RollingStone
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