今年1月、LGがCES2023で発表した、マイクロ・レンズ・アレイ(MLA)技術とMETAブースト技術の「METAテクノロジー」パネルを採用した、パナソニックの2023年モデルの有機EL TV VIERA『MZ2000』の日本国内モデルとなる ビエラ『MZ2500』を7月21日より発売することをパナソニックが発表しました。
店頭予想価格は、
55インチ「TH-55MZ2500」 37万円前後
65インチ「TH-65MZ2500」 52万円前後
意外だったのが販売スタート価格。競合するレグザ有機ELフラッグシップモデルの55インチ『X9900M』が、当初約40万円くらいからのスタート(現在は約36万円)で、過去のパナソニックの強気な価格設定からも、55インチ『MZ2500』は40〜44万円くらいがスタート価格ではないかと推測していました。
パナソニックはメーカー指定価格で、量販店では割引なしという販売体制。市場動向を見ながら段階的に値下げ通達し価格を下げていくので、36万円(正確には36万6300円)というスタート価格は購入予定者としては、非常にありがたいですね。
しかも、パナソニックは『MZ2500』の55インチモデル購入者に3万円、65インチモデル購入者には5万円のキャッシュバック・キャンペーンを行います。
2023年5月11日(木)~2023年8月31日(木)までに『MZ2500』を購入し、2023年7月21日(金)~2023年10月2日(月)16時59分までに応募した方が対象となります。当然ですが、キャンペーンの応募は、キャンペーン期間中に一人につき一回限りとなります。
ですので、55インチで実質約33万円、65インチで約46万円程度で買える事になります。『MZ2500』の最新技術採用などハイエンドな中身と思っていた以上に安い価格からしても、今回パナソニックが本気でシェアを獲ろうと攻めてきたな、、と感じます。
『MZ2500』は、前述の「マイクロレンズアレイ」技術を採用した「マイクロレンズ有機ELパネル」に、独自のメタル製放熱シート、バックパネルとパネル制御技術を組み合わせ、パナソニックの2022年モデル『55LZ1800』の有機ELパネルに比べて、最大発光輝度が約2倍 高輝度化を実現しているとの事。
そして気になる2022年モデルのハイエンドである『LZ2000』との比較ですが、AV ForumのCES 2023のPanasonicの『MZ2000』ブースレポートで、PanasonicのGaber Szegner氏の説明によると、2022年モデルの『LZ2000』からは50%輝度が向上しているとの事。LZ2000でも結構明るいなと思ってはいたので、そこから50%も向上となると体感的には相当明るいかもしれませんね。
パナソニックによると、「かつてない高輝度と、高コントラストを体感してほしい」との事で、『MZ2500』の完成度には相当な自信があるようです。
日経 XTECHの記事では、2022年のOLED.EXパネルのピーク輝度1300nitsに対し、2023年のマイクロレンズアレイの「METAパネル」では約60%向上の2100nitsを実現、画質はクリアーでとがったもので、白側の質感はパワフルで上質との事。
視野角もトンボの目が数万個の凸レンズを通して広い世界を見るように、マイクロレンズアレイ効果でOLED.EXより約30%拡張しているようです。
前述の通り、海外では『MZ2000』のモデル名で55インチ、65インチの他に77インチも発表されましたが、77インチの日本国内投入はないようです。更に『MZ2000』の77インチモデルには、「マイクロレンズ有機ELパネル」は使われていないとの事です。
つまり、2023年モデルで「METAテクノロジー」採用の77インチモデルとなると、現時点ではLGの有機ELハイエンドモデルである「OLED G3」のみとなるようです。
「マイクロ・レンズ・アレイ=MLA」技術は、フォトリソグラフィーで形成されたマイクロメートルサイズの凸レンズの層「マイクロレンズアレイ」を、有機EL発光層の上にかぶせて一体成型(マイクロレンズアレイの凹凸に合わせて、有機EL層にも同様に凹凸をつけて隙間なく一体化)し、光の損失をなくす事で大幅な輝度向上を可能にしたとの事。
「マイクロレンズ」の数は、4K解像度の77インチパネルの場合、1画素当たりで5117個、合計ではなんと約424億個にもなるそうです。
この事からも、「マイクロレンズ有機ELパネル」は、電気的に輝度を引き上げたわけではなく、物理的にパネル構造を改良してパネル内で損失していた迷光をパネル表面に取り出して輝度を向上させています。
パナソニックは「消費電力はほぼそのままに、輝度とコントラストを大幅に高める事が可能になった。」とのことです。
ハイエンドモデルのみ搭載されるパナソニック独自のパネル制御技術「ブライト・ブースター」も『MZ2500』の「マイクロレンズ有機ELパネル」に合わせてチューニングされているようで、「3次元映像信号解析」と「温度センサー」により、パネルの発光状態を画素ごとに管理し、さらに独自の電流制御アルゴリズムでパネルを駆動することにより、有機ELセルの発光性能を最大限に引き出しているそうです。
パナソニックによると、TVとしての平均輝度も少し高くなっているとの事。
LGからマイクロレンズ・アレイの有機ELパネルだけを調達し、パナソニック独自のパネル制御技術「ブライトブースター」を採用。3次元の映像信号解析と温度センサーで画素ごとの発光をリアルタイム管理し、独自の電流制御アルゴリズムで有機ELパネルを駆動しているそうです。
そして、パネルの放熱も更に効率良く行うために、「マイクロレンズ有機EL」パネルにあわせてさらに進化させ、バックカバー 一体型放熱プレートに加えて、新たにパネル直下にメタル放熱シートを追加した「デュアル・メタル・ヒートレス構造」を採用することで、更に放熱性能を向上させ発光性能をさらに引き出すことを実現しているそうです。
これは、同じ世代のパネルを使っている他社製品(おそらくLG G3)にも採用されていないとの事で、『MZ2500』独自の放熱仕様となるようです。パナソニックの製品紹介ページの図には、“特許出願中”とあります。
この事から推測するに、同じくMLAパネルを採用しているLG の「OLED G3」より、『MZ2500』の方がパネル放熱性能は優れている可能性があります。
LG OLED G3の海外レビューでは、G3はABL(自動輝度リミッター)がアグレッシブに働くという評価もあるので、MZ2500(MZ2000)ではそのあたりは少し改善されているかもしれません。
パナソニックのインタビューによると、WRGBパネルの場合、単純に画面を明るくすると色が抜けていく傾向があるので、そうならないように色補正をしっかりかけながら、明るさ感を出しているそうです。
気になる去年モデル(LZ2000)と比較では、明るさの違いは一目瞭然との事。黒が締まりつつ、低階調の暗部の見え方にも注意し、かつピークは出ているので、見通しの良いクリアな映像になったとの事です。
有機EL専用の映像処理回路「ヘキサクロマドライブ プラス」は2023年モデルで、色ごとの特徴を検出し補正を最適化することで、従来は色が濃すぎて階調が飽和していた映像も、鮮やかさを保ったまま階調を表現可能になり、また鮮やかさに欠けた映像も、階調を保ったまま、より鮮やかな色が表現できるように進化しているとの事。
更に、HDRの高輝度時の色抜けも、シーンに応じてHDRトーンマッピング処理を動的に変化させる新技術「ハイブリッド・トーンマッピング」を採用し、高輝度域でも色鮮やかな映像を実現しているとの事。
今年2023年1月に開催されたCES2023では、以下の比較デモも行われていたようです。『MZ2000』は『MZ2500』の海外モデル名です。見ると、光を当てられたガラスはより明るく煌びやかに、バラの花は輝度が向上しても色抜けせずに鮮やかさが向上しているようで、WOLEDの欠点をチューニングで上手く補っているように見えます。実際に映像を見てみないとなんとも言えませんが、少なくとも見た目では輝度が向上しても彩度の不足を感じることはなさそうな気がします。
『MZ2500』では独自のツールを使い、1台ごとにパネルチューニングを実施、業務用モニターにきわめて近い階調表現を実現し、暗部表現のわずかな乱れも低減できているそうです。
「オートAI画質」は、コンテンツのシーンを認識し、それにもとづきシーンごとに「ヘキサクロマドライブ プラス」「AI HDRリマスター」「4Kファインリマスターエンジン」などのあらゆる高画質化技術を統合的に制御することで、映像を部分ごとに自動的に最適な画質に調整。
加えて、部屋の明るさや照明の色によって映像の見え方が異なることに着目。環境光センサーで部屋の明るさや照明の色などをセンシングし、オートAIの自動画質調整に反映。部屋の光の環境も考慮に入れて、あらゆるコンテンツを自動で最適な画質に調整。
更に2023年モデルでは、環境光センサーに連動した自動画質調整を進化させ、より幅広い部屋の光の環境に対応。これにより、日中などの明るい部屋でも、暗い映像の暗部のディテールまでしっかりと再現。まるで映画館のような暗い部屋で見ているかのように、わずかな光のディテールまで感じられる映像を楽しめるとの事です。
新たに「地デジ美肌補正」(SDRのみとの事)も搭載され、人肌のコントラストや立体感で、肌の色を検出し、3D-LUT(ルック・アップ・テーブル)で処理することで、より自然な人肌を表現可能になったようです。
HDRに関しては、HLG、HDR10、HDR10+、HDR10+ ADAPTIVE、Dolby Vision、Dolby Vision IQ、静止画用のHLGフォトに対応。
スピーカーは引き続き「Tuned by Technics」で、多数のスピーカーユニットを線上に並べることで、解像感の高いクリアな音と、大口径のスピーカーユニットを搭載したオーディオ機器のような厚みのある音を実現する「ラインアレイ・スピーカー」、音を天井に反射させることで高さ方向の音表現を可能にする「イネーブルド・スピーカー」、横方向の音の広がりを実現する「ワイド・スピーカー」を搭載し、映画館でも採用されている立体音響技術「ドルビーアトモス」の音場を再現します。
What Hi Fiの記事では、『MZ2500』でフロントスピーカーの配列を見直し、より広いサウンドステージに、そしてスピーカーの制御アルゴリズムも見直して音の定位を改善し、部屋中が音に包み込まれるような臨場感を実現しているそうです。他にもパナソニックが“低域の改善を約束した”という記事もありました。
出力は55インチで150W、65インチで160Wは昨年モデルと変わらず。TVのスピーカーとしてはこれ以上望めないレベルとも言えます。
ゲーム機能は『MZ2500』でかなり進化したようで、新たにDolby Visionゲーミングに対応。ただし、4K 60pまでとなります。
マニアックな点としては、「ゲームプロ (True Game)」モードはキャリブレーションもできるようになっているそうで、プロ用途で知られる「Calman」のゲーム用映像調整アプリ、ツールに対応。「Calman」のロゴも表示されています。
ゲームモード・エクストリームを搭載、PS5、Xbox Series Xなどの最新ゲーム機にも採用されている「HDMI 2.1規格」の4K 120p入力に対応。信号の処理時間を短縮することで、通常モードより映像表示までの遅延を低減し、すばやい操作を要求されるゲームも快適に楽しめます。
「等速駆動モード」も搭載、60Hzのゲームコンテンツを60Hzのままで表示、専用の有機ELパネル制御により、ゲームプレイ時の遅延量を抑えます。
そして、新機能としてはゲームのジャンルに合わせた2つの音声モードを搭載。ゲームサウンド(RPG)ではセリフとBGMが、ゲームサウンド(FPS)では足音が強調されることで、よりゲームの世界に没入することができます。
ゲーム関連の設定項目に特化した内容を表示する「ゲーム・コントロール・ボード」も進化、映像モードに、前述のゲームプロ、等速駆動、Dolby Vision Game、音声モードに前述のRPG、FPS音声モード、ALLM設定が追加、4K 120Hzピュアモード(4K 120Hz バイパスモード?)時にはHDRトーンマッピングがグレイアウトしなくなったとの事。
4K 120Hz、VRR、ALLM、AMD FreeSync Premium、NVIDIA SPD Auto Game Modeに加えて、新たにNVIDIA G-SYNC Compatibleもサポート。 ゲーム機能面もLGのOLEDと同等レベルに充実してきた印象です。
リモコンは、昨年モデルと同じBluetooth方式(電源のON、OFF時のみ赤外線)なので、リモコンがどこを向いていても操作出来ます。
ネット動画ボタンはNetflix、Amazon Prime、Hulu、U-NEXT、ABEMA、YouTube、Disney+。Paraviが削除されて、新たに「TVer」が追加。
そして、個人的に気になっていたHDMI 2.1端子の数。
海外の MZ2000の仕様をみると、残念ながらHDMI 2.1入力は2つ。国内モデルの『MZ2500』も、国内の公式解説で4K 120p対応のHDMI 2.1端子は、HDMI 1とHDMI 2の2つと掲載されていました。他の国内メーカーもHDMI 2.1端子は2つで、今年も同様のようです。この点ではLGがリードしていますね。
今年の2023年モデル『MZ2500』は昨年モデルの『LZ2000』より輝度の大幅向上、モニターレベルの正確な映像品質以外にも、ゲーム機能がより強化されて充実してきた印象で、更にスキのない完成度になったようです。HDMI 2.1端子が2つというのは非常に残念ですが、、
この部分にこだわる方は、来年2024年モデルまで待った方が良さそうですが、来年までにHDMI2.1フル帯域x4が実現するかどうかは当然不明です。HDMI2.1フル帯域端子x4にこだわる場合は、現状LGのC、Gシリーズしか選択肢はないかもしれません。
私はQD OLED 2世代目の2023年モデルソニーのA95Lか、MLA技術採用の有機ELを待っていたのですが、ソニーの2023年モデルの有機EL A95Lは日本展開がないようなので、現状では迷う事なく即決で『MZ2500』を予約しました。
TVは購入したら、最低でも3〜4年は使うので、どうせなら最新の技術を使用した製品を購入しておきたいというのもあります。しかも今年2023年はちょうどその最新技術(今年はMLA)を採用した製品が出るタイミングという事が分かっていたので、尚更です。
残るLGの2023年モデルの 『LG OLED G3』の発表はまだですが、LGもそう遠くない日に2023年モデルの発表がありそうです。昨年の新製品発表会が5月20日だったようですので、その前後で発表がありそうです。
もし、LGのG3を選ぶならその利点としては、やはりHDMI 2.1端子が4つある事が大きいですね。そしてDolby Vision Gamingの4K 120p対応。パナソニックの『MZ2500』は、HDMI 2.1入力端子数は2つ確定していますし、新たにDolby Vision Gamingに対応したものの、4K 60pまでです。
特にサウンドバーをTVに接続されていて、PlayStation5だけでなくXbox Series X|SやゲーミングPCなどを接続したい場合、現在の国内メーカーの4K TVですと、現状ではHDMI 2.1端子が2つ(HDMI 1、2が多い)しかなく、eARC接続でHDMI 2.1端子(HDMI 2が多い)を1つ使ってしまうので、その場合は実質HDMI 2.1端子は残り1つとなってしまい、この点では非常に不便ではあります。海外でソニーやPanasonicなど日本メーカーTVで唯一不評な点が、このHDMI 2.1端子が2つしかない事がよく挙げられています。
ですので、前述の利点からLG G3も選択肢でしたが、既にLGのC1をゲーミング用とサブTVとして使っているのと、LGのTV関連(番組表の起動、レスポンスがとにかく遅い)、録画関連の機能(操作し難い)が家族に不評で、それもあって家族も使うリビングのメインTVとしてLGは難しかったので、そうなるとMLA技術採用のTVとしては、『MZ2500』しかないという事になりました。
TV関連機能は必要なしで、画質、ゲーミング用途重視の有機EL TVであれば、HDMI 2.1入力端子x4など、前述の機能面の充実からも今年2023年モデルならLGのG3がベストかもしれません。
私は、現在のブラビア85インチのX9500Gを購入する前は、レグザを使い続けてきていて、元々はレグザ・ユーザーでもあったので、今回のTVの買い替えでは久々にレグザに戻ろうかなと思い、有機ELのフラッグシップ・モデルでミリ波レーダー採用の『X9900M』も検討していました。
個人的にタイムシフトマシンはあまり使わなかったので、それが重要ではない事と、『X9900M』がMLAパネル搭載だったら、レグザにしたかもしれませんが、、レグザのMLAパネル採用は2024年モデルでしょうかね。
レグザが来年の2024年モデルではMLAパネル、もしくはQD OLEDのどちらを採用するのかも興味深いですね。順当に行けば、MLAパネルなんでしょうけども。。元レグザユーザーだけに、レグザの動向も気になります。
この流れからすると2024年モデルの進化の見通しとしては、MLAに量子ドットシートの組み合わせが最強になりそうですね。既にQD OLEDのサムスンとソニーもMLAを使えば更に輝度も向上するのでしょうかね?結局、延々と少しづつ改良、進化していくんでしょうね。
あとは、国内メーカーのHDMI 2.1端子が4つになる事でしょうかね。3〜4年あれば、話題のマイクロLEDも低コスト化されて製品が出てきそうです。
私が予約した『MZ2500』の発売日は7月21日なので、まだ2ヶ月先というのは気が遠くなりそうですが、『MZ2500』の到着が楽しみです。『MZ2500』が到着しましたら、使用感やゲーミングでのプレイした印象から全般の使用感を含めた本音レポートをしたいと思います。
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via Panasonic MZ2500
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