007新作にしてダニエル・クレイグのジェームズ・ボンドとして最終作となる『No Time to Die』(ノータイムトゥダイ)をIMAXレーザーで観てきました。
「No Time to Die」というタイトルは、プロデューサーでもあるバーバラ・ブロッコリの父、アルバートRブロッコリ(「ドクターノオ」から「消されたライセンス」まで手がけてきた)が1950年代に作った映画の原題だったそうで、とても気に入っていたそうですが、アメリカの劇場公開時にボツになったタイトルだったとの事。ようやく本作で使う事が出来たようです。
本作は、監督降板、交代、主演のダニエル・クレイグの大怪我による撮影中断、パインウッドスタジオの火事騒動、そして新型コロナウィルス感染拡大による公開延期など、メディアは呪われた作品などと揶揄しましたが、実際に満を持して公開された作品は、そんな事を吹き飛ばす本当に素晴らしい作品でした。
細かい事はネタバレになるので避けますが、結果的に想像以上の出来で、ダニエル・クレイグ:ボンドの最終作に相応しい作品。軽薄なアクション映画ではなく、ある意味「究極の愛」の映画でもあると感じました。
そして、本作では女性キャラクターの強さが今まで以上に力強く描かれており、今の時代に合った視点でも描かれています。とにかく、女性キャラクターのアクションもキレがあり素晴らしいんです。
ラシャーナ・リンチ演じる00エージェントのノーミ、そしてキューバ諜報部員でボンドをサポートするアナ・デ・アルマス演じるパロマ。特に後者のパロマのプリティな外観からは想像も出来ないキレのあるアクションとガン・アクションのギャップはインパクトありました。もうちょっと出番あっても良いくらいでしたねw そしてノーミもボンド顔負けの00エージェント(00ナンバーは見てのお楽しみ)として見事な働きぶりでした。
こういった事から、007アクション映画でもありますが、ボンドの今までにない深い愛を描いた作品で、しかも女性キャラクターが今まで以上に、ボンド並みに力強く活躍する映画でもあるので、今まで007映画を敬遠してきた女性にも是非とも観て頂きたいなと思いました。
そして本作では、「女王陛下の007」を意識した演出が結構ありました(キャリー・フクナガ監督は特に言及していません)。今まで以上に深いボンドの恋、そして音楽、究極は最後のクライマックスでかかるソング。「女王陛下の007」では挿入歌として使われたルイ・アームストロングの「愛はすべてを越えて(We have all the time in the world)」で涙腺が緩みました。
詳細は書けないのですが、最後のシーンで車(アストンマーティンV8バンテージ)で走行しながらこの曲が流れ、エンディングクレジットへとなり映画は終わります。
「女王陛下の007」と完全に一致しているわけではないのですが、自分から見た印象では「女王陛下の007」を想起させるシーンでもあったのかな?と感じました。劇中でもボンドの恋を描いている時の音楽も「女王陛下の007」を思わせ、結末を示唆しているのかな、、とも感じながら見ていました。ダイアナ・リグ演じるテレサ・ボンドと、レア・セドゥ演じるマドレーヌはどこか似ている気もしないでもないかなとも感じました。
が、しかし!終盤のまさかの展開(サプライズ)というか、、これは観てご自身で結論を出してください。言えるのは、007史上なかった結末。2時間46分という長尺ですが、あっという間でした。
オスカー俳優でもあるラミ・マレックの感情の抜けたかのような、冷徹なキャラクター、サフィンも本当に素晴らしかった。サフィンがボンドに対してした事は、おそらく今までのボンド映画史上、「最恐で最悪」な事でもあると思いますし、現実の世界でも新型コロナウィルス感染拡大で同じような想いをした人が沢山いたわけで、今回の事はオーバーラップするような気もします。
その他のキャラクターも全てが上手く噛み合っていました。レイフ・ファインズ演じるMも、歳を重ねて風格も出てなんとなくですが、初代Mのバーナード・リーに似てきたような気がします。そしてベン・ウィショー演じるQも初登場時は若いITオタク青年という感じでしたが、本作ではM同様に歳を重ねて板に付いてきた感じ。それはナオミ・ハリス演じるマネーペニーも同様。そしてボンドを支えるMI6の幕僚主任ロリー・キニア演じるタナー、フェリックス・ライター演じるジェフリー・ライトも出番がそこそこあってしっかり描かれていて良かったですね。
そして忘れてはならないビリー・アイリッシュの歌う主題歌「No Time to Die」これがまた素晴らしく作品とピタリと合う曲になっていましたね。。スカイフォールも素晴らしかったですが、ビリーの曲の方が007らしいかもと。。
しかし、監督の日系米国人でもあるキャリー・ジョージ・フクナガさんは素晴らしい監督だなと。結果論ですが、かえって当初監督予定だったダニー・ボイル監督でなくて良かったのかもw
日本の能面をラミ・マレック演じるサフィンが被っていましたが、フクナガ監督は「日本の能面にしたのは見方によって表情が変わるのがとてもミステリアスで、物にはそれを見る人間の心が表れるという事を意味しているから」だそうです。他にもサフィンの部屋は日本の庭園や盆栽を思わせるデザインが取り入れられていて、サフィンの服装もどこかハッピのような服を着用していました。日本にルーツを持つフクナガ監督ならでは演出なのかもしれません。フクナガ監督は脚本家でもあり、本作の脚本にも関わっていたそうです。
フクナガ監督は、「女王陛下の007」に関しては言及はなく、実際007全作を見ている訳ではないようです。ダニエル版ボンド作品は全て見直したそうです。ダニエル版の「カジノロワイヤル」や、今村昌平の作品(特に「赤い殺意」だそう)が大好きだそうで、本作にも大きな影響を受けているそうです。
作品を観た後で、ユニバーサル公式の二人の対談を見ていると、感慨深いですね。これは、是非とも映画本編を鑑賞後に観て頂きたい対談かもしれません。
車も過去のボンド映画に登場した歴代アストンマーティンが全て登場しました。特に嬉しかったのは、ティモシー・ダルトンのボンド映画に登場したアストンマーティンV8バンテージ。この車は「No Time to Die」の本編にもそして印象的なラストでも登場します。この点も車好きからすると嬉しい見所。
そして、ショーン・コネリーのボンド映画を筆頭に数々の作品に出てくるNo.1ボンドカーとも言えるアストンマーティンDB5、本作ではヘッドライトからバルカン砲が飛び出しマシンガンを乱射したりスモークを噴射したり、防弾ガラス四方八方から銃撃を受けたり、激しいカーアクションを展開するなど、傷だらけのボロボロになりますが、このDB5はカーボンファイバー製ボディを着せられ、ドイツ製6気筒エンジンが載ったレプリカ車だそうです。
↓のトップギアのビデオでは歴代ボンドカー一気乗りで、DB5の事についてもNo Time to Dieでスタントドライバーをしたマーク・ヒギンズも紹介され、DB5がドリフト走行している姿も見れます。
という事で、「No Time to Die」は ダニエル・クレイグ:ジェームズ・ボンドの総決算、最後に相応しいエンディングだったのではないでしょうか?これはある意味、次回作は仕切り直し、リブートという形になるのではないかと思いました。
当然、主役のジェームズ・ボンドは新しい役者になります。プロデューサーのバーバラ・ブロッコリは、「2022年になるまでは新しいボンドの話は一切ない。」と明言しています。それは、ダニエルへの感謝の気持ちでもあると述べています。確かに、「No Time to Die」を見たら、しばらくはこの余韻を楽しみたいと思いますし、仕切り直しの意味でも2022年になってから新ボンド発表でも良いと思いますね。
リブートになる?かもしれない次回作の007は、心機一転、バットマンやスーパーマンを見事にリブート成功させたリブート請負人?のクリストファー・ノーラン監督が手がけて良いのではないでしょうか?クリストファー・ノーラン監督が手掛ければ、おそらく素晴らしいリアリティのある重厚な007作品になるはずです。新しいボンド映画の再スタートとしては、最高の監督なのではないかと思います。
劇場パンフレットは全37ページのオールカラーで紙質も厚めで、各キャストインタビュー、作品解説やボンドカーなど充実の内容で作品に相応しい作りとなっています。
007全作を何度も観てきた自分からすると、今回の007:No Time to Dieは、スカイフォール以上に重厚で、究極のボンドの愛が描かれており、全24作の中でもTOP3に位置する傑作と言えると思いました。
是非、劇場のIMAXレーザーなどの大画面と、素晴らしい高音質の音響システムの映画館で見て頂きたいと思います。🔚
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